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日本の女性の足を引っ張っているのは、日本の女性ではないか──あるネット番組で高市早苗を論じた6人の発言を、全部検証した

関心度 ★★★★☆ 信頼度 ★★★★☆ 賛否度 ★★★★★


2026年7月6日、ABEMA Primeが「“女性初”と勝手に期待しすぎ? 失望した人に聞く」という回を放送しました。

スタジオに並んだのは、全員女性です。政治ジャーナリスト、コラムニスト、企業のCEO、ギャルタレント、そして一般の当事者2人。司会進行はフリーアナウンサーの柴田阿弥、MCは山崎怜奈。

この番組で出た言葉が、放送の翌日からXで広がりました。

高市さんが例えば主婦感覚があるかって言ったら、まず絶対にないと私は思っていました。まずお料理できないんですよね、あの方は

発言したのは、政治ジャーナリストの安積明子です。

この記事は、公式動画の内容にもとづいて、この回で何が言われたかを整理します。そのうえで、どこがおかしかったのかを具体的に指摘します。

先に結論を書いておきます。6人のうち、政治の中身と手続きの話をしたのは2人だけでした。そして最後にそれを止めたのは、司会進行の柴田阿弥です。

この記事が使っている資料

最初に出所を明らかにしておきます。

使ったのは、ABEMA Prime公式YouTubeチャンネルが2026年7月7日に公開した本編動画です。37分42秒、22万4,757回視聴、コメント4,604件(確認時点)。

まとめサイトの切り抜きではなく、番組が自分で公開しているものです。発言の引用は、この動画の自動文字起こしから取り、明らかな変換ミス(「高一」→「高市」など)だけを直しています。

確度について 自動文字起こしのため、細部の言い回しに誤差がある可能性があります。時刻を併記しているので、原典を確認できる形にしました。話者の割り当ては、番組が公表しているキャストと前後の文脈から判断しています。

出演者は誰か

スタジオに並んだ6人です。枠の色は、この回で何を軸に高市首相を語ったかを表しています。赤が属性、青が政策と手続きです。

安積明子
政治ジャーナリスト
慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格し、参議院議員の政策担当秘書を経てフリーに
この回の軸 主婦感覚・料理・出産
河崎環
コラムニスト
1973年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。スイス・ロンドン在住経験。2019年から立教大学社会学部兼任講師
この回の軸 名誉男性・性別と年齢
薄井シンシア
SEKAIA株式会社CEO
17年間の専業主婦を経て47歳で復職。バンコクの学校給食、パートの電話受付を経て、50代で外資系ホテルの副支配人、62歳で外資系ホテルの日本法人社長
この回の軸 「男になって戦え」/表彰式への出席
あおちゃんぺ
ギャルタレント
番組のレギュラーコメンテーター
この回の軸 動機の推定
山崎怜奈
MC
1997年生まれ。元乃木坂46。慶應義塾大学環境情報学部卒。ラジオパーソナリティ・著作家
この回の軸 国会・記者会見・党首討論
柴田阿弥
司会進行・フリーアナウンサー
元SKE48。番組の進行役として、意見をいちばん言いにくい位置にいる
この回の軸 「男性なら言われないこと」の切り分け

ほかに、当事者ゲストとしてしおりママ(スナック経営・無党派層)とみく(30代・1児の母・国民民主支持)が出演しています。この2人は肩書きで呼ばれた論客ではないので、この記事では別に扱います。

この6枚は、あとで効いてきます。言った内容と、言った人の経歴が食い違っている箇所があるからです。

政治家の評価軸に、料理と出産が出てきた

政治ジャーナリストの安積明子が、こう言います。

高市さんが例えば主婦感覚があるかって言ったら、まず絶対にないと私は思っていました。まずお料理できないんですよね、あの方は(笑い)

そういうところとか、ですから、一般の女性の感覚で、お子さんもいらっしゃらないので……実際育ててみないと分からない苦労っていうのは多分ないと思うんですよ

ですからそういった意味での女性の代表というよりも、女性という、ある意味の属性を持った人間が出てきたっていうところです

ここで司会の柴田阿弥が、問い返します。

料理ができないとか、お子さんがいらっしゃらないからちょっと当事者の気持ちが分からないのではないかっていうことは、男性議員であってもお子さんがいるにも関わらず子育て政策を進めたい方もいると思います

