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兵庫県で見る地方財政のしくみ──2兆3,822億円を全部ばらすと、税収が過去最高でも悪化する理由が見えてくる

兵庫県が8月、14年ぶりに「起債許可団体」になる。県債を出すのに国の許可が要る状態だ。

ニュースでは「財政破綻寸前」という言葉が飛び交っている。だが、県が公表している決算資料を開くと、まったく別の景色が出てくる。

令和6年度、兵庫県の税収は過去最高だった。9,735億円。前年から522億円増えている。

それなのに、財政指標は悪化した。実質公債費比率は17.5%から17.9%へ。経常収支比率は97.3%から99.4%へ。

稼いだのに、悪くなった。

この記事は、兵庫県を教材にした地方財政のしくみの解説である。2兆3,822億円を全部ばらして、金がどこから来て、どこへ出ていき、なぜ削れないのかを順に見ていく。

結論を先に言うと、これは兵庫だけの話ではない。交付税のしくみも、社会保障の負担割合も、地方債の制度も、全国どこでも同じである。違うのは、どこまで進んでいるかだけだ。読み終わったら、自分の住む町の決算書が読めるようになっているはずだ。

材料は、県が公表している決算資料と県公報、それに財政運営検討会の議事要旨。すべて誰でも無料で見られるものである。

最初に、3つの数字

難しい指標に入る前に、これだけ押さえておきたい。

項目 金額
借金(県債残高) 3兆8,392億円/交付税で措置される分を除いた実質は3兆946億円
1年の返済額(公債費) 2,696億円(歳出の11.4%)
1年の収入(歳入総額) 2兆3,822億円/うち自分で稼いだ税収は9,735億円

人口531万人で割ると、県民ひとりあたりの借金は58万円である。

1万分の1にしてみる

家計に置き換えると、こうなる。

  • 年収 238万円(うち自分で稼いだのは 97万円、残りは仕送りと補助金)
  • 借金 384万円
  • 年間返済 27万円

自分で稼いだ97万円に対して、返済が27万円。返済比率27.7%。住宅ローンの審査では25〜35%が上限とされるので、ぎりぎり通るかどうかのラインだ。借金は自前収入の3.9年分。

数字だけ見れば、破滅的ではない。本当の問題は、別のところにある。

収入をばらす──国、自前、借金

まず入ってくる金を分解する。款ごとの内訳が公表されているのは令和7年度予算なので、そちらを使う(総額2兆4,746億円)。

兵庫県の収入 2兆4,746億円は、どこから来るのか自前 37.1%国から 28.9%借金その他 26.6%自前 9,175億円県税 8,870億円使用料・手数料 195億円分担金・寄附金・財産収入国から 7,148億円地方交付税 3,548億円国庫支出金 2,402億円地方譲与税 1,158億円ほか借金 1,838億円県債その他 6,583億円諸収入 5,489億円繰入金 1,034億円繰越金 59億円

「その他」の6,583億円が、いちばん怪しい

この4分類のうち、県税に次いで大きいのが「諸収入5,489億円」である。県税8,870億円の次に来る。

正体は、貸したお金が返ってくる分だ。

証拠がある。歳出の側に「貸付金4,975億円」(中小企業制度資金など)が立っている。貸して、返ってくる。歳入にも歳出にも同じ額が立つので、見かけの規模だけが膨らむ。

もうひとつの証拠。この諸収入5,489億円のうち、9月末時点の収入済額は50.7億円(0.9%)しかない。年度末に一気に回収されるからだ。

実像で割り直す

「その他」は新しく入ってくる金ではない。貸付金の回収と、自分の貯金の取り崩しと、前年度の余りである。これを除いた実質的な歳入1兆8,161億円で割り直すと、こうなる。

区分 金額 割合
自前 9,175億円 50.5%
国から 7,148億円 39.4%
借金 1,838億円 10.1%

自前が半分、国からが4割、借金が1割。これが兵庫県の実像である。

県税8,870億円のうち、地方消費税2,827億円は国が集めて配分しているものです。名目は自前でも、税率を県が決められるわけではありません。これを国側に寄せると、自前35%/国から55%になります。

支出をばらす──やめられない金

次に、出ていく金を見る。令和6年度決算、2兆3,684億円である。

兵庫県の支出 2兆3,684億円と、削れる場所その他経費 34.6%人件費 20.3%社会保障 15.6%公債費投資投資的経費 2,364億円(10.0%)道路・河川・学校。削れるのはここだけ人件費・社会保障・公債費で 1兆1,207億円(47.3%)法律と契約で決まっていて、議会が「やめる」と決められない

