ヨーロッパのマクドナルドには、注文を取る人がほとんどいない。日本のコンビニにはセルフレジが入ったが、その弁当を作っている工場は、いまも人が一つずつ手で詰めている。
この差はどこから来たのか。答えを先に置く。日本には、機械より安く使える人が供給され続けているからである。
安い労働力が手に入るあいだ、企業は機械を買う理由を持たない。機械が入らなければ、一人あたりの生産量は増えない。生産量が増えなければ、賃金を上げる原資も出ない。賃金が上がらなければ日本人は来ないので、また安い労働力を足す。この輪が回り続けている。
この記事は、その輪が回っていることを公表資料だけで確かめる。
まず、その安い労働力がどこにいるのかを押さえる。多くの人が思い浮かべる場所とは違う。
弁当工場は、5〜6人に1人が外国人だった
外国人労働者は2025年10月末で257万1,037人。前年から26万8,450人、11.7%増えて過去最多である。全就業者に占める比率は約3.8%になる。
この257万人がどの産業にいるのかを、厚生労働省の届出データで見る。
| 産業 | 外国人労働者数(人) | 構成比 | その産業に占める外国人の比率 |
|---|---|---|---|
| 製造業 | 635,075 | 24.7% | 6.1% |
| うち食料品製造業 | 203,834 | 7.9% | 約18% |
| うち輸送用機械器具製造業 | 105,846 | 4.1% | — |
| サービス業(他に分類されないもの) | 391,946 | 15.2% | 8.1% |
| 卸売業,小売業 | 340,687 | 13.3% | 3.3% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 319,999 | 12.4% | 7.7% |
| 建設業 | 206,468 | 8.0% | 4.3% |
| 医療,福祉 | 146,105 | 5.7% | 1.5% |
| 情報通信業 | 97,924 | 3.8% | 3.2% |
| 運輸業,郵便業 | 85,477 | 3.3% | 2.5% |
| 教育,学習支援業 | 83,225 | 3.2% | — |
| 全産業 | 2,571,037 | 100% | 3.8% |
いちばん多いのは製造業で63万5,075人、全体の24.7%。その内訳でいちばん大きいのが食料品製造業の20万3,834人である。弁当、おにぎり、サンドイッチ、惣菜、パン、加工肉。コンビニやスーパーの棚に並ぶものを作っている工場だ。
人数だけ見ると、建設業の20万6,468人とほぼ同じである。ところが比率で割ると差が出る。建設業は4.3%、食料品製造業は約18%。5〜6人に1人が外国人になる。全産業平均3.8%の5倍近い。
工事現場は道を歩けば見える。飲食店のホールにも、コンビニのレジにも人は立っている。食品工場は見えない。そして比率がいちばん高いのは、その見えない場所だった。
食料品製造業の約18%は、分子が外国人雇用状況の届出(2025年10月末)、分母が経済構造実態調査の従業者数112万2,868人(2024年6月1日現在)で、時点も調査も異なる。だから「約18%」までしか書かない。他の産業の比率は、分母に労働力調査(2025年平均)の産業別就業者数を使っている。
2位の「サービス業(他に分類されないもの)」39万1,946人は、労働者派遣業と請負を含む区分である。この人たちが実際に立っている場所も、多くは工場のラインになる。
制度の側から見ても同じ絵になる。特定技能の在留者は飲食料品製造業が9万6,367人で全19分野の1位(2026年3月末速報値、特定技能1号の23.8%)。技能実習の職種別では食品製造関係が2番目に多く、その中で最多がそう菜製造業である。
その工場で働く外国人の給料は、日本人の6割だった
次に、その労働力がいくらで手に入るのかを見る。賃金構造基本統計調査は在留資格ごとの賃金を出している。2025年の数字である。
| 区分 | 所定内給与額(円/月) | 一般労働者計=100 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 一般労働者 計(産業計) | 340,600 | 100.0 | 比較の基準。外国人も含む |
| 専門的・技術的分野(特定技能を除く) | 313,200 | 92.0 | 技術者・通訳など |
| 身分に基づくもの | 311,100 | 91.3 | 永住者・定住者など |
| 外国人労働者 計 | 254,300 | 74.7 | 全体で25.3%低い |