これに対する安積の答えが、こうでした。

いらっしゃるんですけどね。ただ実際に自分でお買い物をして料理を作ってって言ったら具体的に、じゃあキャベツを1個買ってどういう風に作ろうとか、どういう風に食材を活用しようとか、主婦の方すごく考えられると思うんですよね

この基準が、男性首相に使われたことはない

歴代の総理大臣が料理をできたかどうか、買い物をしていたかどうかを、政治ジャーナリストが評価軸にした例を私は知りません。

基準が、高市首相にだけ発生しています。

柴田の問いには、答えていない

柴田が指摘したのは「子どもがいなくても子育て政策はできる」という、評価軸そのものへの疑問です。

安積の返答は「いらっしゃるんですけどね」で受け流し、そのままキャベツの話に移りました。問われたのは軸の妥当性で、答えたのは主婦の細やかさです。かみ合っていません。

言ったのは、参議院議員の政策担当秘書だった人である

安積明子は、国会議員政策担当秘書資格試験に合格し、参議院議員の政策担当秘書を務めた経歴を持つ政治ジャーナリストです。国会の手続きを内側から知っている人です。

実際、この番組の前半で安積は、参議院と衆議院それぞれで国会が空転した理由、憲法59条のみなし否決、公職選挙法改正をめぐる自民と維新の対立を、10分近くかけて解説しています。できるんです。

その人が、評価の段になって持ち出したのがキャベツでした。

公平のために書いておくこと

同じ発言のなかで、安積はこうも言っています。

むしろ私、女性っていうよりも、派閥に入っていない、それから世襲じゃない、そういうところの新しさっていうのを非常に私は感じて

これは政治的な評価です。持っている人が、なぜ属性の話に降りたのか。そこが分かりません。

上に行った女性は、もう女性ではないのか

コラムニストの河崎環は、こう述べました。

女性が、特にあの年代の女性が、ああいった男性社会の中に入っていって足固めをしていくというのは、どこか疑似的に男性になるというか、いわゆる名誉男性的なところがやはりあるので、私たちが女性の立場として、あるいは母親の立場として望んでいるようなことを、首相になった高市さんがやってくれるか、同じ発想を持っているかというのは多分違ったんじゃないかな

反証できない形になっている

「名誉男性」は、男性中心の社会で成功した女性を「もう女性の側ではない」と切り離す言葉です。

この言い方を使うと、次のことが同時に成立してしまいます。

  • 女性が上に行けないうちは、差別があるから
  • 女性が上に行ったら、その人はもう女性ではないから

どちらに転んでも「女性の代表」は現れません。反証のしようがない構造になっています。

そしてこの言葉は、本人の政策ではなく、本人がどう思っているかの推定で使われています。高市首相が「私たちと同じ発想を持っていない」という判断は、政策の中身ではなく、男性社会で生き延びたという経歴から導かれています。

国会に出ない理由を、性別と年齢に求めている

ひょっとすると女性だからという風に言ってしまってあれなのかもしれないですけれども、女性としてその年齢的なものもあったりして、ご自分の仕事に使えるだけの体力であるとか時間というものを確保するところに、今までのような平成の男性の政治家のような時間の使い方ができないところはあったりしないのかな

国会に出る回数が少ない理由を、性別と年齢から推定しています。「女性だからと言ってしまってあれなのかもしれない」と自分で断りを入れたうえで、そのまま言っています。

なお、安積はこれに対して「持病を公表されているが、それは政治家のエクスキューズにはならない」と答えています。ここは安積のほうが筋が通っています。

「男になって戦って」と言ったのは、17年の専業主婦だった人だ

薄井シンシアの発言です。

これだけ国民が支持してるのに、だったら永田町まで行って、戦って男になって戦って、せめて自分が上になった時には、本当のリーダーだったらルールを変えて欲しいなと思ったんですよ