やめられない支出とは何か

この3つは、議会が反対しても止まらない。

  • 人件費 4,807億円——職員の給料。減らすには定数条例を変えるか、給与カットしかない
  • 社会保障関係費 3,704億円——生活保護や医療・介護など、法律で「払え」と決まっているもの
  • 公債費 2,696億円——借金返済。止めれば債務不履行になる

3つ合わせて1兆1,207億円。歳出の47.3%である。

さらに「その他経費8,191億円」の大半は、貸付金4,975億円と、他会計への繰出金など、右から左に動くだけの金だ。

結果として、議会が「これをやる」「これはやめる」と決められるのは、投資的経費2,364億円のあたりに限られる。

経常収支比率99.4%が意味すること

この構造を1つの数字で表したのが、経常収支比率である。兵庫県は99.4%。

意味はこうだ。

毎年確実に入ってくる金の99.4%が、毎年確実に出ていく金(人件費・社会保障・借金返済など)で消える。残りは0.6%しかない。

家計でいえば、月収の99.4%が家賃・食費・ローンで消えて、自由に使えるのが0.6%。

ここで重要なのは、この比率には道路や学校を作る金(投資的経費)が入っていないことだ。

では、その2,364億円はどこから出ているのか。国庫補助金と、県債(借金)である。

つまりこういうことになる。

固定費が収入を食い尽くしているので、新しいものを作るには借りるしかない。作れば返済が固定費に上乗せされる。翌年、自由に使える分がさらに減る。

90%を超えると危険信号、と言われる指標である。兵庫県は99.4%。県の目標は「100%未満を維持」——下げることではなく、100%を超えないことが目標になっている。

社会保障は、国が決めて県が9割払う

やめられない支出の中で、いちばん厄介なのが社会保障関係費だ。3,704億円、歳出の15.6%で、人件費に次ぐ2番目の規模である。

役割の分かれ方

誰が 何をするか
制度を作る。給付水準も対象者も、法律で決める
国・県・市町村 費用を分担する。割合は法律で固定
市町村 窓口をやる。申請受付、保険証、支給

負担割合は、たとえば後期高齢者医療の公費部分なら国4/12・県1/12・市町村1/12。障害者自立支援給付なら国1/2・県1/4・市町村1/4。自治体が交渉して変えられるものではない。

兵庫の場合、9割以上が県の自腹

ここが重い。社会保障関係費3,704億円のうち、一般財源が3,449億円(93%)である。

国庫支出金などで賄われるのは7%だけ。国が決めた制度を、9割以上は県が自分の財布から払っている。

増え方が、投資の削減を上回る

増加は前年比+95億円(+2.6%)。県の説明はこうだ。

「後期高齢者の増加に伴う後期高齢者医療給付費負担金の増等による増」

──令和6年度決算資料(兵庫県財務部財政課)

ここで計算をひとつ。

県が削ろうとしている投資的経費は2,364億円。その10%を削っても236億円である。

社会保障関係費は、年95億円のペースで増える。2.4年で、その236億円を食い尽くす。

投資を1割削っても、社会保障の自然増で2〜3年で消える。これが「削るだけでは追いつかない」の正体だ。

税収が過去最高でも、財政が悪化した理由

ここまで来ると、冒頭の謎に答えられる。

稼いだのは企業だった

令和6年度、税収は過去最高の9,735億円。前年から522億円増えた。その内訳を見ると、意外なことがわかる。

税目 増加額
法人関係税 +144億円
特別法人事業譲与税 +148億円
地方消費税 +158億円
個人県民税 +72億円

法人由来が292億円。増加分の56%である。個人県民税は72億円で14%しかない。

兵庫県の人口は減り続けている。それでも税収は過去最高だった。作ったのは人口ではなく、円安とインバウンドによる企業業績である。

ところが、稼ぐと交付税が減る

ここが、地方財政のいちばん理不尽なところだ。

地方交付税は「必要な額(基準財政需要額)− 自分で稼げる額(基準財政収入額)」で計算される。稼ぐほど、もらえる額が減る。しかも算入率は75%。税収が100増えると、交付税が75減る。

