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寺が消えたあと、法人格だけが売られる──文化庁が「買いたい」「売りたい」の検索例まで載せている


全国の寺の4割超が、年間収入300万円未満である。文化庁の調べだ。

2040年には、全国の寺院の約3分の1が消滅の危機にあるという試算もある。

ここまでは、報じられてきた。

この記事が書くのは、その先である。

寺が無人になっても、法人格は残る。

そして宗教法人には税の優遇がある。だから、その法人格が売買されている。

これは推測ではない。文化庁が自分のウェブサイトに、こう書いている。

文化庁「宗教法人格の不正利用について」

「税制優遇等を謳(うた)った宗教法人の売買/M&Aの話には御注意ください!」

「宗教法人の売買に類似した取引を呼びかけるインターネット上の仲介サイトが多数あることが報道等において指摘されています。」

同じページには、検索されている語まで並べてある。

「宗教法人 買いたい」「宗教法人 売りたい」「宗教法人 M&A」「宗教法人 事業承継」「宗教法人 譲渡」「宗教法人 売買」

役所が、こういう書き方をするのは珍しい。

この記事は、消える側の数字と、残った器の値段を、一本の線でつなぐ。

まず、消える側の数字

全国の宗教法人は約18万ある(2024年12月時点)。文部科学大臣が所轄するものと、都道府県知事が所轄するものの合計だ。

項目 数字
全国の宗教法人 約18万法人
年間収入300万円未満の寺 4割超
消滅可能性のある寺院 全体の約3分の1(推計)

「3分の1」は誰の試算か

この数字は確認しておく必要がある。

試算したのは國學院大學の石井研士教授である。ジャーナリストで浄土宗正覚寺副住職の鵜飼秀徳氏が、著書『寺院消滅』(2015年)や中外日報(2019年9月18日)で紹介し、広く知られるようになった。

方法は、日本創成会議が2014年に公表した「消滅可能性都市」のリストに、寺院の所在地を重ねるというものだ。消滅可能性都市にある寺の割合が、約35%になった。

宗派別の数字も示されている。

宗派 消滅可能性都市にある寺の割合
高野山真言宗 46%
曹洞宗 42%
真言宗智山派 39%
天台宗 36%

この数字の扱いについて

これは推計であって、確定した予測ではない。しかも土台になっている「消滅可能性都市」は2014年のリストで、2024年に人口戦略会議が新しいリストを公表している。10年前の人口推計に基づく数字である点は、押さえておく必要がある。

また宗派別の数値は媒体によって「真言宗智山派」「真言宗豊山派」と表記が分かれており、当サイトは原典を確認できていない。

それでも、方向は動かない。檀家が減り、収入が落ち、住職がいなくなる寺が増えている。

年間収入300万円未満で寺を維持している側は、責められる立場ではない。むしろ、限界まで支えている側である。

次に、残った器の数字

宗教法人として設立されたまま、活動が止まり、法人格だけが残っているものを「不活動宗教法人」という。

文化庁の定義はこうだ。

不活動宗教法人とは(文化庁宗務課の資料)

「宗教法人として設立されながら、代表役員の不存在や礼拝施設の滅失等の理由により、実態として宗教活動を行っておらず、法人格のみ存在している状況に陥っているもの

この数の推移が、面白い。

不活動宗教法人の数文化庁の資料は平成24〜令和4年を「横ばい」と書いている。赤は通達後2,0003,0004,0005,0003,837H243,694H263,582H283,527H303,398R23,329R44,431R55,019R62023年3月に文化庁が通達。その後、把握数は3,329→5,019へ※増加は「実数が増えた」だけでなく「判断基準を明確化して把握が進んだ」結果でもある

時点 不活動宗教法人 備考
平成24年(2012) 3,837 出典は宗教年鑑
令和4年(2022) 3,329 文化庁の資料は「直近10年間、横ばい」と明記
令和5年末(2023) 4,431 前年から1,102増
令和6年12月(2024) 5,019 さらに588増

10年間ほとんど動かなかった数字が、2023年から2年で1,690増えている。

ここは正確に読む必要がある

この増加を「休眠法人が急に増えた」と読むのは、たぶん間違いである。

2023年3月31日、文化庁が都道府県に通達を出した。「宗務行政の適正な遂行について」という文書で、不活動宗教法人の判断基準を明確化し、把握と整理を急ぐよう求めている。