自分が肯定してきた生き方と、逆を向いている

言葉そのものより、言った人との関係で問題になります。

薄井シンシアは、17年間の専業主婦を経て、47歳でバンコクの学校給食の仕事から復職した人です。そこからパートの電話受付、外資系ホテルの副支配人と進み、62歳で外資系ホテルの日本法人社長になりました。

そして、「専業主婦は立派なキャリア」という主張を、媒体の連載で重ねてきた人でもあります。

その人が、女性の総理に向かって「男になって戦え」と言いました。

自分が肯定してきた生き方と、他人に要求する生き方が、逆を向いています。

そしてもうひとつ、ジュエリーアワードの話

薄井はこうも言っています。

あれだけ働いて働いてって言った人が、国会答弁で寝る暇もないと言っておきながら、ジュエリーアワードに出るっていうのは、私はやっぱりそれはないなと思って

これはリーダーのリスクマネジメントとしては最悪だと思った。国会が空転中にあんなの出たら、人から批判されるに決まってるじゃない

しおりママも、あおちゃんぺも、これに乗ります。番組の後半は、しばらく表彰式の話で進みました。

空転させていたのは、誰か

ここに、この回のいちばん大きな抜けがあります。

国会を空転させていたのは、野党の審議拒否です。

これは推測ではありません。番組の前半で、安積明子自身が説明しています。参議院は総理の答弁修正の扱いをめぐって野党が出席しなくなり、衆議院は議員定数削減法案と副首都構想法案の審議に自民と維新が入ったことに野党が反発した、と。

つまりスタジオの全員が、空転の構図を聞かされたうえで話しています。

それでも、この番組で野党の審議拒否を批判した人はいません。批判はすべて、総理大臣が表彰式に出たことに向かいました。

そして、通した法案の数は一度も出てこない

総理大臣の仕事は、法案を通すことです。

高市内閣は、会期158日の特別国会で、政府提出法案64本をすべて成立させています。戦後4回目のことです。これは本人が7月27日の記者会見で述べており、記録に残っています。

この数字は、番組のなかで一度も出てきません。

表彰式に1回出たことは「リスクマネジメントとして最悪」と呼ばれ、法案64本の全成立は言及すらされない。評価軸として、釣り合っていません。

私は、この批判は成立していないと考えます。空転させた側に触れず、成果の数字も出さず、1回の出席だけを取り出すのは、評価ではなく悪口です。

一つの行動から、動機まで決めつける

ギャルタレントのあおちゃんぺは、こう言いました。

あれを見て、この人は総理大臣になりたいんじゃなくて、芸能人になりたかった女なんじゃないかなっていう風に思いましたね

判断への批判と、動機の断定は別のものだ

表彰式に出たという1つの行動から、本人が政治家になった動機まで推定しています。

「表彰式に出るべきではなかった」なら、判断への批判です。「本当は芸能人になりたかった人だ」は、動機の断定です。ここには根拠がありません。

そして「女」という言い方。同じ場面で男性首相に「芸能人になりたかった男」と言うかどうかを考えると、この語の機能が見えます。

この回で、いちばん公平だった発言も出ている

番組の後半、司会の柴田阿弥がこういう整理を入れます。

女性初の総理ということで期待が大きいのは間違いなかったし、ただ一方で、その「女性初」というものを高市総理に背負わせすぎているのではないかと当初から思っていて。なぜかと言うと、男性議員、例えば石破総理が男性の代表ですかと言われたら、多分そうじゃないんですよ

この一言が、この回の論点を全部言い当てています。

まともだった2人──山崎怜奈は、最後まで手続きの話をしていた

ここまで4人の発言を見てきました。残りの2人は、まったく別のことを話しています。

MCの山崎怜奈は、この番組で一度も属性の話をしていません。

冒頭で、まずグレーな部分を挙げた

就任される以前から、統一教会の問題であったり、裏金の問題であったり、これグレーのまま進むのかなって思うようなところが複数あると思って見ていまして……誹謗中傷の動画への秘書の関与であったりだとか