令和6年度の兵庫が、まさにこれだった。

項目 増減
基準財政収入額(稼いだ額) +237億円
基準財政需要額(必要な額) +224億円
普通交付税+臨時財政対策債 −13億円

税収が237億円増えたのに、交付税が減って、差し引きはマイナス13億円。

その一方で、人件費は340億円増え、社会保障関係費は95億円増え、公債費は71億円増えた。金利も上がった。

稼いだ分は交付税の減額で消え、出ていく分だけが増えた。これが「税収過去最高でも悪化した」の中身である。

「借りたほうが得」になっている仕組み

もうひとつ、地方の借金が減らない理由がある。

補助金をもらうには、自分の分がいる

国庫補助事業は、国が全額出すわけではない。道路なら国が2分の1、県が2分の1というように分け合う。この県が出す分を「裏負担」と呼び、その財源として地方債を発行するのが標準的なやり方だ。

100億円の道路をやるなら、国から50億円もらうために、県は50億円を用意する。その多くを借金でまかなう。

「補助金がついた」→「やらないと損」→「借金が増える」。補助金を取ってくるのが上手な自治体ほど、借金も増えるという現象が、ここから生まれる。

そして「借りると交付税が増える」地方債がある

一部の地方債は、返済額の一定割合を、あとで地方交付税に上乗せしてもらえる。

地方債の種類 交付税に算入される割合
臨時財政対策債 100%
緊急防災・減災事業債 70%
過疎対策事業債 70%
合併特例債 70%

つまり「借りたほうが得」になる。70%措置なら、100億円借りても実質負担は30億円という説明になる。

兵庫県の公報にも、こう明記されている。

「地方債の発行に当たっては、交付税措置のある有利な起債の活用を図るなど、将来に過大な負担を残すことのないよう、適切な公債管理を行っている」

──財政状況の公表(兵庫県公報)

実際、令和6年度の県債1,356億円の内訳には、緊急防災・減災事業債183億円、緊急自然災害防止対策事業債54億円、緊急浚渫推進事業債23億円と、交付税措置の手厚い「緊急◯◯債」が並んでいる。

ただし、罠が3つある

①措置されても、金融機関には満額返す。交付税で7割戻るとしても、毎年の返済は満額出ていく。手元の資金繰りは苦しくなる。

②指標上は軽く見えるが、実態は重い。実質公債費比率の計算では交付税措置分が控除される。兵庫県も県債残高3兆8,392億円のうち7,446億円を「交付税で措置される分」として別扱いにしている。

③交付税の総額を決めるのは国。措置の仕組みは制度上ある。ただし総額そのものが抑えられれば、実感としては薄まる。「後で面倒を見てもらえる」という前提が、何十年も先まで保証されているわけではない。

ここまでを合わせると、こうなる。

完済を目指すインセンティブが、制度の側に存在しない。むしろ有利な起債を使わなければ「なぜ活用しなかったのか」と問われる。だから地方の借金は減らないし、減らすことが目的にもなっていない。

「無駄遣いをなくせば解決する」では、届かない

ここまで読むと、当然こう思う。無駄遣いを減らせばいいのではないか、と。

気持ちはわかる。だが規模が合わない。

削れる可能性があるのは投資的経費2,364億円だけで、その10%を削っても236億円。実質公債費比率を1ポイント動かすかどうかである。そして社会保障関係費は年95億円のペースで増えるので、2.4年で消える。

7月13日の検討会でも、委員たちはそこを繰り返し指摘している。

「重要なのは『何%削減したか』ではなく、『実際に収支がどれだけ改善したか』である。公共投資を単純に削減するのではなく、財政改善につながる実質的な効果を重視すべきである」

──第2回持続可能な財政運営検討会 議事要旨(委員名は県が非公表)

投資を削ると、別のものが壊れる

別の委員は、インフラ投資の性質そのものを問い直している。

インフラ投資は将来への負担ではなく、将来の損失やリスクを防ぐための先行投資である。知事の『将来に負の遺産を残さない』という考え方とも一致すると考えている。そのため、インフラ投資を安易に縮小すべきではない」

──同

そして、こうも述べている。洪水・高潮・豪雨などへの防災機能は現在もぎりぎりの状態で維持されており、整備を怠れば突然大きな機能不全が発生する危険がある——と。

削る対象が「道路・河川・学校」であることを思い出すと、この指摘の重さがわかる。兵庫は、その防災インフラの不足で1995年に何が起きたかを知っている県でもある。

人が減っていることを、委員が心配している

もうひとつ、議事要旨に残っている懸念がある。

「単純な給与削減だけで課題を解決しようとするべきではない」「県職員の流出が進んでいるという話も聞いており、強い懸念を持っている。県政を支える人材がさらに流出することは避けるべきである」

