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千葉の大雨 火災保険に入っていても、4割は水害で1円も出ない

火災保険に入っていても、水害では1円も出ないことがあります。

水災補償を付けているかどうかで決まります。損害保険料率算出機構の統計では、2024年度の水災補償の付帯率は61.8%約4割は付けていません。しかもこの割合は、減る方向で動いています。

外した理由の多くは、おそらく「うちはハザードマップで色が塗られていないから」です。

ところが千葉の豪雨では、浸水被害の報告2万件を分析したところ、2人に1人が浸水想定区域の「外」で被災していました。

この記事では、家・家財・車のそれぞれで何が出て何が出ないのかを、条件つきで並べます。

まず、3つが別々だという話から

ここを取り違えている人がいちばん多いところです。

大雨の被害で、何が出て何が出ないか建物・家財・車それぞれに必要な契約大雨で壊れたとき、何が要るのか建物火災保険+水災補償水災を外していると1円も出ない家財家財の火災保険+水災補償建物とは別契約。建物だけだと家具も家電も出ない自動車保険の車両保険火災保険では出ない。一般型でもエコノミー型でも洪水は対象冠水した道路に自分から入って水没した場合は、重過失として対象外になることがある

建物

火災保険の対象ですが、水災補償を付けている場合に限ります。火災保険という名前でも、水害は自動的には入っていません。

家財

建物とは別の契約です。建物だけに入っている人の家具・家電・衣類は、水に浸かっても対象外になります。

持ち家で住宅ローンを組むときに火災保険へ入る場合、建物だけで契約しているケースは珍しくありません。賃貸の人は逆で、建物は大家の契約なので、自分が入るのは家財の側になります。

火災保険では1円も出ません。敷地の中で水没しても、車は建物でも家財でもないからです。

必要なのは自動車保険の車両保険です。洪水による水没は、「一般型」でも「エコノミー型(車対車+A)」でも補償されます。ここは誤解されやすいところで、エコノミー型だから出ない、ということはありません。

出る条件は、3つのうちどれか

水災補償を付けていれば必ず出る、というわけでもありません。

主要各社でほぼ共通の基準は、次のとおりです。

条件 内容
損害の割合 建物または家財に、再調達価額の30%以上の損害が出た
床上浸水 床上浸水して、対象に損害が出た
45センチ 地盤面から45センチを超える浸水を受けて、対象に損害が出た

このいずれかに当てはまれば支払いの対象になります。ソニー損保、日新火災、三井住友海上のいずれも同じ形の基準を公表しています。

床下浸水だけだと、出ないことがある

裏を返すとこうなります。床下浸水にとどまり、地盤面から45センチも超えず、損害も30%に届かない場合は、対象になりません。

「45センチ」は地盤面から測ります。床からではありません。ここを勘違いすると、判断を誤ります。

この項目について 上の基準は複数社の公表ページで共通の形を確認したものですが、契約している商品や特約によって条件が違う可能性があります。実際の判断は、必ず自分の証券と約款、または保険会社への確認で行ってください。

なぜ4割が、水災補償を外したのか

ここに、この記事でいちばん書きたい流れがあります。

水災補償が外されていく流れハザードマップの充実から料率細分化までの連鎖なぜ4割が水災補償を外したのかハザードマップが充実したリスクが低い人が水災を外す残るのは高リスク層だけ料率が上がる2024年10月 水災料率を5区分に細分化そして今回、浸水した人の2人に1人は、浸水想定区域の「外」だった付帯率は損害保険料率算出機構、浸水想定区域外の割合はウェザーニューズの分析による

ハザードマップが整備され、誰でも自分の家のリスクを調べられるようになりました。その結果、リスクが低いとされた地域の人が、水災補償を外すようになります。保険料が下がるので、合理的な判断です。

ですが保険は、加入者全体でリスクを分け合う仕組みです。低リスクの人が抜けると、残るのは高リスクの人ばかりになり、料率が上がります。上がればまた抜ける。

この流れに対応するため、2024年10月から水災料率が5区分に細分化されました。洪水ハザードマップに加え、過去の水災事故の統計や地形データをもとに、地域ごとにリスクを分けています。

細分化しなかった場合と比べると、1等地は約6%低く、5等地は約9%高い。較差は約1.2倍です。

そして、その前提が揺れている

ここで千葉の数字に戻ります。

ウェザーニューズが浸水被害の報告2万件を分析したところ、2人に1人が浸水想定区域の「外」で被災していました。

今回の被害は川があふれる外水氾濫ではなく、排水が追いつかずに水があふれる内水氾濫が中心でした。下水道の一般的な処理能力は1時間あたり50ミリ程度とされますが、千葉市には1時間115.0ミリが降っています。

