ホーム ニュース ローソンの297円ラーメ…
ニュース経済

ローソンの297円ラーメンに、具は入っていない 52年前、イオンはカップ麺のフォークを省いていた

ローソンが6月末に売り出した冷凍ラーメンは、税込297円です。具は入っていません。

同じ考え方で作ったカップ麺は、すでに累計500万食を超えました。

これは「知らないうちに具が減っていた」という話ではありません。「具なし」と名乗って安く売り、それが選ばれているという話です。

イオンの具なし焼きそばは、麺が通常の3倍超入って約320円。2025年4月の発売時は首都圏の一部だけでしたが、計画の10倍売れたため全国に広がりました。

そしてもう一つ。同じことを、イオンは52年前にもやっています。

いま、何が売れているのか

時事通信が2026年8月14日に報じた内容を軸に、各社の公表資料で確認したものを並べます。

いま売られている引き算商品各社が何を省いて、いくらで売っているか何を省いて、いくらで売っているかローソン平均価格より2割以上安い省いたもの:具材(冷凍麺2種)297円ローソン累計500万食超省いたもの:具材(カップ麺)約250円以下イオン麺は通常の3倍超・計画の10倍省いたもの:具材(焼きそば)約320円イオン麺は通常の2倍省いたもの:つゆカップ・薬味・わさび429円セブン手巻より約40円安い省いたもの:のり(銀しゃりむすび)159円価格はいずれも税込。各社の公表資料および報道による

ローソン 297円の冷凍麺

ローソンは2026年6月30日、具材を入れない冷凍麺2品を全国約14,000店で発売しました。

「スープ激うま!特濃豚骨 ラーメン」と「たれ激うま!油そば 旨辛オイル付き」。いずれも税込297円です。

ローソンの説明では、この価格は同社のオリジナル冷凍麺類の平均価格より2割以上安いとされています。

元になったのは、2024年10月に出したカップ麺の「スープ激うま!」シリーズです。こちらは累計500万食以上を売りました。価格はローソンのカップ麺の平均である約250円以下に抑えています。

公表資料には、開発のきっかけがこう書かれています。「高品質なカップラーメンをお手頃価格で食べたい」という客の声です。

イオン 麺3倍超で約320円

冒頭の焼きそばです。時事通信の取材にイオン広報はこう答えています。

「物価高の中で価格メリットが支持されたのではないか」

イオンはこの7月にも、同じ考え方の商品を出しました。「トップバリュ 大盛ざるそば 麺&つゆ」(2026年7月22日発売、本体398円)。麺は360グラムで通常の2倍、つゆカップ・薬味・わさび・ほぐし水を省いています。

省いた理由も公表されています。客に聞いたところ、「つゆはカップを使わず麺に直接かける」「薬味は自宅にあるものを使う」「ほぐし水は使わない」という声が集まったからだそうです。

同社は7月中に約20品目で仕様を見直しました。焼きそばの容器を本体とフタの一体型にし、冷し中華の中皿トレーをなくす、といった内容です。

セブン‐イレブン のりを外した

麺だけではありません。セブン‐イレブンは2026年6月23日、のりを巻かないおにぎり「銀しゃりむすび」を発売しました。

「銀しゃりむすび ツナマヨネーズ」は159円で、のりのある「手巻おにぎり ツナマヨネーズ」の196円より約40円安い。パッケージの色も白・黒・シルバーの3色に絞っています。

広報担当者のコメントはこうです。「商品設計全体を見直し、品質と価格のバランスを取った商品に仕上げた」「資材コストや原油・ナフサ価格の動向などは影響していない」

これは、ステルス値上げではない

ここが今回の記事でいちばん書きたいところです。

内容量をこっそり減らして価格を据え置くのがステルス値上げです。批判されるのは、減らしたことを言わないからです。

今回は逆になっています。「具なし」と名乗り、何を省いたかを公表し、その分を価格に反映している。

それどころか、企業は具がないことを売りにし始めました。

ローソンの「麺大盛り」シリーズは、パッケージに「アレンジ推奨!」と印刷されています。具がないぶん、自分で足してくださいという意味です。

なぜ具をなくしたのか

ローソンの商品本部で飲料・加工食品部のマーチャンダイザーを務める多和孝徳さんは、ITmediaの取材にこう話しています。

「お客さまには分かりやすいコンセプトが刺さる」
「今後も気温上昇が続く中で、汁なしの商品は伸長していくと考えている」

同じ記事の中で、開発の考え方がこう説明されています。具材を省いて、その分のコストをスープの品質向上に充てた。麺大盛りシリーズでも具材をなくすことで、麺の量やソースの品質につなげている、と。

