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「失われた28年を総理と一緒に取り戻そう」──そう言ったのは、1982年に大蔵省へ入った財務大臣だった

関心度 ★★★★☆ 信頼度 ★★★★☆ 賛否度 ★★★★☆

「今回この一連の政策で失われた28年を総理と一緒に取り戻そうと思っております」

7月28日の閣議後記者会見。食料品の消費税減税について「総理と思いは一緒か」と問われた片山さつき財務大臣の答えです。

2026年から28年さかのぼると1998年。日本長期信用銀行が国有化され、物価が下がりはじめた年です。

その28年、財政をあずかっていたのは大蔵省であり、財務省でした。そして片山氏は1982年に大蔵省へ入った、その役所の出身者です。

財務省の内側で28年を過ごした人が、その28年を「失われた」と呼び、総理と一緒に取り戻すと言っている。

この日の会見は質問が4本だけでした。支持率の急落、対米投資5500億ドル、概算要求基準、そして消費税。4問とも、同じ方向を向いています。

まず確認したいこと──財務大臣は、減税に同意している

この会見をめぐって、誤読しやすい部分があります。片山氏が最後に「これ以上は控えたい」と言っている点です。

答え全体を読むと、これは距離を置いた発言ではありません。

もともと3回目の総裁選で総理の座に就かれたわけですが、総理になりたいから総理になる人ではなくて、実現したい政策が山ほどあるので総理になった人ですから、やはり非常に政策オリエンティッドな方なので、その中には今般の消費税減税云々ということだけではなくて、経済を徹底的に活性化して投資をブーストさせて成長のボタンを押し続けるということについて資することだったら何でもやるという意味では私は全く同じでございます

「私は全く同じでございます」。財務大臣が、消費税減税を含む高市路線への同意をはっきり述べています。

そして続けて「失われた28年を総理と一緒に取り戻そう」。同意どころか、同志としての表明です。

「控えたい」の理由は、答えのなかに書いてある

問題の一文はこうです。

その意味では非常にきちっとその路線は昨日の会見でも言われたんじゃないかと思いますが、まだ一連のいろいろなことがあるので、はっきりされたことはまだおっしゃっていないという段階なので私の方からも、今後のプロセスが、小野寺議長のプロセスとか党内のプロセスがあるので、これ以上は控えたいと思います。

「控えたい」の理由は明示されています。総理がまだ正式に表明していない段階だからです。

首相が言っていないことを財務大臣が先に言えば、それは越権になります。7月28日の午前中はまだその段階でした。

そして2日後の7月30日、高市首相が役員会で正式に表明します。片山氏が「まだおっしゃっていない」と言った内容が、そのとおりの形で出てきました。控えていたのは、順番を守っていたということです。

これは、財務大臣としてはかなり踏み込んでいる

財務省は長く、減税に慎重な役所として知られてきました。麻生太郎氏も財務大臣当時は消費税減税に否定的でした。

その職にある人物が、正式表明の2日前に「私は全く同じ」と言い、「28年を一緒に取り戻す」と言っている。むしろ前に出ているほうです。

4問すべてが、同じ方向を向いている

会見全体を並べると、それがはっきりします。

テーマ 答えの核 向き
1 内閣支持率の急落 「成し遂げたい大きな政策があるということで旗揚げされた方」/8万円超の支援は打っている 総理を全面擁護
2 対米投資5500億ドル 「米銀さんですからドル調達に問題は全くない」 不安を打ち消す
3 概算要求基準 「何々の枠があるからできないということがない」「戦後ほとんど初めて」 枠を自ら外す
4 食料品の消費税減税 「私は全く同じ」「失われた28年を総理と一緒に取り戻そう」 同志として同意

財政を締める側の発言が、1つもありません。4問とも、積極財政と成長路線を押しています。

順に見ていきます。

1問目|支持率が落ちても、守りに入っていない

記者の質問は「大臣は原因をどのように分析して今後どう対処していくべきとお考えでしょうか」でした。

7月の世論調査は厳しい数字でした。読売が前回から12ポイント減の57%、日経が10ポイント減の58%、共同が発足以来最低の53.7%、時事が初めて5割を割って49.0%、毎日は41%で不支持が支持を上回りました。8社すべてが政権発足後最低です。