つまり、基準をはっきりさせて数え直したら、増えた。

裏を返せば、それまでは数えられていなかったということである。

文化庁の資料には、こう書かれている。

文化庁宗務課の資料より

「不活動状態にある疑いはあるが、上記の事由に当たる確証が得られないため、取扱いが曖昧なままにされる法人が発生。結果的に、整理に至らない場合が頻発。

役所が自分でこう書いている。

もう一つの数字がある

関西テレビの報道では、書類上で活動が確認できない法人は約1万5000件とされている。

「不活動」と判定された5,019件より、はるかに多い。

この差は、判定に手間がかかるからである。理由は後で書く。

なぜ、器に値段がつくのか

ここが記事の土台になる。優遇の中身を金額で示さないと、売買の話が立体にならない。

国税庁のパンフレット「宗教法人の税務」(令和8年版)から、事実だけを取る。

① 収益事業をしなければ、法人税はかからない

株式会社は、すべての所得に法人税がかかる。宗教法人は違う。

国税庁「宗教法人の税務」

「宗教法人等の公益法人等については、収益事業を行う場合に、その収益事業から生じた所得に対してのみ法人税が課税されます

収益事業は法人税法で34種類が定められている。物品販売業、不動産貸付業、駐車場業、旅館業、料理店業、席貸業など。

逆に言えば、この34業種に当たらない収入には法人税がかからない。お布施、賽銭、戒名料、寄付金などである。

② 収益事業をやっても、税率が低い

区分 法人税率
普通法人(株式会社など) 23.2%
宗教法人の収益事業 19%
 うち年800万円以下の部分 15%

③ 収益事業の利益を宗教活動に回すと、寄附金扱いになる

これを「みなし寄附金」という。

国税庁「宗教法人の税務」

「宗教法人が収益事業に属する金銭その他の資産のうちから収益事業以外の事業のために支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなされます

寄附金とみなされた分は、一定の範囲で損金になる。課税される所得が、その分だけ減る。

④ そして、これが「8000万円」の正体である

関西テレビは、仲介サイトに「8000万円まで申告しなくていい」といった文句があると報じた。

この数字の出どころを特定した。宗教法人法の附則である。

宗教法人法 附則第23項(要旨)

当分の間、収益事業を行っておらず、かつ年間の収入金額が8,000万円以下の宗教法人は、収支計算書を作成しないことができる。

国税庁のパンフレットにも、対応する記載がある。

国税庁「宗教法人の税務」

「収益事業を行わないため法人税確定申告書を提出する義務のない宗教法人であっても、お布施収入などを含めた年間の収入金額(中略)の合計額が8,000万円を超える場合には、その事業年度の損益計算書又は収支計算書を(中略)所轄の税務署長に提出する必要があります

ここは正確に読む必要がある。

「8000万円まで申告しなくていい」は、不正確である。

これは税の申告義務の話ではない。収支計算書という書類を作って出す義務が免除される、という話である。

ただし実務上の意味は大きい。年間8,000万円までなら、お金の出入りを記した書類が外部に出ない。

買う側にとっての価値は、ここにある。

税率が低いことより、お金の流れを外から見られないことのほうが効く。

⑤ 固定資産税もかからない

境内地・境内建物は、地方税法によって固定資産税が非課税になる。

土地と建物を持ったまま、そこに毎年の税金がかからない。資産の保有コストが下がる。

まとめると、器の値段はこうなる

優遇 買う側にとっての意味
収益事業以外は非課税 「宗教活動による収入」の形にできれば、課税されない
税率19%(800万円以下15%) 普通法人より4.2ポイント低い
みなし寄附金 収益事業の利益を移せば、課税所得が減る
8,000万円以下は収支計算書不要 お金の流れが外部に出ない
境内地・境内建物は固定資産税非課税 不動産の保有コストが下がる

この5つが、器についている値札である。

そしてこれらは、活動していなくても法人格に付いてくる。

実際に、何が起きているか

文化庁は、売買に類似した行為をこう定義している。

文化庁「宗教法人格の不正利用について」

「主として、節税や税制優遇等への活用を謳(うた)って、宗教法人の代表役員の地位、その他の実質的に法人の運営に対して深い影響を及ぼす法人内の地位を、名目のいかんを問わず、寄附等、金銭その他の財産上の利益を与えることにより得る取引行為のことを指します」