もう一人、商品本部で米飯・デリカ部のマーチャンダイザーを務める越智奏子さんは、時事通信にこう答えています。

「価格を抑えつつ、新しい切り口で多様化するニーズに応えたい」

整理すると、企業側の説明はこうなります。具材を削ったのではなく、削った分を麺とスープに移した。

削った先が違う

流通アナリストの渡辺広明さんは、この現象をこう分けています。

「これらの商品は、両方とも入口は”節約”ですが、その先の考え方は真逆です」

ラーメンはおいしさを追求した結果として具をなくし、おにぎりは安さを追求した結果としてのりを取った、という見立てです。

渡辺さんによれば、コンビニのおにぎりは「のりなし」が急増し、全体の2〜3割程度を占めるまでになっているといいます。

省いた分は、どこへ行ったのか

「安くするために減らした」だけなら、話は単純です。ですが数字を見ると、そうとも言い切れません。

ローソンの「麺大盛り」シリーズに、分かりやすい例があります。

種類 麺の量 価格 備考
汁あり 90g 198円 具材は入っていない
汁なし 130g 198円 汁をなくした分、麺が40g増えている

同じ198円で、汁をなくすと麺が40グラム増えます。値段は下がっていません。省いた分が、そのまま量に移っている。

汁なしシリーズの累計は約600万個。汁ありも含めた「麺大盛り」全体で、ローソンのカップ麺のうち約2割が汁なしになっています。

イオンのざるそばも同じ形です。つゆカップと薬味とわさびを外して、麺は通常の2倍。価格は本体398円で、安くなったというより中身が入れ替わっています。

これを「値下げ」と呼ぶのは、正確ではないかもしれません。同じ金額で何を受け取るかが、組み替えられている。

冷凍麺が伸びている理由は、もう1つある

ローソンのオリジナル冷凍麺類の2025年度売上高は、前年度比2割以上伸びました。同社はその理由に「米価格高騰による代替需要」を挙げています。

米が高くなったので、麺に来た。ここも「具なしを選んだ」というより、主食の中で移動が起きているという話です。

物価高の記事は「安いものを選ぶようになった」で終わりがちですが、実際に起きているのは置き換えの連鎖のほうに見えます。米から麺へ、具材から量へ。

1974年、イオンはフォークを省いた

この現象を「いまどきの節約」として書くと、大事なところを落とします。

イオンが2026年7月8日に出した公表資料に、自社の歴史が書かれています。

1974年と2026年の引き算オイルショック後のフォーク廃止と、いまの具材廃止イオンは52年前にも、同じことをしている1974年第1次オイルショックの翌年省いたもの プラスチックのフォーク85円商品名「ジェーカップ」2026年値上げ1万8347品目の年省いたもの 具材・つゆカップ・薬味約320円麺は通常の3倍超イオンは2026年7月の公表資料で、今回の取り組みを1974年からの延長として自ら位置づけている

資料の記述はこうです。

1974年、メーカーによるカップ麺の値上げが行われる中、お客さま視点で商品の仕様を見直しました。当時のカップ麺にはフォークの付属が当たり前でしたが、お客さまの声を伺ったところ、ご家庭では付属のフォークがほとんど使用されていませんでした。イオンはそれまで当たり前に付属していたプラスチックフォークを省くことでコストを抑え、85円という低価格を実現した「ジェーカップ」を発売しました。

1974年は、第1次オイルショックの翌年です。狂乱物価と呼ばれた時期で、物の値段が一斉に上がりました。

そのときイオンがやったのは、値上げでも内容量の削減でもなく、「使われていない付属品を外す」ことでした。

そして同じ資料に、こう書かれています。「こうしたお客さま視点で仕様を見直す考え方は、1974年にカップ麺の付属フォークを省き、低価格を実現した商品づくりから続いています」

52年後のいま、外しているのは具材とつゆカップと薬味です。

1974年と2026年で、決定的に違う点

ただし、同じではありません。

フォークは食べ物ではありません。家にあるものです。外しても、食べる中身は変わらない。

具材は違います。キャベツと豚肉を外せば、食べるものが減ります。家にあるかどうかは、その人次第です。

ここが、この記事で意見が割れるところだと思います。

背景にある1万8347品目

数字を正確に置きます。よく「7月末までに1万8000品目が値上げされた」と読まれていますが、意味が違います。

帝国データバンクが2026年7月31日に公表した調査によれば、2026年1月から11月に値上げされる飲食料品は、7月末時点の判明分で1万8347品目です。すでに上がった数ではなく、年内の見込みを含む数です。

項目 内容
2026年の累計 1万8347品目(1〜11月・7月末時点の判明分)
8月 2,311品目。前年同月1,262品目から8割増
9月・10月 4,531品目/2,720品目
分野別トップ 加工食品6,667品目(冷凍食品やパック米飯を含む) 前年比約4割増
値上げ要因 原材料高90.9%/物流費65.8%/包装・資材64.0%/中東情勢27.8%
前年実績 2025年通年で2万609品目。5年連続で年1万品目超