ここで片山氏は、路線の修正を口にしていません。

総理ご自身が数字に一喜一憂せず謙虚に真摯に国家国民のためにお仕事をしていくとおっしゃっていますから、まさに謙虚に丁寧に、何か成し遂げたい大きな政策があるということで高市総理は総裁選に旗揚げされた方ですから、そういうことで進むということでよろしいんじゃないかと思っております。

「そういうことで進むということでよろしいんじゃないか」。このまま行けばいい、と言っています。

そのあとに数字を並べている

続けて片山氏は、対策の中身を具体的に挙げました。夫婦2人の1世帯で8万円を超える支援。3万円から6万円の減税、子どものいる世帯への2万円、3千円以上の物価高対応クーポン、燃料高騰の激変緩和措置、電気・ガス料金の値下げ、そして予備費2.5兆円。

結びは「必要な対応を行っているというふうには思っておりますので、それがきっちりと伝わるように頑張らなきゃいけない」でした。

政策は正しい、伝え方の問題だ、という診断です。ここは異論の余地があります。8社すべてで落ちているなら、伝え方だけの話とは言いにくい。

ただ、財務大臣の立場としては「支出を絞る」ではなく「もっと伝える」と答えている点が重要です。財政を締める方向には一言も振れていません。

2問目|対米投資5500億ドル──「問題は全くない」と前に出る

2問目は、実額としては今回いちばん大きい話です。

記者はこう聞いています。「邦銀のドル調達に懸念がかねてからあったと思いますが、先日財務省はSNSで第2弾の天然ガス発電施設の建設に向け外国銀行による融資を検討していると発信されました。この狙いについて教えてください」

日米関税交渉の合意にもとづく5500億ドル(約89兆円)の対米投融資。その第2弾が、米国での天然ガス火力発電施設の建設です。

財務省の一次発表がXだった

まず押さえたいのは、記者が「SNSで発信された」と質問していることです。会見や記者発表より先に、財務省の公式Xで出ていた。

文書として発表させていただいておりまして、財務省のX、これは私もリツイートしておりまして、かなり何十万人かの方に見ていただいているので、趣旨はお分かりいただいていると思いますが(後略)

財務大臣が、自分でリツイートして、閲覧数まで把握している。役所の広報がプレスリリースから直接発信に移っている実例です。

「誤解されない必要がある」

片山氏はこの発表の目的を、誤解を防ぐためだと説明しました。「日本企業が裨益する案件でないとこの550ビリオンは成り立ちません」「今までも外国銀行さんがお手伝いされるということは何度もあって」「その辺が誤解されない必要があるなと思ってステートメントをはっきり出している

「日本の金で米国のインフラを作らされている」という受け取られ方への先回りです。

そして核心がここ。

ドル調達の懸念というものが市場にあったとしたら、それはこれによって、米銀さんですからドル調達に問題は全くないことになるので、戦略的投資イニシアチブとしては着実な実施の上では重要なことであると思います。

89兆円という規模のドルを、日本の銀行だけで用意できるのかという懸念がありました。第1陣は3メガバンクが担っています。第2弾ではシティグループとJPモルガン・チェースが資金供給に加わることになりました。

「問題は全くない」という断言は、市場向けのメッセージです。ここでも守りに入っていません。

3問目|財務省が、自分の武器を手放した

3問目が、この会見でいちばん長い答えです。そして財務省の役所としての性格が変わる話でもあります。

質問は「今日の自民党の政調会議でも議論されて、中谷副大臣からもはやシーリングと呼ぶべきものではないとの発言も出ていますが」。この日、自民党の政調全体会議で令和9年度の概算要求基準が説明されていました。

補正予算依存からの脱却等の抜本的な予算編成制度改革、これは戦後ほとんど初めてのことですけれども、これも踏まえて「強く豊かな日本」投資枠、これは要求上限を設けないと(中略)今まで的なシーリングではないということは言えると思います。

シーリングは、財務省の武器だった

シーリングとは概算要求の上限です。各省庁が要求できる額に天井をかぶせる仕組みで、財務省が予算をコントロールする最大の道具でした。

それを外すと言っています。しかも「戦後ほとんど初めて」と自分で言っている。

今までそれはできなかったかもしれません。いろいろな枠がありましたから。それはないんですよ。だから何々の枠があるからできないということがないという意味では画期的なもので、成長力強化に資する予算編成になるということが示されている