| 特定技能 | 221,400 | 65.0 | 育成就労からの進路になる |
| 技能実習 | 190,300 | 55.9 | 2027年4月に新規受け入れ停止 |
技能実習は19万300円。一般労働者計34万600円の55.9%である。特定技能が22万1,400円で65.0%。労働時間はむしろ長く、技能実習は所定内163.8時間+超過21.6時間で、全体の157.1時間+17.5時間を上回る。
この差を「外国人だから安い」と読むのは早い。年齢が若く、勤続が短く、企業規模が小さく、非正規が多い。属性が違えば賃金は違う。
そこを調べた研究がある。東京大学の永吉希久子氏が2022年に『日本労働研究雑誌』に載せた分位点回帰は、年齢・性別を統制すると専門・技術の上位層で格差がほぼ消え、学歴と勤続年数まで統制すると中位層の格差も大きく縮むことを示した。それでも、雇用形態・企業規模・産業まで統制したあとで、技能実習と特定技能には約10%の格差が残る。
企業から見れば、話は単純である。盛り付けロボットを1台入れるより、19万円で人を雇うほうが安い。しかもロボットは商品が変われば作り直しになるが、人は翌日から別の弁当を詰められる。
その工場で、日本人の賃金も上がっていない
食料品製造業の労働生産性は1人あたり710万円で、全産業平均968万円を大きく下回る。有効求人倍率は2.89倍(全産業平均1.31倍)。労働災害率は労働者1,000人あたり5.7人で、製造業平均2.7人の約2倍である。
人が足りず、危なく、生産性が低い。それでも賃金は上がらない。足りない分が、機械ではなく人で埋められているからである。
日本惣菜協会がロボットを作り始めたのは、実習生が入れなくなった後だった
ここからが、この記事のいちばん強い材料である。
惣菜と弁当の「盛り付け」は、食品工場でいちばん人手がかかる工程である。日本惣菜協会自身が、盛り付けを「食品製造業で最も人手がかかっており、これまで自動化が不可能とされていた」工程だと書いている。
経済産業省の説明も同じで、食品は「柔軟・不定形であり、高速で見栄え良く盛り付けることは、ロボットにとっては極めて難易度が高い」。技術的に難しいのは事実だ。
では、その難しい開発に、業界はいつ動いたのか。
協会自身が、動機を書き残している
経済産業省の「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」が始まったのは2021年度。農林水産省の「スマート食品産業実証事業」の交付決定が2022年8月21日、経産省事業の交付決定が同年8月31日である。
その2022年9月26日、日本惣菜協会がプレスリリースを出した。自動化に取り組む背景として、こう書いてある。
少子高齢化、さらには、新型コロナウイルス感染対策に伴う外国人技能実習生の入国制限により、多くの惣菜製造現場で人手不足が深刻な問題
── 一般社団法人日本惣菜協会(2022年9月26日)
読み替えると、こうなる。外国人技能実習生が入国できているあいだ、盛り付けは人手不足の問題ではなかった。入国が止まって初めて、深刻な問題になった。そして国の予算がつき、開発が始まった。
これは推測ではない。業界団体が、自分の言葉で、自動化に動いた理由として書いている。
コロナが、意図しない実験になった
技能実習生の入国は2020年から2022年にかけて事実上止まった。そのあいだに何が起きたか。惣菜業界は、20年以上「不可能」とされてきた工程の機械化に、国の事業として着手した。
2025年3月18日、その成果が発表された。惣菜・弁当メーカー51社、開発ベンダー59社が参加し、麺惣菜の盛付全工程、寿司弁当の盛付全工程、フライ投入と弁当盛付を実現したという。
導入実績も出ている。マックスバリュ東海の長泉工場で盛付ロボット3台、イチビキ第2工場・ヒライ熊本工場・藤本食品岐阜工場で各2台。省人化の効果は「シフト7人体制を3人まで削減」と報告されている。7人が3人になる。
つまり、技術がなかったわけではなかった。やる理由がなかっただけである。
そして人の入国は再開した。2025年10月末の外国人労働者は過去最多の257万1,037人。技能実習だけで49万9,394人。盛付ロボットは、いまも実証とモデル導入の段階を出ていない。業界全体での導入台数を示す数字は、公表資料の中に見つけられなかった。
機械を入れても、人が浮かない国になっている
惣菜工場だけの話ではない。日本経済全体で、同じことが数字に出ている。
日本銀行が2023年4月の展望レポートに載せた分析は、短観の個票(2008〜2021年度)から資本と労働の代替の弾力性を推計している。この数字は、機械を入れたときにどれだけ人手を置き換えられるかを表す。