発信の場は、まず国会だと言った

SNSをご覧になっていない国民の方も当然多くいらっしゃるじゃないですか。首相が大々的に発信する言葉を述べる場所は、やっぱり国会がまず1番優先なのかなと思うんです。その後にマスメディアへの記者会見が入ってくる

党首討論をキャンセルしたときの代替手段を問うた

今に始まったことでは多分なくて、振り返っていくと選挙の時の党首討論でもお出にならなかった。急遽出演をキャンセルされて。でも高市さんが呼べば医者が来るじゃないですか。その場で処置してもらうことも可能ではなかったのかな。文面で対応するとか、リモートで対応することもあったのではないかな

支持率が落ちない理由を、冷静に整理した

当初の支持率もすごく高かったので、ご祝儀相場が落ち着いて、政策を冷静に見られるフェーズになったという考え方もあると思うんですよ

全部、行動と手続きの話です。国会に出たか、記者会見を何回開いたか、党首討論をキャンセルしたときに代替手段はなかったか、支持率をどう読むか。

これは高市首相に厳しい内容です。擁護ではありません。ただ、批判の対象が政治家としての行動に限られています。

そして最後に、柴田阿弥が止めた

番組の終盤です。

議員として能力を追求されたり、してしまったことを追求されたら当然だと思うんですけど、高市さんに関しては、料理ができないとかお子さんがいないって、絶対他の男性だったら言われないようなことを言われたり、笑顔で話したらキャピキャピしていると受け取られたり、上目使いなんじゃないかって、絶対男性だと言われないようなことを言われてしまいますよね

私それが嫌で、ずっと高市さんが叩かれる時に私は必ず持ち上げるんです

そして、こう続けます。

その指摘だったらいいと思うんですけど、いろんな要素が混ざりすぎて、批判をされる時に、そこが同じ女性としてすごく悔しいなというか、こんなに上まで行ったのに、結局そういう男性では受けないような切り口で言われてしまうのだったら悔しい

ここに、この回の答えが全部ある

柴田は、批判そのものを止めていません。「議員として能力を追求されたら当然」と先に置いています。

そのうえで、「男性なら言われないこと」だけを切り分けて、それはおかしいと言いました。料理、子ども、キャピキャピ、上目使い。

この整理は、番組の途中でスタジオにいた誰も出せていませんでした。司会進行という、いちばん意見を言いにくい位置にいる人が出しています。

そこに乗った薄井の言葉は、もはや野次である

柴田の発言を受けて、薄井シンシアがこう言います。

やっぱりそこはもう、女性だからああいう風に言われるのがすごい論外だと思うんですよね。この番組でもキャピキャピっていうのは何回も出て本当に腹立つ

柴田は「男性なら言われないこと」という基準を出しました。それは切り分けです。薄井が返したのは、腹が立つ、という感想だけです。

誰の、どの発言を指しているのかも言っていません。基準もなく、対象も示さず、不快だとだけ言う。これは議論ではなく、野次です。

しかもこの人は、同じ放送で高市首相に「男になって戦って」と言っています。女性扱いされることに腹を立てながら、女性であることをやめろと求めている。2つの発言のあいだに、一本の基準はありません。

一般ゲストの2人も、なぜか文句しか出てこない

この回には、当事者として一般の方が2人出ています。スナックを経営するしおりママと、30代で1児の母のみくです。

しおりママ「子ども手当って子どもの年齢が上がってくにつれて減っていくんですよ。でも子どもって大きくなればなるほど金はめちゃくちゃかかるんです。だから逆なんですよね」

みく「責任ある積極財政っておっしゃってたところにとても期待をしていたので……食料品消費税率1%とかっていう案も出てきていて、正直筋がいい政策だとは思えない」

年齢が上がるにつれて減っていく制度では、もうない

児童手当は、2024年10月から拡充されています。

年齢 支給額(第1子・第2子) 第3子以降
0〜2歳 月15,000円 月30,000円
3歳〜小学生 月10,000円 月30,000円
中学生 月10,000円 月30,000円
高校生年代 月10,000円(新設) 月30,000円