要因の1位が原材料高で、包装・資材も64.0%が挙げています。つゆカップやトレーを外すのは、この項目に直接効きます。

麺より、具のほうが上がっている

具なしが成立する理由は、値上がりの偏りにあります。

麺の原料である輸入小麦の政府売渡価格は、2026年4月期に1トン62,520円へ改定されました。前期の61,010円から2.5%の引き上げで、これは6期ぶりの値上げです。つまり小麦は、直近まで据え置きか引き下げが続いていました。

一方、具材になる野菜のほうは動きが激しくなっています。

この数字について 野菜の価格については、たまねぎが平年比159%、にんじんが116%、トマトが114%といった水準が業界向けの情報として出ています。ただし出所は青果卸の解説記事で、政府統計ではありません。時点も明示されていないため、本稿では「小麦より野菜のほうが振れ幅が大きい」という傾向を示すためだけに使い、具体的な比率は断定しません。

それでも、方向ははっきりしています。麺は比較的安定していて、具材のほうが上がりやすい。だから具材を外すと、価格を2割下げても成り立つ。

企業の原価構成そのもの(具材が商品原価の何%か)は、公表資料に当たりましたが確認できませんでした。ここは埋められていません。

外食の「引き算」は、物価高より前から始まっていた

関西テレビが2026年7月10日、「引き算グルメ」として2つの店を取り上げました。ここに、記事の見立てを揺さぶる事実があります。

らーめん笑顔(神戸市灘区)

具なしラーメンが1杯400円。醤油ラーメンは650円で、焼き飯が400円です。

報道によれば、ラーメン好きの玄人には具なしを好む人もいて、1日で10杯ほど出るといいます。この店には、塾に通う小・中・高生向けの「学生応援チケット」(2,000円で400円のラーメン6杯分)もあります。

一富久(大阪市西成区)

創業約70年。タコなしたこ焼きが14個で650円。入っているのはネギと紅生姜だけです。

ここが重要です。この商品が始まったのは20年以上前で、物価高とは関係がありません。

報道されている理由はこうです。タコを食べられない子どもや、タコアレルギーの人のために作ったのがきっかけだった、と。1日の注文は4〜5人分だそうです。

つまり「引き算グルメ」と一括りにされている中には、節約とはまったく別の動機で20年以上続いてきたものが混ざっています。

この項目について 関西テレビの記事には店主の発言が一切掲載されていません。上記はいずれも記事の地の文からの引用で、店主の言葉として書かれたものではありません。番組の映像には肉声がある可能性がありますが、当方は確認していません。

具なしを、どう食べるか

ここは読者が自分で使う部分です。ただし、この記事でいちばん弱い章でもあります。

当初は「具なし+自分で足す」と「具材入り」のどちらが安いかを価格表にする予定でしたが、比較に耐える価格データを揃えられませんでした。もやしや卵の店頭価格は地域と店で開きが大きく、出典のある数字で並べると実感と合わない表になります。

代わりに、確認できたことだけ書きます。

企業のほうが「足してくれ」と言っている

ローソンのカップ麺は、味や自分好みにアレンジできる点が好評で累計500万食を超えた、と時事通信は報じています。

ITmediaによれば、SNSでは卵やマヨネーズを加えるアレンジが話題になり、冷凍版でも同じ需要を見込んでいるとのことです。背景には、市販の油そばのアレンジレシピがSNSで広がり、まぜそば系の即席麺を自分好みにアレンジする習慣が定着しつつあることがあるといいます。

だからパッケージに「アレンジ推奨!」と書いてある。企業は、消費者が具を足すことを前提に設計しています。

誰が買っているか

ローソンの汁なしカップ麺について、購入者の内訳が出ています。8〜9割が男性で、30〜40代が中心。夕方から夜にかけての購入が多い。冷凍麺2品のターゲットも30〜50代の男性です。

ローソンのカップ麺のうち、現在は約2割が汁なし商品だといいます。

この層が、具を自分で足しているのか、麺だけで食べているのか。そこを示すデータは見つかりませんでした。ここが分かると、「安くなった」なのか「削った」なのかの答えが出ます。

選択肢が増えたのか、選べなくなったのか

ここまでの事実を並べると、両方の読み方ができます。

選択肢が増えた、と読む材料 選べなくなった、と読む材料
具を隠さず、省いた分を価格に反映している 背景に1万8347品目の値上げがある
省いた分を麺の量とスープの質に回している 加工食品だけで6,667品目。逃げ場が狭い
自分で好きな具を足せる。アレンジは企業も推奨 足す具を買える人と、買えない人がいる
具材入りの商品も、並んで売られている 計画の10倍が売れる速さは、余裕の表れではない