2015〜2019年の日本は全産業で約0.3。アメリカを対象にした先行研究の中央値は0.7程度である。日本は、同じ機械を入れても置き換わる量が半分以下になる。
同じ分析は、人手不足に直面した企業ほど設備投資に積極的であることも示している。投資していないのではない。投資しても人が減らないのである。セルフレジを入れても横に人が立つ。券売機を入れても券を受け取る人がいる。工程そのものを、人がいる前提で組んだままだからだ。
結果は、サービス業の生産性に出ている
日本生産性本部の産業別比較(2020年、米国=100)を見る。
| 産業 | 日本の労働生産性(米国=100) |
|---|---|
| 金融・保険 | 70.8 |
| サービス産業 全体 | 49.6 |
| 運輸・郵便 | 44.1 |
| 卸売・小売 | 37.9 |
| 不動産 | 31.3 |
| 宿泊・飲食サービス | 30.2 |
| 情報通信 | 22.0 |
サービス産業全体で49.6。ちょうど半分である。宿泊・飲食サービス業は30.2。同じ調査は、2015年と比べて宿泊・飲食サービス業などで日米格差が10ポイント前後広がっていると書いている。追いついていない。離されている。
製造業を見ると化学は127.6でアメリカを上回る。日本の生産性が低いのは製造業ではない。人手で回しているところである。
そして、賃金に出ている
賃金構造基本統計調査の2025年版で、一般労働者の所定内給与額は産業計34万600円。16の大産業で最も低いのが宿泊業,飲食サービス業の27万7,200円である。
この産業は、パートの人手不足感が全産業でいちばん強い。厚生労働省の労働経済動向調査(2026年5月1日現在)で、労働者過不足判断D.I.は調査産業計+27に対し宿泊業,飲食サービス業は+42。それでも賃金の伸びは+2.9%で、産業計の+3.1%を下回った。
いちばん人が足りない産業が、いちばん安く、いちばん上がっていない。教科書どおりなら逆になるはずである。
国全体で見ると、実質賃金指数は1996年の116.5がピークで、2025年は98.0。29年でピーク比15.9%下がった。
フランスのマクドナルドは、2009年に始めていた
ヨーロッパと比べる。マクドナルド・フランスが注文用のタッチパネルを店舗に入れ始めたのは2009年6月である。2010年11月の業界誌によれば、その時点で全1,200店に約600台が入り、月に300万人以上が使っていた。
2016年4月には、マクドナルドの欧州7,900店の45%、フランスだけなら90%にタッチパネルが入っていた。レジそのものを置かない店舗フォーマット「Originals」も2015年から実在し、いまも公式の店舗一覧に載っている。
ここは正確に書く。フランス全店からレジ係が消えたわけではない。受け取りカウンターには人がいて、求人票もいまだに働く場所を「客席・カウンター・厨房」と書いている。マクドナルド側は、キオスクは「労働力の置き換えではない」と説明してきた。
それでも、始めた年は動かない。
日本のコンビニのセルフレジは、ローソンが2010年6月、ファミリーマートが2015年11月、セブン‐イレブンが2020年7月に試験を始め、2023年9月末にほぼ全店に行き渡った。
フランスが注文と会計を客に渡したのが2009年。日本の最大手が同じことを始めたのが2020年。11年である。
そしてその11年は、日本が外国人を増やし続けた期間と重なる。在留外国人は2025年末に412万5,395人となり、初めて400万人を超えた。前年から9.5%の増加である。
店頭ではなく、その裏の話でもある
もうひとつ、見落とされている点がある。フランスが機械にしたのは店頭の注文である。日本も店頭にはセルフレジを入れた。差がついているのは店頭ではなく、その裏の工程のほうだ。
コンビニは特定技能の対象分野に入っていない。小売業は19分野のどこにもない。だから「コンビニに外国人の枠はない」ことになる。ところが、その棚に並ぶ弁当と惣菜を作る工場は飲食料品製造業で、ここには特定技能13万3,500人+育成就労6万1,400人、合計19万4,900人の枠がついている。
店の前は機械にした。商品を作っているところは、人で埋めている。
政府は「省人化で何人減らせるか」を、すでに数字にしている
ここまでを読むと、政府が省人化を考えていないように見えるかもしれない。そうではない。むしろ、きちんと数式にしている。問題は、その数式の中身が誰にも検証されていないことのほうだ。