下がるのは3歳の1回だけで、あとは高校生年代まで一律です。「年齢が上がるにつれて減っていく」制度ではありません。

しかも彼女が問題にしている「大きくなるほど金がかかる」時期については、まさにその2024年の改正で、中学卒業で打ち切りだったものが高校生年代まで延長されています。所得制限も撤廃されました。

すでに手当てされた不満を、まだ続いているものとして語っている。それに対して、スタジオの誰も事実を訂正していません。

期待していたのに、と言うだけで代案は出てこない

みくのほうは、「責任ある積極財政に期待していた」と言いながら、食料品の消費税1%を「筋がいいと思えない」と切っています。

ではどうすればいいのか。給付なのか、別の減税なのか、財源をどこから持ってくるのか。そこは出てきません。

期待していた、でも違った。これは評価ではなく、感想です。

一般の方に政策の専門知識を求めるのは酷です。ただ、この番組は「当事者の声」としてこの2人を呼んでいます。制度の現状を確認しないまま不満だけを流せば、視聴者には「いまも子ども手当は減っていく」と伝わります。

肩書きのある4人も、当事者として呼ばれた2人も、この番組で政策の中身に踏み込んだ人はいませんでした。

コメント欄4,604件が、番組より先に答えを出していた

この動画には4,604件のコメントが付いています。上位に並んでいるものを、高評価の数とともに引きます。並べ替えは既定のまま(人気順)です。

高評価1,502 料理できないって半笑いで言うところにこの人の人間性でてるな

高評価1,266 「料理が出来ない」「子育てしていない」と、自分の加害性に気付いてないのがヤバイですね。

高評価1,150 これ本気で言ってんなら普通にフェミニストや女性人権団体やらが大激怒でしょ。完全に「女性はこうあるべきは性差別だ」とか言われてたんだからさ。

高評価1,020 女性の嫌な部分を濃縮した回。女性だけでやるとこうなるから良くないって言われても仕方ないよ。

高評価918 料理出来るかとか、子供がいるかとか、マジでどうでもいいわ

いちばん怒っているのは、女性である

番組は「女性の声」として企画されています。ところが、いちばん強い言葉で怒っているのも女性でした。

高評価788 一部の女性側が「女性が料理をするべき」という風潮を無くそうとしているのに、女性側から料理ができない事を半笑いで指摘されてるのは可哀想。

高評価693 子ども3人育ててる女性として、こんな不愉快な番組見たことがないくらい不愉快。女性の代表面するのやめてください!!!!

高評価746 半笑いで見下すように言うの、正にタチの悪いお局の典型で引いた。私はアラフィフオバはんですが、こう言うばあさんとは関わらないようにしてます。(中略)最後のアナウンサーの意見に同意。

「女性の代表面するのやめてください」という一文が、この記事の言いたいことをほぼ言い切っています。

そして最後の1件は、柴田阿弥の切り分けを支持しています。スタジオで浮いていた発言が、コメント欄では上位に来ています。

コメント欄が拾って、スタジオが拾わなかったこと

高評価566 そもそも高市さんって実子がいないだけで旦那さんの連れ子はいるでしょ? 前提から間違ってる上の差別ってもう救いようないぞ

高市首相は2004年に山本拓氏と結婚しています。山本氏には前の結婚での子が3人おり、高市首相はその継母になったと伝えられています。長男は福井県議会議員です。

安積明子は「お子さんもいらっしゃらないので、実際育ててみないと分からない苦労っていうのは多分ないと思うんですよ」と言いました。

この前提を、スタジオの誰も確認していません。確認したのは、コメント欄でした。

確度について 継母としての育児の実態は本人の私生活にあたるため、当サイトは一次資料を確認できていません。ここで言えるのは、「子どもがいない」という前提そのものが、番組の外では疑われているという事実までです。