──同

人件費4,807億円は歳出の2割を占める。だから削減の対象として真っ先に名前が挙がる。だが削れば人が辞める。辞めれば、補助金を取ってくる力も、事業を設計する力も落ちる。

委員のひとりは、自分の理解が間違っていたと認めた

この日の議論でいちばん印象的なのは、次の発言かもしれない。

「当初は『公債費負担適正化計画を国へ提出するため、投資を削減し、とくにインフラ投資を抑えることが主眼である』と理解していた。しかし本日の議論を聞き、その理解は誤りだったと認識した。本質は単なる公債費抑制ではなく、『歳入・歳出のあり方を抜本的に見直す構造改革』にあると理解した」

──同

専門家として呼ばれた人が、会議の途中で理解を修正している。それだけ、この構造は外から見えにくい。

斎藤知事の目標は21%。18%ではない

では、斎藤知事はどこを目指しているのか。県の決算資料に、はっきり書いてある。

指標 令和10年度までの目標 令和6年度
実質公債費比率 21%程度 17.9%
将来負担比率 305%程度 311.3%
経常収支比率 100%未満を維持 99.4%

注目すべきは1行目だ。資料には目標の根拠がこう書かれている。

「地方債協議制度同意基準(18%)と早期健全化基準(25%)の中間値(21.5%)未満

──令和6年度決算資料(兵庫県)

18%を下回って起債許可団体を脱却することは、目標に入っていない。目標は「25%に行かない」「21%あたりで止める」である。

公債費負担適正化計画の第1段階も同じだ。県の財務部長の説明。

「第1段階目の公債費負担適正化計画では、『実質公債費比率を25%以下に抑えること』を目標としている」

──第2回持続可能な財政運営検討会 議事要旨

当面の目標は、早期健全化団体を回避することだけである。日経が報じた検討会の試算では、投資を2割減らしても、起債許可団体を脱却できるのは2050年代とされている。

それでも「破綻寸前」ではない

報道のトーンと、県の資料の落差がいちばん大きいのがここだ。段階を整理する。

段階 実質公債費比率 兵庫の状況
起債許可団体 18%以上 今月ここに入る(3か年平均19.3%)
早期健全化団体 25%以上 2030年ごろに該当する見通し(最悪で24.8%)
財政再生団体(=破綻) 35%以上 まったく届いていない

夕張が落ちたのは財政再生団体(35%)である。兵庫の見通しは最悪でも24.8%で、破綻ラインの7割にも届かない。実質赤字比率も「−」(赤字なし)——これは全47都道府県が同じだ。

7月13日の検討会で、県が呼んだ委員のひとりがこう釘を刺している。

「起債許可団体になったとしても、県政が完全に止まるわけではない。『県の財政が完全に立ち行かなくなる』といった誤解を招かないよう、正確な情報発信が必要である。県民や県職員に過度な不安を与えないよう配慮すべきである」

──第2回持続可能な財政運営検討会 議事要旨(委員名は県が非公表)

ただし、兵庫が全国で突出しているのは事実である。将来負担比率330.8%は全国1位で、2位の北海道(311%)を20ポイント引き離している。全国平均は160.3%だから、その2倍以上だ。

よくある説明は「阪神・淡路大震災の借金が30年経った今も重くのしかかっている」というものだ。だが県の資料を見ると、それは成り立たない。

震災関連県債の残高は、平成8年のピークで1兆2,131億円。令和6年度は1,478億円である。すでに88%返し終わっている。県債残高3兆8,392億円のうち、震災分は3.8%にすぎない。

いま兵庫の将来負担を全国1位にしているのは、震災ではなく、震災後の30年で積み上げた別の借金である。

そして県は、指標を動かす手法にたどり着いた

ここまでの構造を並べると、県が何をやろうとしているかが見えてくる。

公債費負担適正化計画の素案に並ぶ3つの施策は、投資規模の10%抑制、県債管理基金の運用益確保、そして特定目的基金から県債管理基金への「積み替え」である。

なぜ積み替えると数値が良くなるのか。県の財務部長の説明はこうだ。実質公債費比率は、県債管理基金の積立が不足しているとペナルティが加算される仕組みで、兵庫県はいま積立不足率が約50%ある。だから他の基金から移せば、不足率が縮まり、ペナルティが減り、比率が改善する。