私見を1つだけ書きます。企業の側は、責められる要素が見当たりません。省いたものを公表し、その分だけ安くし、理由も説明している。ステルス値上げとは正反対の作法です。

気になるのは、その先です。

1974年に外したのはフォークでした。使っていないものだったので、外して誰も困らなかった。

今回外したのは、食べ物です。キャベツと豚肉を自分で足せる人にとっては、これは値下げになります。足せない人にとっては、そのまま減った食事になります。

同じ商品が、人によって別の意味を持ちます。

次に「なし」になるのは何か

この1年で消えたものを並べると、順番が見えてきます。

まず付属品が消えました。つゆカップ、薬味、わさび、ほぐし水、トレー。次に包装が減りました。セブンのおにぎりは印刷の色数まで絞っています。そして具材が消えた。

ローソンは冷凍麺の売上を伸ばしており、オリジナル冷凍麺類の2025年度売上高は前年度比2割以上伸びています。米の価格高騰による代替需要も追い風になった、と同社は説明しています。

この流れが続くなら、次に外れるのは何か。スープでしょうか。それとも麺の一部でしょうか。

1974年のイオンは、外したあとに「フォークがなくても困らない」と客に確認してから商品にしました。今回も同じ手順を踏んでいます。つゆカップも薬味も、客に聞いて「使っていない」と分かってから外している。

問題は、聞かれる範囲がどこまで広がるかです。

あなたは、具なしを買いますか。それとも、具材が入っているほうを選びますか。

この記事で使った資料と、その確度

確度が低いから使わない、という意味ではありません。★2でも用途を限定すれば材料になります。何にどう使ったかを併記します。

確度 媒体 資料 評価の理由
★5 ローソン 具なし冷凍麺2品の発売(2026年6月29日) 商品名・297円・6月30日発売・約14,000店・累計500万食・「平均価格より2割以上安い」はこの原本による。時事の「具材入りの自社麺より」ではなく、公式表現の「平均価格より」を採った
★5 イオンリテール 仕様見直しに関する公表資料(2026年7月8日・PDF) 1974年のジェーカップ(フォークを省いて85円)と、今回をその延長と位置づける記述はこの原本。大盛ざるそばの規格・価格・省いた4点・客の声も同じ資料による
★5 帝国データバンク 「食品主要195社」価格改定動向調査(2026年8月) 1万8347品目・月別・分野別・要因の割合。「7月末までに値上げされた数」ではなく「1〜11月の判明分」であることを、この原典で確認した
★4 時事通信 「具なし」麺、投入加速 物価高で人気―大手小売り(2026年8月14日) 越智奏子さんとイオン広報のコメント、カップ麺のアレンジ人気。イオンの具なし焼きそばの数字(昨年4月・約320円・麺3倍超・計画の10倍)は、この記事のイオン広報取材が唯一の出所で、一次資料に到達できていない
★4 ITmedia ローソン、なぜ「具も汁もない」カップ麺が売れるのかセブン 銀しゃりむすび 多和孝徳さんの発言、「アレンジ推奨!」の印刷、購入者の男女比・年代、汁なしが全体の約2割。自社取材で担当者に直接当たっている
★3 関西テレビ 物価高の救世主「○○なしグルメ」(2026年7月10日放送) 2店の価格・杯数・タコなしの由来。店主の発言は掲載されておらず、すべて記事の地の文。番組映像は未確認
★3 FNNプライムオンライン 流通アナリスト渡辺広明さんの分析(2026年7月25日) 「入口は節約だが、その先は真逆」の見立てと、のりなしおにぎりが全体の2〜3割。アナリストの見解であって統計ではない
★3 食品新聞ほか 農水省 4月期輸入麦価、6期ぶり引き上げ 小麦の政府売渡価格62,520円・2.5%引き上げ・6期ぶり。農林水産省の発表そのものには当たっていない
★2 青果卸の解説記事 野菜価格の平年比(たまねぎ159%ほか) 政府統計ではなく時点も不明。本文では傾向を示すためだけに使い、比率は断定していない。本来は農水省の食品価格動向調査で置き換えるべき箇所

この記事で埋まらなかったもの

  • 具材が商品原価に占める割合。公表資料に当たったが確認できず
  • 「具なし+自分で足す」と「具材入り」の価格比較。出典のある店頭価格を揃えられず
  • 買った人が実際に具を足しているかどうかのデータ
  • イオンの具なし焼きそばの一次資料(商品名・発売日・価格)

編集者K

速報より本質。話題のニュースの裏側を裏取りして届ける、一日の最後に読むニュースサイトです。