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斎藤元彦の120億円黒字と同じ日に転落 6年前の県議会で、県は3度「通常です」と答えていた

2026年8月、兵庫県の令和7年度決算から、真逆の2つの数字が出ました。

実質収支は約120億円の黒字。後年度清算分を除いても約63億円の黒字で、いずれも前年度から大幅に増えています。好調な企業業績による税収増が要因です。

同じ決算で、実質公債費比率は19.2%。18%の基準を超え、兵庫県は14年ぶりに「起債許可団体」へ移行しました。借金をするのに国の許可がいる状態です。

この矛盾の中心にあるのが、2000年に買って売れなかった490億円の土地です。その処理は、当サイトでも7月から追ってきました。

今回、新しく分かったことがあります。

この問題は「20年間、誰も気づかなかった」のではありませんでした。気づいて聞いた県議がいます。2020年3月3日の総務常任委員会で、3往復にわたって。

そして県は、3度とも「通常の取扱である」と答えました。問題の全額借り換えは、その直後の令和2年度に行われています。

同じ決算から出た2つの数字実質収支120億円の黒字と、実質公債費比率19.2%による起債許可団体への移行同じ決算から、真逆の2つの数字が出た今年いくら残ったか実質収支+120億円黒字。前年から大幅増後年度清算分を除いても+63億円過去の借金がどれだけ重いか実質公債費比率(3年平均)19.2%18%超で起債許可団体へ14年ぶり。借金に国の許可がいる同じ決算単年度の収支と、過去の借金の重さは、別の指標で測られている出典:兵庫県の発表(2026年8月)。比率は3か年平均。起債許可団体の基準は地方財政法施行令による18%。

以下、まず2つの数字がなぜ矛盾しないのかを短く確認し、そのうえで6年前の県議会で何が起きていたかを会議録で見ていきます。

なぜ黒字なのに転落するのか

ここは短く済ませます。くわしくは兵庫県で見る地方財政のしくみに書きました。

実質収支は「その年の収入と支出」です。単年度の話にすぎません。

実質公債費比率は「過去に借りた金の返済が、収入の何%を占めるか」を3年平均で見る指標です。

家計でいえば、今年の給料が増えても、20年前に組んだローンの返済額は減らない。それだけのことです。

今回は「直したこと」で数字が悪化している

もう一点あります。

今回の悪化には、違法の恐れがある会計処理を修正したことによる分が含まれています。隠れていた負担が表に出た、という構造です。

ただしそれが主因ではありません。この点は後半で県自身の数字を使って確認します。

2020年3月3日、県議は3度聞いていた

ここからが、この記事で新しく分かった部分です。

兵庫県議会の会議録検索システムで、用先債に関する質疑を平成12年から令和8年6月まで探しました。

そのなかに、問題の全額借り換えが行われる直前の質疑がありました。

やりとりの全文

2020年(令和2年)3月3日、総務常任委員会。令和元年度補正予算の審査で、竹内英明委員が問いただしています。

竹内英明委員:通常であれば、起債の要件は10年以内に事業化するというルールであったと思っている。今回、繰上償還の対象になっているということで、これまでと運用が違う。(中略)今回、なぜ繰上償還という扱いになっているのか。また、実質公債費比率という財政指標にどのような影響を与えるのか。

資金財産室長:その起債については、原則10年となっているが、本県においては30年ということで、起債の許可年限を延長してもらっている。これについて、先行用地取得債で取得したものを買い戻す場合は、その先行用地取得債を償還し、買い戻す財源として地域活性化事業債を発行するという取扱であるので、通常の取扱である。

竹内委員:取扱は理解したが、実質公債費比率の算定に入るのかどうかについて、教えてほしい。

資金財産室長:実質公債費比率上の算定は、通常の起債であるので、返済した分は当然外れることになり(中略)通常の取扱と何ら変わらないものである。

竹内委員:一般的に繰上償還であれば、実質公債費比率のいわゆる分子の方から除外されると私は理解しているが、これは償還したものとして、一般財源を使ったものとしてカウントされるという理解でよいか。