2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針の元になった資料に、受入れ見込数の計算式が書かれている。
受入れ見込数 = 人手不足数 -(生産性向上 + 国内人材確保)
── 出入国在留管理庁「特定技能制度及び育成就労制度の受入れ見込数について」(2025年12月10日・有識者会議資料)
機械や仕組みで埋められる分は先に引く。残った分だけ外国人で埋める。制度の建前は正しい。
では、その「生産性向上」に何が入っているのか。分野ごとにこう書かれている。
| 分野 | 政府が想定した「生産性向上」の中身 | 想定した効果 | 受入れ枠(人) |
|---|---|---|---|
| 飲食料品製造業 | AI、ロボット、IoT等の先端技術の導入等による業務の省力化・省人化等の取組 | 年0.5%程度 | 194,900 |
| 外食業 | ICT化等による業務の省力化・省人化等の取組 | 年0.6%程度 | 55,300 |
| 宿泊 | スマートチェックインの導入等の設備投資に係る取組 | 令和10年度までに5.3% | 20,000 |
| 介護 | ロボットの導入促進やIT技術を活用した生産性向上の取組による効率化 | 令和10年度までに2%程度 | 160,700 |
| 工業製品製造業 | 工場のデジタル化、IoT・AI等の活用による生産プロセスの刷新 | 令和10年度までに10.4% | 319,200 |
| 造船・舶用工業 | デジタル技術等を活用した生産性向上に資する取組 | 5年間で17% | 36,900 |
| 自動車運送業 | 物流DX等による労働時間の削減 | 超過時間3,550万時間の9割 | 22,100 |
いちばん枠が大きい飲食料品製造業の想定は、年0.5%程度である。外食業は年0.6%程度。ほとんど動かない前提が置かれている。
その横に、現場の数字を並べてみる。惣菜協会の実証で報告された盛付ロボットの効果は「シフト7人体制を3人まで削減」。イオンリテールはAI発注を約380店舗に広げて発注時間を半減、ロス率を1割以上下げた。ライフコーポレーションはAI自動発注で年40万時間の発注作業を半減させた。日本銀行が2026年1月に拾った金沢の飲食企業は、配膳ロボットで「1店舗あたり従業員1名に相当する仕事量を削減できている」と答えている。
単位は違う。年率の生産性向上と、1工程の人数削減は、そのまま比べられない。それでも、年0.5%という係数の小ささは、現場で起きていることと釣り合って見えない。
この係数を、誰も議論していない
この数字がどう決まったのかを知りたくて、有識者会議の議事録を第5回・第6回・第11回まで開いた。議論されていたのは平均賃金、労働分配率、キャリアアップ、業務区分、技能評価試験、転籍制限、日本語能力要件である。
AIやロボットによる代替可能性を正面から論じた委員の発言は、1件も見つからなかった。省人化は議論の対象ではなく、事務局が作った算定式のパラメータとして入っているだけだった。
係数を小さく置けば、引き算の答えは大きくなる。外国人の枠は、そこで決まっている。
同じ2026年1月23日、関係閣僚会議は「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を取りまとめ、そこに「省人化を含む生産性向上及び国内人材確保の取組について厳密に精査し」と書いた。厳密に精査した結果は、公表されていない。
反対の材料も置いておく
ここまでの筋書きには、反証がいくつもある。都合の悪いものを隠すと記事の値打ちが下がるので、並べておく。
安い労働力を止めても、機械化が進むとは限らない
アメリカは1964年、メキシコ人季節労働者を大量に受け入れていたブラセロ計画を打ち切った。安い労働力が一気に消えた自然実験である。クレメンス、ルイス、ポステルの2018年の分析(『American Economic Review』)によれば、その後アメリカ人労働者の賃金にも雇用にも有意な効果は出なかった。労働力を止めれば機械化が進む、という単純なモデルとは合わない。
日本を対象にした研究も、外国人が賃金を押し下げたことを示せていない。慶應義塾大学のササハラらの2023年の分析は全体として有意な影響を検出しておらず、ドイと鈴木の2025年の分析では、外国人がいなくなったときの実質賃金への影響は地域によって符号が逆になる。
機械を入れたら賃金が上がる、という証拠もない
一橋大学の森川正之氏の分析(2022年)では、最低賃金が上がったとき資本装備率は上がった(=機械は入った)が、労働生産性は有意に動かず、全要素生産性はむしろマイナスだった。2026年8月のRIETI版でも、賃金は上がったが従業者数が減り、生産性は動かなかった。