株式のように「法人を売る」わけではない。代表役員の座を、寄附という形で金銭を渡して手に入れる。

流れにすると、こうなる。

寺は消える。法人格は残る。檀家が減る収入300万円未満が4割超住職がいなくなる代表役員の不存在活動が止まる礼拝施設の滅失など法人格だけが残る税優遇も、そのまま付いてくる仲介サイト「買いたい」「売りたい」「M&A」代表役員の地位を取得寄附等の名目で金銭を渡す赤の位置で、宗教活動の実態が消える。だが税の優遇は消えない。※文化庁「宗教法人の売買に類似した行為」の説明に基づく。すべての譲渡が違法という意味ではない

摘発された事件が、2件ある

これは推測ではない。文化庁が自分の資料に、報道を引用する形で載せている。

事件1:セミナー会社が静岡の寺を買った

産経新聞 2013年6月2日(文化庁資料より)

各地でセミナーを開いていた福岡県の企画会社の前社長らが、法人税法違反罪で福岡地検に追起訴された。舞台装置として使われたのが、静岡県内の宗教法人だった。前社長らは2006年、休眠状態だったこの宗教法人の代表権を購入。セミナー受講料を「寄付金」として宗教法人の口座に振り込ませるようになったという。3年間で所得約27億円を隠し、脱税総額は約8億円に上った。

手口はシンプルである。セミナー代を「お布施」にすれば、非課税になる。

事件2:不動産会社が伊東市の寺を経由させた

中日新聞 2017年3月3日(文化庁資料より)

宗教法人を介した不動産取引で法人税約1億円を免れたとして、名古屋地検特捜部が不動産会社の社長ら3人を逮捕した。2015年5月期に4億2,760万円の所得を隠し、法人税1億820万円を免れたとされる。

不動産会社は名古屋市内の賃貸ビルを購入後、容疑者が代表役員を務める静岡県伊東市の宗教法人に同額で売却。さらに寺が第三者に高値で転売して得た利益約4億円を、課税対象ではない「非収益事業」の所得と主張し申告しなかったという。

こちらは不動産である。寺を一度通すだけで、売却益が非課税だと主張できる。

2件に共通するもの

要素 事件1 事件2
使われた法人 静岡県の休眠宗教法人 静岡県伊東市の宗教法人
手口 売上を「寄付金」にする 売却益を「非収益事業」と主張
隠した所得 約27億円 4億2,760万円
脱税額 約8億円 1億820万円

どちらも「宗教活動による収入だ」という主張を軸にしている。

そしてどちらも静岡県の法人が使われた。これが偶然かどうかは、この2件だけでは判断できない。

確認できなかったこと

反社会的勢力が関与した事件、外国資本・外国籍の人物が宗教法人を取得した事件について、当サイトは具体的な事例を特定できなかった。ネット上にはそうした言説があるが、裏付けを確認できていない。

文化庁の資料には「反社会的組織の活動に用いられることとなるおそれもある」という懸念の記述はあるが、実例は挙げられていない。

では、なぜ消せないのか

ここが核心である。

文化庁は2023年に通達を出した。判断基準も示した。マニュアルも改訂した。それでも、整理は進んでいない。

理由は3つある。

理由1:解散を決めるのは、役所ではなく裁判所である

宗教法人法81条を引く。

宗教法人法 第81条第1項(抜粋)

裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。

二 (前略)一年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと

三 礼拝の施設が滅失し、やむを得ない事由がないのにその滅失後二年以上にわたつてその施設を備えないこと

四 一年以上にわたつて代表役員及びその代務者を欠いていること

都道府県は「請求」しかできない。決めるのは裁判所である。

手続きは5段階になる。

段階 やること
1 所轄庁が清算人候補者・特別代理人候補者を選ぶ
2 必要書類の作成・準備
3 解散命令の申立て
4 特別代理人の選任決定・審問手続
5 裁判所が解散命令を決定

これで終わりではない。解散した後、清算の手続きが残る。

債権者への公告を2か月間に3回。残った財産の処分。清算結了の登記。

文化庁の資料は、実際にかかった時間の例を載せている。

島根県大田市の寺の例(文化庁資料より)