資金財産室長:特段、イレギュラーな取扱になるわけではなく、通常の実質公債費比率の算定ルールに従っているものであるので、この起債であるから何かが違うということではない。

── 兵庫県議会 総務常任委員会(2020年3月3日)会議録より。(中略)は本記事による

3度聞いて、3度「通常」と答えられている

整理します。

この委員が聞いていたのは、「買い戻し(=繰上償還)が、実質公債費比率にどう効くのか」です。指標の分子から外れるのではないか、と3度にわたって確認しています。

県の答えは3度とも同じでした。「通常の取扱である」「通常の取扱と何ら変わらない」「特段、イレギュラーな取扱になるわけではなく」。

やりとりのあと、企画財政局長が引き取り、用先債は「事業化する前に先行取得をするための仮の起債」であり、実質公債費比率の計算上は対象外になる、と説明しています。

会議録に残っている、この委員の仕事ぶり

やりとりを読み返すと、質問の中身以上に伝わってくるものがあります。

まず、見つけていること。補正予算の議案は数が多く、そのなかで起債の処理は最も地味な項目です。金額の大きい事業でも、新しい政策でもありません。そこから、この1件を拾っています。

次に、自分で調べていること。質問は「起債の要件は10年以内に事業化するというルールであったと思っている」という前置きから始まります。制度を自分で確認したうえで、運用が違うのではないかと聞いています。

そして、1度目の答弁で引いていません。「取扱は理解したが」と受けたうえで、「実質公債費比率の算定に入るのかどうか」と、聞きたいことを絞り直しています。

3度目には、こう述べています。

「実質公債費比率の算定様式には、繰上償還を除くという規定があることから、これは繰上償還なので、返済したことに含めないと理解していたが、どうか」

算定様式まで読んでいる、ということです。

このやりとりの最後は、資金財産室長では収まらず、企画財政局長が引き取って答えています。

結果として、この委員は答えを得られませんでした。3度とも「通常です」で返され、そこで終わっています。

それでも6年後に問題になる場所のいちばん近くまで掘っていたのは、この人でした。

ただし、聞かれていない論点がひとつある

公平のために書いておきます。

この質疑でも、「売却済みの土地に対応する用先債を償還せず、全額で借り換える」という論点そのものは問われていません。

委員が追及したのは指標への影響であって、借り換えの額が正しいかどうかではありませんでした。

それでも、この委員会の直後の令和2年度に、338億円分を差し引かない全額借り換えが行われています。県が「通常です」と答えた処理の延長線上で起きた、ということです。

問いただしたのは、のちに斎藤知事を調べる側に回った県議だった

ここは、はっきり書いておきます。

この質疑は、斎藤知事を支持する立場から出たものではありません。

竹内英明の会派は、野党系の「ひょうご県民連合」です。姫路市議を1期務めたあと、2007年に県議へ転じ、5期を重ねました。

そして2024年、斎藤知事の告発文書問題を調べる百条委員会の委員を務めています。同年11月18日に議員を辞職し、2025年1月に亡くなりました。

同じ場所を、別々の時期に、別々の立場から指している

整理すると、こうなります。

時期 誰が、何をしたか
2020年3月 野党系会派の県議が、井戸県政の用先債の処理を委員会で3度問いただした
2024年 同じ県議が、斎藤知事を調べる百条委員会の委員を務めた
2026年7月 斎藤知事の県政が、その用先債の処理を違法の恐れがあると公表した

6年前に問題を指摘した県議と、いま同じ問題を公表した知事は、政治的には対立する側にいました。

それでも、2人が指している場所は同じです。

この記事は、この質疑を「斎藤知事に有利な材料」としては使いません。財政のチェックは、どちらの側についているかとは別の仕事だった——そう読むほうが、起きたことに近いと考えます。

この記事は、県の答弁が虚偽だったと主張するものではありません。当時の担当者に違法性の認識はなかったと県は説明しており、それを覆す材料はありません。ここで記録しているのは、議会に問われる機会が実際にあり、そこで「通常」と処理されたという事実だけです。