これに対して、委員のひとりがこう指摘した。

「特定目的基金から県債管理基金へ資金を積み替えても、バランスシート全体で見ると資産の移し替えに過ぎず、純債務は改善しない。そのため、実質公債費比率は改善しても、財政の実態が大きく改善したことにはならない」

──第2回持続可能な財政運営検討会 議事要旨(委員名は県が非公表)

この委員はさらに、積み替え元の基金には積立不足が生じるはずだが、それは実質公債費比率に反映されないから、こういうテクニカルなことができるという理解で合っているかと確認している。

県の答えは、「その通り」だった。

ここで思い出してほしいのが、井戸県政が2020年度にやったことだ。土地の売却収入338億円を返済に充てず基金に留保し、実質公債費比率の見た目を保った。地方財政法に抵触するおそれがあると総務省に指摘されている。その経緯は7月の記事に書いた

片方は違法の疑いがあり、もう片方は合法。片方は隠されていて、もう片方は公開の会議で説明されている。この差は小さくない。

それでも、純債務が動かず指標だけが改善するという点では、形が同じである。

そして、そうせざるを得ない理由も、ここまで見てきたとおりだ。削れる場所が、投資的経費の1割しかないからである。

自分の町で、同じことを確かめる方法

ここまでの見方は、全部そのまま自分の市や町に使える。資料はすべて無料で公開されている。

手に入れるべき3点

  • 決算カード——1自治体1枚。全指標が載っている
  • 財政状況資料集——類似団体との比較つき。自分の町の数字が同規模の町と比べてどうかが一目でわかる。ここが一番使える
  • 公共施設等総合管理計画——今後40年の施設更新費用。多くの町でここが最大の爆弾

見る順番

見る指標 読み方
1 経常収支比率 90%を超えると新しいことがほぼできない。その町に何ができるかが一発でわかる
2 財政力指数 0.3以下なら収入の7割が国頼み。議論できる範囲が狭い
3 実質公債費比率・将来負担比率 18%/350%が信号。類似団体平均と並べる
4 扶助費の伸び 5年分並べる。年何%で増えているかで10年後が見える
5 基金の中身 残高だけでなく、積むべき額に足りているか(積立不足率)

兵庫の一件から出てきた、実務の勘所

1. 基金は残高だけ見てはいけない。兵庫が338億円でやったのは、まさに残高だけを厚く見せることだった。積立不足率まで見る。

2. 一般会計だけ見てはいけない。兵庫は分収造林事業と企業庁の地域整備事業の穴埋めに、県債管理基金を1,200億円取り崩している。危ないものは特別会計・公営企業・第三セクターに飛ぶ。

3. 予算の総額に驚かない。貸付金・繰出金・諸収入を抜くと実像が出る。「予算◯◯億円」と説明されたら、まず款別内訳の「諸収入」を見る。

4. 補助事業は3段階で聞く。裏負担はいくらか。その起債の交付税措置率は何%か。措置分を除いて、実質的に自分の町が返すのはいくらか。3つめまで答えられる自治体は多くない。

結局、何が起きているのか

兵庫県の2兆3,822億円を全部ばらすと、こういう構造が出てきた。

  • 稼いでも、交付税で4分の3を持っていかれる
  • 国が決めた社会保障を、9割以上は自腹で払う
  • その社会保障は、年95億円のペースで自動的に増える
  • 制度が「借りたほうが有利」にできている
  • 削れるのは、投資的経費の1割だけ

この5つが同時に効いているので、税収が過去最高でも財政は悪化する。

そして削る場所がないから、井戸県政は338億円を返さずに指標を保ち、斎藤県政は基金の積み替えで指標を下げようとしている。やっていることが、違う知事のもとで同じ形をしている。

これを「兵庫は特別にひどい」と読むこともできる。将来負担比率は全国1位なのだから、その読み方にも根拠はある。

ただ、ここまで見てきた構造は、兵庫だけの制度ではない。交付税の算入率も、社会保障の負担割合も、交付税措置つきの地方債も、全国どこでも同じである。違うのは、どこまで進んでいるか、それだけだ。

自分の町の決算カードを開いて、経常収支比率を見てほしい。そこに書いてある数字が90%を超えているなら、その町でも同じことが始まっている。

主要ソース

一次資料(兵庫県が公表した現物)

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編集者K

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