「何々の枠があるからできない」——これは財務省が各省庁に対して長く使ってきた断り文句です。それを財務大臣が「もうない」と言いました。

ただし、緩めるとは言っていない

ここは正確に読む必要があります。片山氏は枠を外す代わりに、中身の審査を厳しくすると説明しています。

投資に見合うリターンを通じた成長への寄与がある予算項目なのかということ、それから民間投資の誘発効果があるのかということを問うんですが、ここまでストレートに問うたことはないので(中略)非常にチェックの目は厳しくなると思います

ここで名前が出る「若田部先生」は、若田部昌澄・早稲田大学教授。元日銀副総裁で、いわゆるリフレ派の代表格です。2025年11月に経済財政諮問会議の民間議員に入りました。

その若田部氏が「結果的には今までの数字で細々切ってあることよりも厳しくなるかもしれない」と自負している、と片山氏は紹介しています。金融緩和・積極財政の側の人物が、査定は厳しくなると言っている構図です。

片山氏自身も「どんな積極財政でも無駄は無駄ですから」と言っています。

そして、記者に監視を頼んでいる

ぜひ皆様も厳しく優しくたくさん記事にしていただけるとありがたいと思います。

金額の枠が消えるなら、チェック役は財務省からメディアと国民に移ります。この一文は、制度の設計思想そのものです。

2日後の7月30日、この基準は閣議了解されました。報道の見出しは「もはやシーリングはない」と、日経の「概算要求、大幅膨張に危惧」。片山氏の説明とは逆向きの整理です。

4問目|「失われた28年を総理と一緒に取り戻そう」

そして最後が消費税です。答えの構造は冒頭で見たとおりで、「私は全く同じ」と「失われた28年」が核になります。

「3回目の総裁選で」から入っている

片山氏の説明は「3回目の総裁選で総理の座に就かれた」という事実から始まります。

高市氏は2回落ちています。2024年の総裁選では、決選投票で石破茂氏に敗れました。

普通に考えれば、2回落ちて3回目で勝った人こそ「総理になりたかった人」に見えます。片山氏はそこを逆に取りました。2回落ちてもやめなかったのは、椅子が欲しかったからではなく、やりたいことがあったからだ、という読み方です。

「28年」という数え方

そのうえで出てくるのが、この一文です。

今回この一連の政策で失われた28年を総理と一緒に取り戻そうと思っております。

よく使われるのは「失われた30年」です。片山氏は28年と言いました。2026年から28年さかのぼると1998年になります。

1997年に北海道拓殖銀行と山一證券が破綻し、1998年に日本長期信用銀行が国有化されました。物価が下がりはじめ、企業が投資を止めた時期の入口です。

そして高市首相も、7月27日の会見で同じ診断をしています。

我が国の「潜在成長率」は主要先進国と比べて低迷していますが、日本の力が失われたわけではございません。「日本人の底力」を信じ、大きく育て、日本の成長へ結びつける「投資」や、「国としての意思」が十分ではなかったのです。

失われたのは日本の力ではなく、投資する意思のほうだった。財務大臣と首相が、同じ見立てを共有しています。

大蔵省出身の財務大臣が、財務省の28年を否定している

ここが、この会見のいちばん面白いところだと思います。

片山さつき氏は1982年に大蔵省へ入省しました。女性として初めて主計官に就き、担当は防衛分野でした。2005年の郵政選挙で国会議員になり、2025年10月に女性として史上初の財務大臣になっています。

兼務は内閣府特命担当大臣(金融)と、租税特別措置・補助金見直し担当です。

28年を作った側にいた

1998年から2026年まで、財政運営を担ってきたのは大蔵省・財務省です。緊縮、増税、シーリング、補正予算での帳尻合わせ。片山氏はその内側にいました。

その人が、こう言っています。

28年について
「失われた28年を総理と一緒に取り戻そう」
シーリングについて
「何々の枠があるからできないということがない」
補正予算依存について
「戦後ほとんど初めてのこと」
消費税減税について
「私は全く同じでございます」

役所の出身者が役所の路線を守るなら、これは全部逆になるはずです。枠は必要だ、財源が先だ、慎重に検討する。そう言うのが従来型の財務大臣でした。

だから高市早苗はこの人を選んだ、とも読める

財務省出身者を財務大臣に据えることには、二通りの意味があります。役所に取り込まれるか、役所を内側から動かせるか。

兼務が「租税特別措置・補助金見直し担当」であることは、後者を狙った配置に見えます。租特と補助金は、財務省が長く抱えてきた領域です。そこを触らせるために、中を知っている人を置いた。