国土交通省の道路冠水注意箇所マップにも、こう書かれています。「この箇所以外でも冠水する恐れがあります」。

ハザードマップの外だから水災補償を外した人が、ハザードマップの外で濡れた。これが今回起きたことの、いちばん短い要約かもしれません。

この接続について 付帯率を外した人と、今回浸水した人が同じ人だと確認したわけではありません。2つの統計を並べているだけです。また「2人に1人」はウェザーニューズが自社に寄せられた報告を集計したもので、公的統計ではありません。

車のことは、別に覚えておく

車は火災保険では出ません。ここは繰り返し書いておきます。

洪水はエコノミー型でも出る

車両保険には大きく2種類あります。相手のある事故だけをカバーする「エコノミー型(車対車+A)」と、単独事故まで含む「一般型」です。

洪水による水没は、どちらでも補償されます。エコノミー型を選んでいるから諦める、という必要はありません。

ただし、使うと等級が下がる

ここが盲点です。

台風や洪水による水没で車両保険を使うと、「1等級ダウン事故」として扱われます。翌年のノンフリート等級が1つ下がり、さらに「事故有係数適用期間」が1年加算されます。

自然災害なのだから等級は据え置き、とはなりません。修理費と、翌年以降の保険料の上がり幅を比べて判断する場面が出てきます。

自分から冠水路に入った場合

もう1つ、重要な例外があります。

冠水した道路に無理に進入して水没した場合は、運転者の重過失として補償の対象外になる可能性があります。窓を開けたまま放置して浸水した場合も同様です。

駐車していた車が水に浸かったのと、自分でアンダーパスに突っ込んだのとでは、扱いが変わりうるということです。

なお地震・噴火・津波による水没は、車両保険では出ません。こちらは自動車保険の特約や地震保険の領域になります。今回の大雨は水災の扱いです。

片付ける前に、やるべきこと

ここからは手順です。この章がいちばん実用になります。

1 写真を撮る

片付けを始める前に、記録を残します。保険会社に提示するのは、修繕前の被害箇所の写真です。

撮っておきたいのは次のものです。

  • 浸水の高さが分かる写真。壁の水跡と、そばに立てたメジャーや身近な物を一緒に写す
  • 建物の外観(4方向)と、浸水した各部屋の全景
  • 水に浸かった家財を、1点ずつ。型番や製造番号が写るように
  • 車は、外観とメーターパネル、浸水の高さが分かる位置
  • 日付が分かる形で。スマートフォンなら撮影日時が自動で残ります

捨てる前に撮る。これだけで、後の話が変わります。

2 罹災証明書を申請する

市区町村が発行します。住宅の被害程度を公的に認定する書類で、公的支援や税の減免を受けるときに必要になります。

保険金の請求で必須かどうかは会社と状況によりますが、求められることがあるため、早めに申請しておくほうが安全です。

3 保険会社に連絡する

契約している保険会社か代理店に連絡します。証券番号が分からなくても、名前と住所で照会できます。

火災保険と自動車保険で会社が違うことも多いので、両方に連絡が要るかを確認してください。

4 期限は3年

保険金の請求権は、保険法第95条により3年で時効になります。事故の発生から3年です。

逆に言えば、すでに修理してしまった被害でも、3年以内なら請求できる場合があります。その場合は「何が原因か」「いつの被害か」を示す証拠が要ります。ここでも写真です。

順番 やること
1 片付ける前に写真。浸水の高さ、家財は1点ずつ
2 市区町村に罹災証明書を申請
3 保険会社へ連絡。火災保険と自動車保険は別
4 修理の見積もりを取る
5 請求。期限は事故から3年

保険が出ないときに、公の制度がある

水災補償を付けていなかった場合でも、公的な支援は別に存在します。

被災者生活再建支援法による支援金です。住宅の被害程度に応じて支給されます。

被害程度 基礎支援金 加算支援金(建設・購入/補修/賃借)
全壊 100万円 200万円/100万円/50万円 最大で計300万円
大規模半壊 50万円 同上 最大で計250万円
中規模半壊 なし 100万円/50万円/25万円 最大で計100万円

中規模半壊が対象に入ったのは、2020年12月の法改正からです。

ただし、金額を見れば分かります。全壊で最大300万円。家を建て直す金額には遠く届きません。

公的支援は、生活を立て直す入口を作るための制度であって、損害を埋める制度ではないということです。損害を埋める役割は、保険が担っています。

この項目について 支援法は災害の規模や地域の要件を満たした場合に適用されます。すべての水害で自動的に支給されるわけではありません。実際の適用と金額は、住んでいる市区町村の案内で確認してください。