2013年 前住職が死亡

2014年 包括法人が相談を受け、現地確認

2018年 手続きが停滞。国庫帰属の検討へ

2020年3月 島根県知事が任意解散を認証

2021年10月 清算手続きが結了

住職が亡くなってから、8年かかっている。

しかもこれは任意解散で、裁判所の解散命令ではない。関係者が協力した場合ですら、8年かかる。

理由2:10年で96件しか請求されていない

実績の数字がある。

過去10年(平成24〜令和4年)の解散命令請求件数(文化庁資料)

文部科学大臣所轄 1件

都道府県知事所轄 95件

(このほか令和4年に、利害関係人からの請求が1件)

10年で96件。年平均9.6件である。

不活動宗教法人は5,019ある。この速度なら、整理し終えるのに520年かかる。

なお、法令違反を理由とした解散命令が出たのは、これまで2件だけである。地下鉄サリン事件のオウム真理教と、霊視商法詐欺事件の明覚寺(和歌山県)。

理由3:予算が「年5法人」で組まれている

ここがいちばん具体的である。

文化庁は都道府県向けに補助金を作った。「不活動宗教法人対策推進事業」という。

令和5年度予算(文化庁資料)

予算額 4億3,747万6千円

内訳 47都道府県 × 930万8千円

「法人解散に必要な経費として、弁護士費用など、1都道府県あたり約930万8千円程度の経費が必要(5法人/年の整理を想定)」

1都道府県あたり、年5法人。

47都道府県で、年235法人。

5,019法人を整理するには、21年かかる計算になる。

基準 年間の処理数 5,019法人の解消まで
過去10年の実績(解散命令請求) 9.6件 約520年
補助金が想定する処理数 235件 約21年

予算を10倍にしても、20年かかる設計である。

そして活動が確認できない法人は、約1万5000件ある。

国際機関が見ている

この問題は、国内だけの話ではない。

FATF(金融活動作業部会)が、日本の非営利団体について指摘している。マネー・ローンダリングとテロ資金供与の対策を各国に求める国際機関である。

文化庁「宗教法人格の不正利用について」

「FATF(中略)においても、宗教法人を含む日本の非営利団体が、知らず知らずのうちにテロ資金供与に巻き込まれる可能性が指摘されています」

文化庁は、財務省が作ったリーフレットを自サイトに掲載している。宗教の担当部署が、資金洗浄対策の広報をしている。

誰に注意喚起しているか

文化庁が周知・注意喚起を出した先を、時系列で並べる。

時期 相手
2023年10〜11月 通信事業者(仲介サイトが置かれるインターネット環境)
2025年8月28日 日弁連、日本司法書士会連合会、日本行政書士会連合会、日本税理士会連合会
2025年11月19日 M&A支援機関協会、M&Aファイナンシャルアドバイザー協会
2026年3月11日 宅地建物取引業者(国土交通省経由)

相手が順に広がっている。

通信事業者から始まり、士業へ、M&A業者へ、そして不動産業者へ。

これは、止まっていないことの証拠である。止まっていれば、対象を広げる必要がない。

そして文化庁は現在、情報提供窓口(2026年12月まで)と相談窓口(2026年7〜10月)を開設している。

あなたの家の墓は、どうなるのか

ここまでは制度の話である。生活に降ろす。

檀家である寺の法人格が第三者に渡った場合、墓の管理者が変わることになる。

檀家や墓の使用者に個別の通知が行くかどうかは、ケースによる。代表役員の交代は、登記事項ではあるが、檀家への通知が法律で義務づけられているわけではない。

無縁墓は、すでに問題になっている

総務省行政評価局が2023年9月、「墓地行政に関する調査」を公表した。公営墓地の無縁墳墓を中心とした調査である。

指摘 中身
情報の把握 使用者の情報は把握されているが、縁故者の情報の把握が進んでいない
改葬の判断 祭祀を承継する者がいないと断定できず、墓石の撤去をためらう
物理的な問題 撤去した墓石の保管場所が確保できない

そして墓じまい(改葬)の件数は、2023年度に全国で16万6,886件あった。

やっておけること

制度が動くのを待つ以外に、確認できることがある。

確認すること 方法
寺の代表役員が誰か 法人の登記事項証明書は誰でも取得できる(法務局)
住職が常駐しているか 法要や墓参のときに確認する
寺が包括団体に属しているか 単立より、宗派に属している方が相談先がある