ここは評価が割れると思います。看板だけで実態は変わらないという見方もできますし、内側を知る人でないと動かせないという見方もできます。

判定は、令和9年度予算が出てくればできます。「強く豊かな日本」投資枠に何が乗り、何が落とされたかを見ればいい。片山氏自身が「厳しく優しくたくさん記事にしてほしい」と言っているのは、そういうことだと思います。

同じ日の午後、高市早苗は麻生太郎に会っている

片山氏の会見と同じ7月28日、高市首相は自民党本部で麻生太郎副総裁、鈴木俊一幹事長と約30分間会談しました。役員会のあとです。

議題は、食料品の消費税を2027年4月から2年間限定で1%に引き下げる案。読売新聞によれば、麻生氏の返答はこうでした。

意見であれば反対するが、首相として決めたのであれば反対はしない

確度について この会談は非公開で、発言は読売新聞が伝えたものです。当サイトは音声・映像を確認していません。他社(日経・時事・西日本)は会談の事実と「決断する」という首相の姿勢は報じていますが、この発言そのものは報じていないため、現時点では一社のみの情報として扱ってください。

麻生氏は2025年9月、麻生派の会合で野党の消費税減税論を批判しています。名指ししたのは立憲民主党の野田佳彦代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、日本維新の会の前原誠司前共同代表でした。財務大臣だった2020年3月にも、消費税減税に否定的でした。

その麻生氏が「反対はしない」と言った。線を引いているのはまだ意見の段階か、首相として決めたあとかです。議論してよい期限を、決定の瞬間に置いている。

財務大臣が同意し、党の重鎮が反対しない。この2つが揃った日が7月28日でした。

決まったのは「1%」であって、「ゼロ」ではない

対象
飲食料品
現在の軽減税率8%が対象
税率
8% → 1%
7ポイントの引き下げ
期間
2年間
2027年4月〜2029年3月
給付
実質ゼロ化
中低所得者に1%相当を給付
時期 税率 動き
1989年4月 3% 消費税を導入
1997年4月 5% 引き上げ
2014年4月 8% 引き上げ
2019年10月 10%
(食料品8%)
引き上げと軽減税率の導入
2027年4月 食料品1% 導入以来はじめての引き下げ

1989年の導入から37年、消費税は上がり続けてきました。下がるのはこれが初めてです。

党内には慎重論も残りました。7月28日の党税調と社会保障制度調査会の合同会議では「仮にマーケットが厳しい反応をすると、円が下がり物価高を招きかねない」という意見が出ています。国民民主党の玉木雄一郎代表は「経済に悪影響が大きい」として1%案に反対しました。

そして石破茂前首相は表明の2日後、鳥取県倉吉市の会合で「代わりの財源を示さなければこれほど無責任なことはない」と述べ、自身の「減税よりも給付」は今も間違っていないと強調しています。

7月28日という一日に、何が詰め込まれていたか

日付 出来事 内容
7月25日 特別国会が閉会 会期158日。政府提出法案64本を全て成立(戦後4回目)
7月27日 高市首相が記者会見 「公約実現への歩みを止めることは無い」「反省点というのは特にございません」
7月28日 午前 片山財務相の閣議後会見 質問4本。「私は全く同じ」「失われた28年を総理と一緒に取り戻そう」
7月28日 自民党役員会 高市首相「決めるべき時に決める」
7月28日 高市・麻生・鈴木の会談 党本部で約30分。麻生氏「首相として決めたのであれば反対はしない」(読売新聞)
7月28日 政調全体会議 令和9年度概算要求基準を説明。「強く豊かな日本」投資枠は要求上限なし
7月28日 16:27 熊本で震度7 M7.1、深さ16km。能登半島地震以来2年6か月ぶりの震度7
7月30日 高市首相が役員会で表明 来年4月から2年間1%。「私が2年で確実に戻す」/同日、概算要求基準を閣議了解