そして、それ以降の6年間は質疑がゼロ

会議録を通して見ると、令和2年度の借り換え以降、令和7年まで用先債に関する質疑は見つかりませんでした。

共産党会派が予算・決算の反対討論で県有環境林の取得原資に触れていますが、借り換えの適法性を論じたものではありません。

公表の約3週間前、2026年6月5日の本会議で、別の議員が環境林の買い戻しスキーム自体を追及しています。「東京ドーム約640個分の約3,000ヘクタール、取得金額2,145億円」という数字を挙げた質疑でした。

監査委員は、同じ基金を16年分洗い直したのに見落とした

議会の次は、監査です。

兵庫県の監査委員による指摘は、見つかりませんでした。

全額借り換えを実行した年度の意見書

令和2年度の健全化判断比率審査意見書は、こう結論づけています。

「審査に付された健全化判断比率等は正確で、その算定の基礎となる事項を記載した書類は、適正に作成されているものと認められた」

同じ意見書の内訳では、県債管理基金の積立不足に対する加算が、令和元年度の136億1934万円から令和2年度の49億4610万円へ、1年で約87億円減っています。この変化についてのコメントはありません。

決算審査意見書の指摘は、6年間同じ3項目だった

決算審査意見書の「留意・改善・要望事項」は、令和元年度から令和6年度まで6年連続で同じ3項目でした。経理事務の適正化、収入の促進、内部管理の適正な運用です。

公共事業用地先行取得事業特別会計は毎年「審査の対象」として列挙され、決算額の表にも載っています。ただし意見の部分での言及はありません。

いちばん惜しいのは、2024年2月の再審査

ここが、この章でもっとも重い事実です。

監査委員は2024年(令和6年)2月5日、平成19年度から令和4年度までの16年分の健全化判断比率を再審査しています。

理由は「健全化判断比率算定上の県債管理基金残高を修正するため」——まさに同じ基金を洗い直した監査でした。

ところが対象になったのは分収造林事業と地域整備事業会計への貸付で、用先債の338億円は捕捉されていません。

この再審査で、令和2年度の実質公債費比率は14.7%から15.2%に修正されました。監査委員は意見書で「非常に遺憾」とし、今後このようなことがないよう適正な算定の徹底を厳に求める、と書いています。

同じ基金を、16年分、遺憾だと言いながら洗い直して、隣にあった338億円には届かなかった。

包括外部監査でも扱われていない

平成17年度から令和7年度までの21年度分の包括外部監査を確認しましたが、用地特別会計・用先債・県債管理基金・県債管理がテーマになったことは一度もありません。

国には、この局面を見る仕組みがなかった

3つ目のチェックは、国です。ここは「見逃した」のではなく、「見る場面が制度に組み込まれていなかった」というのが正確です。

予定された借り換えなら、協議はいらない

根拠は法律ではなく、地方債に関する省令(平成18年総務省令第54号)第1条です。

同意または許可を得て発行した地方債について、その許可の中であらかじめ予定されていた借り換えを行う場合は、改めての協議が不要とされています。

つまり当初の起債許可の段階で借り換え計画ごと審査され、計画どおりの借り換えであれば、以後は国の審査を通らないということです。

基準には「縮減」と書いてある

ただし、国の側に何も書いていないわけではありません。

総務省の地方債同意等基準運用要綱は、償還年限内に借り換えを予定する場合、「それまでの経過年数に応じて、借換額を縮減する旨を明らかにしたものを原則として対象とすること」と定めています。

また総務省の「地方債についての質疑応答集」は、用地を一般会計等が再取得する場合の用地特会の起債残高について、「本来、再取得の際には償還すべきもの」であるとして、繰上償還または減債基金への積立て等の措置を求めています。

基準はあった。ただし、その場で確認する手続きがなかった——という形です。

当時の兵庫県は、許可がいる状態ではなかった

もうひとつ、時期の問題があります。

全額借り換えが行われた令和2年度時点で、兵庫県は「協議団体」であって許可団体ではありませんでした。実質公債費比率は修正後で15.2%、基準の18%を下回っています。