不活動宗教法人の約87.8%は、宗派などの包括団体に属している(2022年末時点)。単立は約12.0%である。

包括団体があれば、住職が不在になっても宗派が動ける余地がある。単立の場合は、相談先がない。

反対の見方も、正面から置く

「規制を強めればいい」という話には、正当な反論がある。

憲法20条の信教の自由である。

行政が宗教団体の中に踏み込むことには、歴史的な理由から強い抑制がかかっている。戦前、国家が宗教を統制した経験があるからだ。

だから宗教法人法は、所轄庁に強い権限を与えていない。解散を決めるのを裁判所にしたのも、行政の裁量で宗教団体を潰せないようにするためである。

この設計は、間違っていない。

規制強化に慎重な立場からの反論

活動の有無を役所が判定する仕組みを作れば、その基準はいずれ「望ましい宗教活動」の判定に使われる。小規模な教団や新しい宗教ほど、活動実態を疑われやすい。不正利用の対策という名目で、行政が宗教の内容に立ち入る入口を作ることになる。

この懸念は、無視すべきものではない。

だが、切り分けられる部分がある

信教の自由が守るのは、信仰と宗教活動である。

いっぽう不活動宗教法人は、定義上宗教活動を行っていない。代表役員がおらず、礼拝施設もなく、書類も出ていない。

守るべき信仰が、そこにない。

そして文化庁自身が、こう書いている。

文化庁「宗教法人格の不正利用について」

「宗教法人法は、宗教活動以外の目的に法人格を利用する事態をそもそも想定しておらず、元来の宗教活動を継続・継承する意思のない第三者が法人格を取得する行為は、法の目的に合致しないものです」

法律が想定していない使われ方をしている、という認識である。

2023年2月1日の衆院予算委員会では、当時の岸田首相がこう答弁している。

岸田文雄首相(2023年2月1日・衆院予算委員会/文化庁資料より)

「本来徴収すべき書類の徴収を徹底しないことによって、不活動宗教法人を放置することにつながり、そして第三者によって法人格が不正に取得され脱税や営利行為等に悪用される、こうした可能性が広がるというようなことは、まずあってはならないことだと思います」

質問した議員は、こう言っている。

渡辺委員(同・衆院予算委員会)

「誠実に宗教活動に取り組んでいる方々や宗教法人への対処まで厳しくするべきだと言ってるわけでは全くありません」

「このような正直者が馬鹿を見る、真面目に宗教活動してる方々までが信頼を失いかねないような事態を放置してはいけない」

年収300万円未満で寺を守っている側にとっても、この問題は他人事ではない。

まとめ

論点 確認できたこと
消える側 全国約18万法人。年収300万円未満の寺が4割超
残る側 不活動宗教法人は5,019(2024年12月)。活動が確認できないものは約1万5000
器の値段 収益事業以外は非課税/税率19%/みなし寄附金/8,000万円以下は収支計算書が不要/境内地は固定資産税非課税
実際の事件 脱税約8億円(2013年起訴)、法人税1億820万円(2017年逮捕)。どちらも文化庁が資料に掲載
整理の速度 解散命令請求は10年で96件。補助金の想定は年235法人
制約 決めるのは裁判所。信教の自由という正当な理由がある

寺が消えるのは、地域が痩せた結果である。住職を責める話ではない。

問題は、消えたあとに残る器のほうにある。

活動していない法人格に、税の優遇と、収支を開示しなくてよい仕組みが、そのまま付いている。そこに値段がつく。

文化庁は動いている。通達を出し、基準を明確にし、補助金を作り、通信事業者から不動産業者まで注意喚起の対象を広げた。

それでも、10年で96件である。

次に確認すべきなのは、文化庁の次回調査の数字だ。5,019がどう動くか。

減っていれば、整理が進んだということ。増えていれば、まだ数え終わっていないということである。

活動していない器に税の優遇を残しておく理由は、どこにあるのでしょうか。

参考資料

一次資料(文化庁)

一次資料(税制・法令)

一次資料(墓地)

報道

関連(当サイト既報)

編集者K

速報より本質。話題のニュースの裏側を裏取りして届ける、一日の最後に読むニュースサイトです。