アセモグルとレストレポの2020年の研究では、アメリカで労働者1,000人あたりロボットが1台増えると、賃金は0.25〜0.5%下がる。機械が入れば賃金が上がる、とは書けない。
欧米は、むしろセルフレジを外し始めている
アメリカのダラー・ゼネラルは2024年5月、2万店超のうちすでに1万2,000店でセルフレジを撤去したと発表した。理由は棚卸損である。イギリスのブースも2023年11月に28店中26店で撤去した。アマゾンは2026年1月27日、Amazon Freshの57店とAmazon Goの15店、計72店をすべて閉鎖すると発表している。
日本のセルフレジはむしろ増えている。スーパーのフルセルフレジ設置率は2020年の15.8%から2025年版で41.7%。コンビニはほぼ全店に入った。「日本は機械を入れていない」という言い方は、店頭については事実に反する。
それでも残るもの
これらを踏まえたうえで、消えない事実が3つある。
ひとつ。盛り付けの機械化に業界が動いたのは、技能実習生が入国できなくなった後だった。これは他人の解釈ではなく、業界団体が自分で書いた動機である。
ふたつ。日本の資本と労働の代替の弾力性は0.3で、アメリカの0.7の半分以下である。機械を入れても人が浮かない構造が、数字として出ている。
みっつ。政府は省人化の効果を年0.5%と置いて、その分だけ外国人の枠を大きくした。その0.5%が妥当かを検証した記録は、公表されていない。
安い労働力を足す前に、その計算を出してほしい
2027年4月1日から育成就労が始まる。特定技能と合わせた受け入れの上限は123万1,900人。いまの技能実習45万6,618人と特定技能39万296人を足した84万6,914人より大きい。
同時に、日本人は減り続ける。政府自身が「省力化投資促進プラン ―小売業―」(2025年6月13日)で、卸売・小売業の就業者が2021年の1,062万人から2030年に945万人、2040年に836万人まで減る前提を置いた。小売業については「人は減る前提で、機械で埋める」と宣言している。
問題は、その宣言が食品工場と外食と宿泊には出ていないことだ。そこには、人を足す枠のほうが出ている。
この記事は、外国人の受け入れをやめろとは書かない。人手が足りないのは事実で、店が閉まれば戻らない。技能実習生が入国できなかった2年間、惣菜の現場が回らなかったのも事実である。
書いているのは順番の話である。制度は「生産性向上の取組を行ってもなお不足する人数」だけを受け入れると自分で決めた。ならば、その取組を先にやったことを、数字で見せてほしい。
出せるものは3つだけだ。各分野が省人化のために何をやったのか。それで何人ぶん浮いたのか。それでもなぜ足りないのか。この3枚が分野ごとに公表されれば、123万1,900人という数字が積み上げなのか、要望なのかが分かる。
惣菜業界は、人が来なくなった2年間で、20年以上「不可能」とされた工程の機械化に着手した。やればできた。ただ、やる理由が消えると、そこで止まる。
フランスのマクドナルドがレジを機械に渡したのが2009年。セブン‐イレブンが同じことを始めたのが2020年。その11年のあいだ、日本が選んだのは人だった。選び方が悪かったとは言わない。ただ、次の11年も同じ選び方をするなら、その計算を紙に書いて出してほしい。安いのは労働力の値段であって、そのツケは日本人の給料で払っている。
この記事で使った資料と、その確度
確度が低いから使わない、という意味ではない。★2でも用途を限定すれば材料になる。ここでは、どの資料を何に使い、何に使わなかったかを書く。
| 確度 | 媒体 | 資料 | 評価の理由 |
|---|---|---|---|
| ★4 | 日本惣菜協会 | 惣菜製造の自動化に関するプレスリリース(2022年9月26日)/盛付ロボット化の成果(2025年3月18日) | この記事の背骨。鉤括弧はこの原文から取った。業界団体の自己言明なので★4だが、動機を本人が書いた資料としては一次に近い。 |
| ★5 | 経済産業省ロボット政策室 | 惣菜業界の自動化促進に向けた取組 | 「シフト7人体制を3人まで削減」という導入実績と、事業の枠組み。省人化の効果として使った唯一の実数。 |
| ★5 | 厚生労働省 | 外国人雇用状況の届出状況(令和7年10月末時点)(産業別表) | 257万1,037人と産業別の内訳。食料品製造業20万3,834人はこの表による。構成比から割り戻して検算した。 |