許可団体だったのは平成19年度から23年度まで。そして2026年8月、14年ぶりに許可団体へ戻りました。

3層のチェックが、いずれも同じ場所を素通りした県議会・監査委員・国の3つのチェック機能が用先債の借り換えを捕捉しなかった経緯3層のチェックが、いずれも同じ場所を素通りしていた県議会いつ2020年3月3日 総務常任委員会何が起きたか委員が3往復にわたり、指標への影響を追及した結果県は3度「通常の取扱」と答弁直後の令和2年度に全額借換監査委員いつ2024年2月5日 再審査何が起きたか県債管理基金の残高を修正するため16年分を洗い直した結果用先債338億円は捕捉されず意見書には「非常に遺憾」と記載国(総務省)いつ当初の起債許可の段階だけ制度はどうなっているか予定された借換なら、改めての協議は不要(省令第1条)結果その場で確認する手続きがない当時の県は許可団体でもなかった発覚したのは2026年6月。きっかけは、新聞記者からの取材だった出典:兵庫県議会会議録検索システム、兵庫県監査委員の各意見書、地方債に関する省令および地方債同意等基準運用要綱、2026年7月15日の知事定例会見録。

発覚の端緒は、記者の取材だった

では、なぜ2026年になって表に出たのか。

県の財政課長が、公式の記者会見で日付入りで答えています。2026年7月15日の知事定例会見です。

本件の事実関係ですが、まず、6月下旬に、記者から財政課に対し、今回の用先債の借り換えに関する取材がございました。こちら日付が6月23日以降でございます。これを踏まえまして、県としても、当該用先債の取り扱いについて疑義を認識するに至りました。

このため、財政課におきまして、これまでの間、関係法令の解釈の再確認と、当時の関係者に対する事実確認、また総務省に対する見解の確認を行っておりました。その結果、7月6日月曜日までに、総務省から財政課に対し土地売却収入が生じていた、つまり取得した土地が存在しなくなった部分の用先債の借り換えは、地方財政法に抵触する差異があるものであるという見解が示されました。

これらの一連の経緯につきまして、7月6日月曜日中に、財政課から齋藤知事にご報告をしております。

── 兵庫県財政課長(2026年7月15日・知事定例会見録より)

議会でも監査でもなく、記者の取材が端緒だったということです。

取材した社名は、財政課長も明らかにしていません。

県は同じ日に、3通りの説明をしている

ここも、並べておく価値があります。

公表日の2026年7月13日、県は発覚の経緯について3つの異なる説明を出しています。

出所 発覚の端緒の説明
財政課が作成した資料 実質公債費比率の将来推計にあたり、県債管理基金残高を検証した結果、修正及び見直すべき点が判明。記者取材にも総務省にも触れていない
同日の知事あいさつ 総務省から地方財政法に抵触するおそれがあるとの指摘を受け、このたび判明した
2日後の財政課長答弁 6月23日以降、記者からの取材を踏まえて疑義を認識し、その後に総務省へ照会した