7月28日の発言を図にすると

高市早苗 首相食料品1%を決断(7/30に正式表明)7/28 会談30分麻生太郎 副総裁元財務相/25年9月は減税論を批判「決めたのであれば反対はしない」鈴木俊一 幹事長元財務相/麻生氏の義弟・同席7/28 同じ日の朝の会見片山さつき 財務相1982年 大蔵省入省/減税に同意「私は全く同じでございます」同じ日、概算要求基準投資枠のシーリングを撤廃7/30 役員会で正式表明2027年4月から2年間、食料品1%

左が党内の了解、右が役所側の了解です。同じ日に両方が揃っています。

16時27分、熊本で震度7

7月28日16時27分、熊本県熊本地方でマグニチュード7.1、深さ16kmの地震が発生しました。宇城市と氷川町で震度7。2024年1月1日の能登半島地震以来、2年6か月ぶりです。

7月30日時点で、イオンモール熊本では7人、日本製紙八代工場では8人が死亡。熊本県の集計では災害関連調査中を含む死者は34人に達しました。

災害報道が優先されるのは当然です。ただ結果として、消費税が37年で初めて下がるという決定と、その日に財務大臣が何を言ったのかは、ほとんど掘られないまま流れました。

「レジの壁」は、どこへ行ったのか

この決定には、越えられた障壁もあります。

高市首相自身が、かつて消費税減税は難しいと説明していた時期がありました。理由として挙げられていたのが、通称「レジの壁」です。日本の小売店のレジシステムは税率変更への対応が遅れており、在庫管理とも連動するため「1年もしくはそれ以上かかる」という説明でした。

今回のスケジュールは、方針表明が2026年7月30日、実施が2027年4月1日。準備期間は8か月です。

東京新聞は「レジの壁はどこに消えたのか」という記事で疑問を投げかけました。フリーライターの橋本愛喜氏は同紙で、「レジ対応が難しいから『できない』とした政策が、衆院解散をきっかけに可能になる理屈が分からない」と指摘しています。

擁護の側からは、やると決めれば動くものだったという読み方ができます。批判の側からは、説明が変わったこと自体が問題だという読み方になります。

いずれにせよ、事業者側の準備はこれから走ります。レジの改修費用を誰が負担するのか、間に合わなかった店舗をどう扱うのか。ここは追いかける価値のある宿題です。

判定は、令和9年度予算で出る

7月30日、党の役員会で方針を表明した高市首相は「私が2年で確実に戻す」と言いました。2029年3月まで自分が責任を持つ、という言い方です。

そして片山さつき氏は、その2日前にこう言っていました。

「私は全く同じでございます」
「失われた28年を総理と一緒に取り戻そうと思っております」
「何々の枠があるからできないということがない」
「どんな積極財政でも無駄は無駄です」

1982年に大蔵省へ入った財務官僚が、財務省が作ってきた28年を否定し、財務省最大の道具であるシーリングを外し、消費税減税に同意した。この会見は、そういう会見でした。

言葉が本物かどうかは、数字で出る

ここから先は、言葉ではなく結果の話になります。

令和9年度予算で、上限なしの「強く豊かな日本」投資枠に何が乗り、何が落とされるか。片山氏が言った「投資に見合うリターン」「民間投資の誘発効果」という基準が、実際に使われるか。

そして2027年4月から2029年3月までの2年間で、食料品の税率1%が家計にどう出るか。

片山氏は記者たちに「ぜひ皆様も厳しく優しくたくさん記事にしていただけるとありがたい」と頼みました。枠を外した以上、見張るのは国民とメディアの側だということです。その依頼は、そのまま受け取っていいと思います。

この記事で使った資料と、その確度

当サイトは資料の確度を5段階で表示しています。★5は当事者の記録そのもの、★4は自社取材で数字の出所が追えるもの、★3は事実は取れるが論調が入るもの、★2は短信・伝聞・一社のみ、★1は裏取り前提の未確認情報です。