| ★5 | 総務省統計局/JILPT | 労働力調査(2025年平均)/産業別就業者数(2026年2月16日更新) | 外国人比率の分母。統計局の概要PDFは表の行がずれて読めたため、JILPTの図で確認し直した。 |
| ★5 | 経済産業省 | 2024年経済構造実態調査 製造業事業所調査 | 食料品製造業の従業者数112万2,868人。約18%の分母。分子と時点も調査も違うので「約18%」までにとどめた。 |
| ★5 | 出入国在留管理庁 | 特定技能1号の分野ごとの受入れ見込数や在留者数等(2026年7月3日) | 飲食料品製造業が9万6,367人で全19分野1位であることの出典。 |
| ★5 | 外国人技能実習機構 | 令和6年度 業務統計 | 技能実習の職種別で食品製造関係が2位、そう菜製造業が最多という記述の根拠。 |
| ★5 | 厚生労働省 | 賃金構造基本統計調査 在留資格区分別(2025年)/産業別 | 技能実習19万300円、特定技能22万1,400円、宿泊・飲食が最下位27万7,200円。公表数値そのまま。 |
| ★5 | 厚生労働省 | 労働経済動向調査(2026年5月1日現在)/毎月勤労統計 令和7年分確報 | パートの労働者過不足判断D.I.と実質賃金指数のピーク比。日銀短観には宿泊・飲食の内訳がないため前者を使った。 |
| ★5 | 農林水産省 | 食品製造業をめぐる情勢(令和8年4月) | 食料品製造業の労働生産性710万円/人、有効求人倍率2.89倍、労働災害率5.7人。 |
| ★5 | 日本銀行 | 展望レポート(2023年4月)BOX3/さくらレポート(2026年1月8日) | 代替の弾力性が日本約0.3、米国の先行研究の中央値0.7程度。金沢の飲食企業の「従業員1名に相当する仕事量を削減」も後者。 |
| ★4 | 日本生産性本部 | 産業別労働生産性水準の国際比較(2020年・米国=100) | 宿泊・飲食30.2、サービス産業全体49.6、日米格差の拡大。民間の推計なので★4。 |
| ★5 | 出入国在留管理庁 | 特定技能制度及び育成就労制度の受入れ見込数について/分野別運用方針(2026年1月23日閣議決定) | 算定式と、分野ごとの生産性向上の中身・想定効果・受入れ枠。年0.5%はこの資料の記述。 |
| ★5 | 出入国在留管理庁 | 有識者会議 第11回 議事録(第5回・第6回も確認) | AIやロボットによる代替を論じた委員の発言が見つからなかったことの根拠。「見つからなかった」も、この確認に基づく。 |
| ★5 | 関係閣僚会議 | 外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策(2026年1月23日)/省力化投資促進プラン ―小売業―(2025年6月13日) | 「省人化を含む生産性向上及び国内人材確保の取組について厳密に精査し」の原文と、卸売・小売業の就業者見通し。 |
| ★4 | マクドナルド・フランスほか | 公式の主要数字/Relation Client Magazine(2010年11月)/QSRweb(2016年4月) | 2009年6月の導入、欧州45%・フランス90%、カウンター職の存続。年号と数字だけに使った。 |
| ★4 | Retail Dive/GeekWire/ITmedia | ダラー・ゼネラルの撤去/アマゾンの全店閉鎖/コンビニのセルフレジ導入時期 | 反対材料の章と、年表の日本側。英語の記事は当方の訳=要旨として読んでほしい。 |
| ★5 | 学術論文 | Clemens et al. (2018)/Sasahara et al. (2023)/森川 (2022)/Acemoglu & Restrepo (2020) | 反対材料。結論が割れているため片側だけを引かず、独立した章にまとめた。 |
| ★4 | イオンリテール・日本IBM/ライフ | AIカカク・AIオーダー約380店舗/ライフのAI自動発注 | 現場で出ている省人化の実数。自社発表と業界紙なので★4。政府の想定係数と並べる材料に使った。 |
確認できなかったことも書いておく。コンビニ向けに弁当を作っているベンダー各社のうち、外国人従業員の比率を数字で開示している会社は見つからなかった。わらべや日洋の有価証券報告書にも記載がない。盛付ロボットが業界全体で何台入ったのかも公表資料にない。技能実習生の受け入れが地域の賃金を押し下げたことを示した日本の査読論文も見つからなかった。
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