自分の契約を、いま確認する

読み終えたあとに、5分でできることを置いておきます。

確認するのは4か所

見る場所 確認すること
火災保険の証券 補償の一覧に「水災」があるか。「なし」「対象外」になっていないか
同じ証券の「保険の対象」 建物のみか、家財も入っているか。家財の保険金額はいくらか
自動車保険の証券 車両保険が付いているか。付いていなければ、水没しても出ない
自治体のハザードマップ 色が塗られていない場合も、内水氾濫の想定図が別にあるかを見る

ハザードマップは2種類ある

最後の項目を補足します。

多くの人が見ているのは洪水ハザードマップで、これは川があふれたときの想定です。

ですが今回の千葉のように、排水が追いつかずに水があふれる内水氾濫は、別の図で示されます。自治体によっては内水ハザードマップを公表しています。

洪水の図で白かったから安全、とは限りません。2枚あるかどうかを、自分の自治体のサイトで確認してください。

あわせて、国土交通省の関東地方整備局は道路冠水注意箇所マップを公開しています。千葉県内では95か所が指定されていて、アンダーパスや地下道の具体名と地図が載っています。

誤解されやすい3つ

この記事で調べていて、間違えやすいと感じた点をまとめます。

1つ目。火災保険に入っている=水害も出る、ではありません。水災補償は別に付けるもので、付帯率は61.8%。4割の人は付けていません。

2つ目。車は火災保険では出ません。敷地内で水没しても同じです。必要なのは車両保険で、洪水はエコノミー型でも補償されます。ただし使うと1等級下がります。

3つ目。床上浸水でなくても出ることがあり、床下浸水だと出ないことがあります。基準は「床上浸水」「地盤面から45センチ超」「損害30%以上」のいずれか。45センチは床からではなく地盤面から測ります。

保険は、入っていた人にしか届かない

この記事を書いていて、いちばん引っかかったのはここです。

水災補償を外した判断は、間違っていません。ハザードマップで低リスクとされた地域で保険料を抑えるのは、合理的です。そして保険会社も、その判断に合わせて料率を5区分に細分化しました。

制度としては、それぞれが正しく動いています。

ただ、今回の千葉では浸水した人の2人に1人が、想定区域の外でした。1時間115ミリという雨は、下水道の設計の2倍以上です。地図が想定していた前提の外側で、水が出ている。

保険は、事故が起きてから入ることはできません。入っていた人にしか届かない仕組みです。

だからこの記事は、被害に遭った方に向けた手順と、まだ何も起きていない人に向けた確認の2つを、同じ場所に書きました。

あなたの火災保険に、水災補償は付いていますか。

この記事で使った資料と、その確度

確度が低いから使わない、という意味ではありません。★2でも用途を限定すれば材料になります。何にどう使ったかを併記します。

確度 媒体 資料 評価の理由
★5 損害保険料率算出機構 火災保険 水災補償付帯率 付帯率61.8%(2024年度)の出所。市区町村別のデータも公開されているので、読者が自分の地域を調べられる。法律にもとづく算出団体の統計
★5 内閣府(防災) 被災者生活再建支援制度の概要 基礎支援金・加算支援金の区分と金額。中規模半壊が対象に入った2020年12月改正も含む
★4 損保各社の公式ページ ソニー損保 水災の補償内容三井住友海上 水災で支払われる条件日新火災 水災 支払い基準の3条件。3社で同じ形を確認したので「ほぼ共通」と書いたが、全社を網羅したわけではない。商品や特約による差は残る
★4 損保各社の公式ページ ソニー損保 水害による水没車は車両保険の対象か三井住友海上 水害・水没は車両保険で補償されるか 洪水は一般型・エコノミー型のどちらでも対象。1等級ダウンと事故有係数適用期間1年加算、冠水路への進入が重過失にあたりうる点もこれらによる
★4 損保各社の公式ページ ソニー損保 水災リスクの細分化とは三井住友海上 水災料率の細分化 2024年10月からの5区分と、1等地約6%減・5等地約9%増・較差約1.2倍。「低リスク層が外れるので細分化した」という説明もここに書かれている
★4 ウェザーニューズ 2人に1人が浸水想定区域”外”で被災か 浸水被害の報告2万件の分析。同社に寄せられた報告の集計であって、公的統計ではない点は本文にも注記した
★3 保険会社・法律事務所の解説 東京海上日動 保険金の請求方法 請求の流れと必要書類、時効3年。保険法第95条の条文そのものには当たっていない
★4 国土交通省 関東地方整備局 道路冠水注意箇所マップ 千葉県内95か所と、「この箇所以外でも冠水する恐れがあります」という注記

この記事で埋まらなかったもの

  • 千葉県および県内市町村の水災補償付帯率。機構が市区町村別に公開しているので、次に取りに行く
  • 今回の千葉の豪雨で損保各社が支払う保険金の見込み総額
  • 車両保険の付帯率
  • 家財のみ・建物のみで契約している人の割合

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編集者K

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