3つは矛盾するわけではありません。時系列でつなげば、記者の取材 → 県の内部確認 → 総務省への照会 → 見解の受領、という順序になります。

ただし財政課が作った書面だけを読むと、県が自主的に見つけたように読めます。そこは書いておきます。

5,000億円の積立不足を、翻訳する

今回の発表で、もうひとつ大きな数字が出ています。

県債管理基金の積立不足が、約5,000億円。

桁が大きすぎて、そのままでは実感になりません。翻訳します。

県の年間予算の、およそ2割

兵庫県の年間予算は2兆3,822億円です(当サイトの地方財政のしくみで分解しました)。

5,000億円は、そのおよそ21%にあたります。

1年分の予算のうち、2割強にあたる額が、積んであるはずなのに積まれていないということです。

そもそも、何のための積立なのか

県債管理基金は、満期に一括で返す約束の借金に備えて、毎年少しずつ積んでおく貯金です。

満期一括償還の地方債は、途中で元本を返しません。だから返す日に一度に必要になります。その日のために積んでおくのが基金です。

積立不足とは、その貯金が予定より少ないという意味です。

そして今回の用先債の問題は、まさにこの基金に関わります。売れた土地の代金が基金に積まれ、他の借金の積立不足の判定を良く見せていた——という構造だったからです。

「主因」ではない、と県自身の数字が言っている

もうひとつ、確認しておくべきことがあります。

斎藤知事は、財政悪化の原因として過去の過剰な公共投資、震災県債の償還、分収造林・地域整備事業の処理、違法性が指摘された用先債の処理、臨時財政対策債の償還用交付税の先食い、急激な金利上昇を挙げています。

ただし用先債の寄与分は、県自身の試算では大きくありません。

県の資料によれば、用先債の処理による実質公債費比率の悪化幅は最大0.8ポイントで、令和13年度以降は0.0ポイントです。

2026年7月16日の県議会総務常任委員会では、財政課長が「この最大0.8ポイントの悪化を抜いたとしても、令和14年度には3か年平均25%を超過し、早期健全化団体への移行が見込まれる」と答弁しています。

つまり用先債がなくても、兵庫県の財政は同じ方向に進んでいたということです。

知事は7月22日の会見で、この点について「特に矛盾はないというふうに思っています」と述べています。

井戸敏三へのヒアリング

問題とされる起債は、いずれも井戸敏三前知事の在任中に行われています。斎藤元彦知事の就任は2021年8月です。

斎藤知事は、平成31年(2019年)2月の当初予算協議において、当時の知事から県債管理基金の積立不足率の改善を念頭に留保や全額借り換えをするよう指示があった、との報告を受けていると説明しています。

ただしこれは伝聞です。知事自身、「私が今確認して聞いている段階では」と前置きしています。

県が当時の担当者に聞き取りをした結果は、担当者に違法性の認識はなく、理由は不明というものでした。

前知事側の見解は、まだ取れていない

この記事の執筆時点で、井戸前知事本人のコメントを報じた記事は見つかっていません。否定も、反論も、「記憶にない」もです。

ヒアリングも、まだ実施されていません。

2026年8月19日、産経新聞は、斎藤知事が過去の財政運営を検証するため井戸前知事を含む幹部からヒアリングする必要があると指摘した、と報じました。

8月7日には、持続可能な財政運営検討会の下に原因究明・再発防止の部会を設置することが発表されています。委員は公認会計士と弁護士、9月上旬に初会合、11月上旬にとりまとめの予定です。

この部会は、日弁連のガイドラインに準拠した第三者委員会ではありません。委員を選ぶのは県であり、前知事を呼ぶ強制力もありません。この点は検証部会の記事にくわしく書きました。

いま動いているもう一つの手続き

2026年7月24日付で、神戸市灘区の住民5人が住民監査請求を提出しています。

請求の内容は、不適切な借換債の起債の経緯と組織的な隠ぺいの実態の調査、そして前知事および当時の担当幹部職員への損害賠償を現知事に勧告すること、というものです。

結果の公表期限は2026年9月27日です。

これから確認できる日付

時期 確認できること
2026年8月中 公債費負担適正化計画が策定され、総務省に提出される。投資規模を最低10%削減する内容になるか
2026年9月上旬 原因究明・再発防止部会の初会合。前知事へのヒアリングが議題に入るか
2026年9月27日 住民監査請求の結果公表期限
2026年11月上旬 部会のとりまとめ。2020年3月の委員会答弁について、何か書かれるか
今後 井戸前知事が何か述べるかどうか。現時点で発言は確認できていない

この記事が言えること

ここからは論評です。

「誰も気づかなかった」わけではありませんでした。2020年3月に、県議が3度聞いています。

ただし、その質問は「指標にどう効くか」を聞くものであって、「借り換えの額は正しいか」を聞くものではありませんでした。県は3度とも「通常です」と答え、それで終わっています。