番組の公式コメントに、返信が88件

番組が固定した挨拶コメント(高評価39)には、返信が88件付いています。高評価より返信のほうが倍以上多い。賛同ではなく、言い返しが集まっている形です。

それでもこの回について書いた報道機関は、確認した範囲でありません。

整理すると、こうなる

発言者 批判の軸 成立するか
安積明子 料理・出産 しない。男性首相に適用されない基準。ただし国会解説と「派閥・世襲でない新しさ」の指摘は成立する
河崎環 名誉男性・年齢 しない。上に行った女性を「女性でない」と切る構造で、反証できない
薄井シンシア 「男になって戦え」
/表彰式への出席
どちらもしない。前者は自身の「専業主婦は立派なキャリア」と矛盾。後者は空転させた野党に触れず、法案64本の全成立も出さずに1回の出席だけを取り出している
あおちゃんぺ 動機の推定 しない。1つの行動から本人の動機を断定している
山崎怜奈 国会・会見・党首討論 する。すべて行動と手続きへの指摘
柴田阿弥 切り分けの提示 する。能力への批判は当然としたうえで、男性なら言われないことだけを問題にした
しおりママ
(一般ゲスト)
子ども手当が減る しない。2024年10月の改正で高校生年代まで延長・所得制限撤廃。下がるのは3歳の1回だけ
みく
(一般ゲスト)
食料品1%は筋が悪い 評価になっていない。期待外れという感想のみで、代案も財源も示していない

発言から見える、それぞれの人

成立するかどうかとは別に、何をどう言ったかで、その人の型が出ます。この番組の発言だけから読み取れるものを並べます。

安積明子
姑発言
料理ができない、子どもがいない、キャベツの使い方を分かっていない。総理大臣への評価というより、嫁の品定めです。前半では憲法59条のみなし否決まで解説できる人が、評価の段になるとこれを出しました。柴田に軸の妥当性を問われても答えず、主婦の細やかさの話へ戻っています。
河崎環
確かめられない言葉を選ぶ
「名誉男性的なところがある」「年齢的なものもあったりして」。どちらも本人の内面や身体の推定で、外から確かめようがありません。しかも「言ってしまってあれなのかもしれないですけれども」と先に逃げ道を作ってから断定しています。反論されない位置に立ってから話す型です。
薄井シンシア
相手によって基準が変わる
自分の17年の専業主婦は「立派なキャリア」で、高市首相には「男になって戦って」。女性扱いされることに腹を立てながら、女性であることをやめろと求めています。一本の基準がないぶん、発言は主張ではなく感情の表明になります。
あおちゃんぺ
あまり考えられない
1つの出来事から、「本当はこうしたかった人だ」と本人の願望まで決めています。そこに至る根拠は示されません。本人にしか分からないことを外から断定しているので、当たっていても外れていても検証できない。思いついたことを、そのまま結論にしています。
山崎怜奈
記録に残ることしか言わない
国会に出た回数、記者会見の運用、党首討論のキャンセル。すべて日付と記録で確認できるものだけです。この番組で一度も属性の話をしていません。スタジオでいちばん若く、いちばん厳しいことを言っています。
柴田阿弥
たった一人、基準を出した
司会進行は、意見をいちばん言いにくい位置です。それでも「男性議員でも子どもがいて子育て政策を進める人はいる」と軸そのものを問い、最後に「男性なら言われないこと」だけを切り分けました。この整理を、肩書きのある4人は誰も出していません。
しおりママ
いまの制度を見ていない
実感は本物です。ただ2024年10月の拡充を知らないまま、「減っていく」と話しています。不満の中身は、すでに手当てされた部分でした。訂正できる人がスタジオに何人もいたのに、誰も言いません。
みく
期待と失望だけで終わる
「期待していた」「筋がいいとは思えない」。どちらも自分の気持ちで、どうすべきかは出てきません。給付なのか別の減税なのか、財源をどこから持ってくるのか。そこがないので、賛成も反論もできない発言になっています。

赤6人に共通しているのは、確かめようのないことを語っているという点です。料理の腕、内面、動機、気持ち、記憶のなかの制度。

青2人に共通しているのは、確かめられることしか語っていないという点です。回数、日付、キャンセル、男性なら言われるかどうか。

この線は、肩書きの重さとも、年齢とも一致していません。

この記事が言いたいこと

ここからは論評です。

高市首相を批判すること自体は、まったく問題ありません。国会に出る回数が少ない、記者会見が制限されている、党首討論をキャンセルした。全部、記録に残る行動です。そこを突くのは報道の仕事で、山崎怜奈はそれをやっていました。