低いから使わないという意味ではありません。★2の資料でも、何に使ったかを限定すれば材料になります。そこも書きます。

一次情報

確度 媒体 資料 評価の理由
★5 財務省 片山財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要(令和8年7月28日・質疑応答全文) 本人の発言そのもの。省略なしの全文。この記事の骨格はここから
★5 首相官邸 高市内閣総理大臣記者会見(令和8年7月27日・全文) 冒頭発言と質疑の全文。法案64本・316議席・「日本の力が失われたわけではない」は全てここ
★5 内閣府 「強く豊かな日本」投資枠の創設など予算編成改革の具体化に向けて 片山議員提出資料(令和8年6月25日) 片山大臣が会議に出した文書そのもの。「補正予算依存からの脱却」の原文
★4 自由民主党 補正予算依存の脱却が明確化 令和9年度概算要求の方針について説明受ける 党の公式発表。自党に有利な整理が入る前提で読む必要はあるが、会議の日付と出席者は確実
★5 気象庁データ
(日本気象協会)
地震情報 2026年07月28日 16時27分頃発生 最大震度7 震源地:熊本県熊本地方 観測値。発生時刻・規模・震度は解釈の余地がない

報道

確度 媒体 資料 評価の理由
★4 日本経済新聞 高市首相、消費税減税「決断する」 自民・麻生副総裁らと会談 経済記事は数字の裏取りが堅く、訂正も出す。会談の事実関係の基準に使った
★4 日本経済新聞 日本の対米巨額投資、シティとJPモルガン参加 懸案のドル調達前進 金融の当事者取材。銀行名が特定されている
★4 日本経済新聞 食品消費税、27年4月から1% 高市首相「私が2年で確実に戻す」 制度の中身(税率・期間・給付)の記述が具体的
★4 日本経済新聞 高市内閣支持率、報道各社で下落相次ぐ 7月世論調査 他社の数字を横並びで集計。自社調査だけを引くより検証しやすい
★4 日本経済新聞 自民・麻生氏、消費減税論を批判 立民・野田氏や国民・玉木氏ら名指し(2025年9月) 公開の派閥会合。名指しされた人物が特定されている
★4 日本経済新聞 麻生財務相、消費税減税に否定的 現金給付にも慎重(2020年3月) 当時の記者会見ベース。麻生氏の一貫性を見るための背景
★3 日本経済新聞 概算要求、大幅膨張に危惧 財務相「もはやシーリングはない」 見出しの「危惧」は評価であって事実ではない。片山大臣の説明とは逆向きの整理として、対比のために引用
★4 NHK 高市首相 食料品消費税 1%の方針「国民の理解得ていく」 速報の正確さは高い。ただし本文が短く、背景の説明は薄い
★4 ロイター 「外国銀行による融資検討」、財務省が認める 対米投融資第2弾で 金融の一次取材。ただしYahoo!転載しか読めず、原文は未確認
★2 読売新聞 高市首相、食品の消費税「1%」決断・4月から2年限定…麻生氏に方針伝達 麻生氏の発言はこの一社のみ。非公開の会談で、出席者を通じた伝聞。当サイトは原文の該当箇所を確認できていない。本文に確度注記を置いた
★3 時事通信 消費減税へ「決断」強調 高市首相、麻生・鈴木氏と会談 会談の事実と首相の姿勢のみ。短信で、発言の引用はない
★3 日本海テレビ 「代わりの財源を示さなければこれほど無責任なことはない」石破前首相 高市首相の『消費税率1%』方針を批判 鳥取県倉吉市 地元局が現地の講演を直接取材。同じ発言をテレビ朝日系も報じており、複数社で一致している
★3 東京新聞 「レジの壁」はどこに消えたのか 高市首相が挙げていた「消費税減税が困難な理由」 高市首相の過去の説明という事実部分は使える。ただし論調は明確に批判寄りで、識者コメントも一方向。反対側の材料として引用
★2 共同通信 玉木氏、消費税1%案反対 「経済に悪影響大きい」 配信短信で、発言の前後が削られている。玉木氏が反対したという事実のみに使い、理由の解釈には使っていない
★4 日本経済新聞 経済財政諮問会議、民間議員に若田部昌澄・永浜利広・南場智子・筒井義信氏 人事の事実報道。若田部氏の経歴と就任時期の確認に使った

今回いちばん弱いところ

麻生太郎氏の発言です。非公開の会談で、報じているのは読売新聞の一社のみ。当サイトは音声も映像も原文も確認できていません。会談があったこと自体は日経・時事・西日本新聞が一致して報じており、そこは動きません。

逆に、この記事のいちばん強い部分は片山財務大臣の会見と高市首相の会見です。どちらも省略なしの全文が公開されており、誰でも同じものを読めます。引用した箇所はすべてそこから取っています。

編集者K

速報より本質。話題のニュースの裏側を裏取りして届ける、一日の最後に読むニュースサイトです。