監査委員は2024年に同じ基金を16年分洗い直しましたが、届きませんでした。国は、この局面を見る手続きを持っていませんでした。

そして最後に見つけたのは、新聞記者です。

議会にも監査にも国にも権限があり、記者には権限がありません。権限を持っている3つが通し、権限のない1つが見つけた——それが、この6年間に起きたことです。

兵庫県だけの話だと言い切れる材料は、この記事にはありません。

この記事で使った資料と、その確度

★が低いから使わない、という意味ではありません。★2でも、用途を限定すれば材料になります。何に使い、何に使わなかったかを書いています。

確度 媒体 資料 評価の理由
★5 兵庫県議会(公式) 会議録検索システム(2020年3月3日 総務常任委員会) この記事でいちばん新しい部分の出所。議会の公式記録なので、発言は原文のまま鉤括弧で引用できる。平成12年から令和8年6月までを検索した
★5 兵庫県監査委員(公式) 健全化判断比率再審査意見書令和2年度 健全化判断比率審査意見書 「16年分を洗い直したのに捕捉していない」の根拠。意見書の本文と数字を直接確認した。「非常に遺憾」も原文
★5 兵庫県(公式) 知事定例会見(2026年7月15日)用先債の取扱いに関する資料検討会の議事要旨 財政課長の「6月23日以降、記者から取材」はこの会見録の原文。「同じ日に3通りの説明」も、この3点を並べて確認した
★5 総務省(公式) 地方債関係法令地方債同意等基準運用要綱 「予定された借換なら協議不要」と「借換額を縮減する」の両方の出所。条文と要綱の文言を直接確認した
★4 神戸新聞 起債許可団体への移行住民監査請求の提出 地元紙が継続取材している。住民監査請求の請求内容と9月27日の期限は、この報道による
★3 産経新聞・ラジオ関西 井戸前知事からのヒアリングが不可欠検証部会をめぐる知事発言 ヒアリングに関する知事発言の出所。斎藤知事の発言は伝聞の形でしか報じられていないため、本文でも「報告を受けている」という形のまま書いた
★2 個人の分析記事 兵庫県「用先債」490億円、何が問題だったのか 制度の整理として有用だが個人の発信。ここに書かれた内容は、総務省の省令と要綱の原本で裏を取ったうえで使っている

この記事で埋まらなかったもの

2020年度の借り換えを誰が決裁したのかは、分かりませんでした。知事決裁か、財務部長・財政課長の専決かの別は、県も報道も明らかにしていません。決裁文書の現存すら報じられていません。

取材した新聞社の社名も分かりません。財政課長は「記者」としか述べていません。

井戸前知事側の見解は取れていません。否定も反論も報じられていない、という状態です。

県が「地方財政法に抵触する」と言うとき、どの条項を指しているのかは示されていません。県の資料も条項を明示していません。なお用先債の根拠は地方財政法第5条第5号(公共用地の先行取得)です。「土地を売ったら償還に充てなければならない」という直接の条文は、地方財政法にも施行令にも見当たりませんでした。根拠は運用要綱の縮減規定、質疑応答集、そして起債許可に付された償還計画の3層にあると考えられます。

語の強さも媒体によって違います。県の資料は図の中で「地財法に抵触する起債」と断定的に書く一方、本文と知事は「抵触するおそれ」としています。報道では「違法な起債」「違法に発行」という語も使われています。本記事は原則として「抵触する恐れ」を採りました。

関連(当サイト既報)

この問題は7月から追っています。それぞれ別の角度で書いているので、あわせてどうぞ。

338億円を「返さず見せかけ」ていた——用先債の中身と、実質公債費比率という指標の仕組み。

検証部会は、委員を選ぶのが県で、前知事を呼ぶ強制力はない——8月7日に決まった検証の設計。

斎藤知事は兵庫の財政を壊したのか——井戸県政20年と斎藤県政5年、悪化の責任を数字で切り分ける。

兵庫県で見る地方財政のしくみ——2兆3,822億円を全部ばらすと、税収が過去最高でも悪化する理由が見えてくる。

この記事に登場する人物斎藤元彦

編集者K

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