問題は2つあって、ひとつは批判の材料が足りなくなったときに、料理と出産と「名誉男性」が出てきたこと。もうひとつは、総理大臣を測る本来の物差しが、この番組で一度も置かれなかったことです。

会期158日で政府提出法案64本を全成立。戦後4回目です。賛成でも反対でも、まずここから始まるはずでした。

言ったのは、全員女性である

この番組で高市首相へ向けられた発言を、もう一度並べます。

主婦感覚がない。料理ができない。子どもがいない。名誉男性だ。男になって戦え。芸能人になりたかった女だ。

すべて女性からの発言です。

この回のスタジオには女性が6人いて、うち3人は慶應義塾大学を出ています。政治ジャーナリスト、大学の兼任講師でもあるコラムニスト、企業のCEO。この国で女性の職業選択が広がった結果として、そこに座っている人たちです。

その並びで、女性初の総理を「主婦感覚がない」と評価しました。

そして、それを止めたのが、いちばん若く、いちばん肩書きの軽い司会進行のアナウンサーだった。

誰が、女性を測る物差しを持っているのか

「女性が活躍できないのは男性社会のせいだ」という説明は、長く使われてきました。

ところが、この番組で高市首相へ向けられた物差し──料理、出産、名誉男性、男になれ──を持ち出したのは、男性社会ではありませんでした。

本人たちに、女性を差別する意図はなかったと思います。むしろ「女性の側に立って語っている」つもりだったはずです。だからこそ、止めにくい。薄井シンシアが「この番組でもキャピキャピっていうのは何回も出て本当に腹立つ」と言ったのは、その空気が繰り返されているという証言です。

そしてこの4人は、匿名の書き込みではありません。コラムニスト、元インターナショナルスクール副校長、ジャーナリスト、タレント。肩書きを出して、専門性を期待されて呼ばれた人たちです。

その4人が総理大臣に当てた物差しが、料理・出産・名誉男性・表彰式への出席・動機の推定でした。会期158日で政府提出法案64本を全成立させたという数字は、誰の口からも出ていません。

これは4人の資質の問題ではなく、この国で「女性の意見」として流通しているものの中身の問題です。女性が政治家を語るときに、この物差ししか出てこないのなら、次に上に行こうとする女性も同じ物差しで測られます。

日本の女性の足を引っ張っているのは、日本の女性ではないか。

この問いを、この放送は正面から突きつけています。少なくともこの番組について言えば、高市早苗を女性役割で測った言葉は、ひとつも男性から出ていません。

放送から1か月が経ちますが、この回について書いた報道機関は、確認した範囲でありません。切り抜きが4万回以上再生され、公式動画が22万回を超え、コメントが4,600件付いているのにです。

番組は全編を公開しています。誰でも確認できる状態で、そこに残っています。

この記事で使った資料と、その確度

当サイトは資料の確度を5段階で表示しています。★5は当事者の記録そのもの、★4は自社取材で数字の出所が追えるもの、★3は事実は取れるが論調が入るもの、★2は短信・伝聞・一社のみ、★1は裏取り前提の未確認情報です。

番組本体

出演者の経歴

関連(当サイト既報)

今回いちばん弱いところ

引用はYouTubeの自動文字起こしから取っており、明らかな変換ミスだけを直しています。細部の言い回しには誤差がある可能性があります。公式動画は全編が公開されているので、読者が自分で確認できる状態にはあります。

話者の割り当ては、自動文字起こしに話者情報がないため、番組が公表しているキャストと前後の文脈、そして映像での確認によって判断しています。

逆に、この記事でいちばん動かない部分は引用そのものです。まとめサイトの切り抜きではなく、番組が公開している本編から取っています。誰でも同じものを再生して確認できます。

編集者K

速報より本質。話題のニュースの裏側を裏取りして届ける、一日の最後に読むニュースサイトです。