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熊本で震度7、その1時間半後に北九州でビアパーティー──会費1万5000円・お笑い芸人つき。福岡県議団会長は「正直、やってよかったと思っている」

関心度 ★★★★☆ 信頼度 ★★★★☆ 賛否度 ★★★★☆


2026年7月28日16時27分、熊本で最大震度7の地震が起きた。

その1時間33分後の18時。北九州市の小倉駅前にあるホテルで、政治資金パーティーが始まった。券には「ビアパーティー」と書かれている。会費は食事付きで1万5000円。出席は約600人。お笑い芸人による余興もあった。

開いたのは松尾統章(まつお・とうしょう)自民党福岡県議団会長である。いま議長・副議長ポストをめぐる金銭授受疑惑で揺れている、その会派のトップだ。

その前日、高市早苗首相が記者会見で、この疑惑に初めて言及していた。「まずは自民党福岡県連でしっかり事実確認することが重要だ」

そして松尾会長は、取材にこう答えている。

「正直、やってよかったと思っている」

この記事は、その日に何が起きていたのかを時刻で並べ、松尾会長が何を説明したのかを本人の言葉で確かめる。そして、いちばん引っかかる一点にたどり着く。

まず、時刻を並べる

松尾会長は「地震の情報がほとんどない状況だった」と説明している。実際にどうだったのかを、記録で確認する。

時刻 起きていたこと
16:27 熊本県熊本地方でM7.1の地震。宇城市と氷川町で最大震度7。福岡県内でも柳川市・大川市で震度5弱。会場のある北九州市小倉北区でも震度3
16:29 気象庁が有明・八代海に津波注意報。地震の2分後
16:36 気象情報会社が「熊本県で震度7の地震発生」を配信。各地の震度も公表
17:00 この時点で震度1以上の地震がすでに8回発生(震度5弱1回、震度4が2回、震度3が3回、震度2が2回)/会場が開く
17:30 気象庁が報道発表。震度7、M7.1、津波注意報、長周期地震動階級4を公表。「1週間程度、最大震度7程度の地震に注意」
18:00 ビアパーティー開始(地震から1時間33分後、気象庁発表の30分後)
※地震関連は気象庁の報道発表資料および各地の震度観測値による。

「情報がなかった」と言えるのは、どの時点までか

松尾会長の説明を、本人の言葉で引く。

地震があったのが午後4時半ぐらいだったが、その時点で受付が始まっていた状況で、会場を開けたのが午後5時だったと聞いている。その時点でもう人が中に入っていった。私も速報で「震度7」ということを聞いて、それ以外の情報がない中で、取りやめようという判断の状況ではなかった

── 松尾統章会長(テレビ西日本の一問一答より)

ここは公平に見たい。16時27分の直後、数分の段階では、確かに詳細な情報はない。受付がすでに始まっていたという事情も、事実としてはある。

だが本人が「震度7」は聞いていたと述べている。震度7は、気象庁の震度階級の最上位である。それ以上の揺れを表す数値は存在しない。

そして18時までに1時間半以上あり、その間に津波注意報が出て、余震が8回起き、気象庁の記者発表があった。

会場のある小倉北区でも、震度3を観測している

もう一つ、事実として書いておきたいことがある。

この地震で、北九州市小倉北区大手町は震度3を観測している。会場のリーガロイヤルホテル小倉は、小倉駅前にある。

「情報が取れなかった」という説明はありうる。だが会場そのものが揺れていたということは、記録に残っている。

2026年7月28日の熊本地震発生からビアパーティー開始までの時系列16時27分の地震発生から18時のパーティー開始までに、津波注意報、余震、気象庁の報道発表が挟まっていたことを示した図7月28日 地震発生から、パーティー開始までの1時間33分16:27震度7M7.116:29津波注意報有明・八代海16:36震度7を報道各地の震度も公表17:00余震すでに8回/会場が開く17:30気象庁が報道発表「1週間は震度7に注意」18:00パーティー開始会費1万5000円・約600人会場のある北九州市小倉北区でも、震度3を観測している※前日の7月27日、高市首相が記者会見でこの疑惑に初めて言及していた。※時刻は気象庁の報道発表資料および報道による。会場の開場時刻は松尾氏本人の説明。※この図は時刻の記録を並べたもので、開催判断の当否を断定するものではない。

松尾会長は、こう説明している

テレビ西日本が7月31日に一問一答を掲載している。長時間の取材に本人が応じたもので、この件でいちばん詳しい記録である。要点を追う。

「県政報告」という形に変えた

まず、なぜ開いたのか。

いろいろ悩みましたが報道が過熱する中で、支援者の方々にも相談して「自分の口でしっかりと多くの方々に今、あっていることを説明すべきではないか」と言われたのが決め手になり、私がきちんと皆さま方に説明をしていこうという覚悟で、県政報告という形で行った

── 松尾統章会長

式次第も変えたという。例年は後援会長の挨拶と来賓の挨拶があるが、今回はそれをなくし、松尾氏が30分にわたって県政報告をした。例年の県政報告は10分程度だという。

ただし、来賓の挨拶をなくしたのは地震を受けての対応かと問われると、こう答えている。「違う。最初からそれは決めていた

会費は集めた。返金は検討していない

次に、金の扱いである。

会費を集めたかと聞かれ、松尾氏は「はい」と答えている。県政報告なのだから返金を検討しなかったのかという問いには、こうだった。

それはしていない。もともとこの政治資金パーティーを私はビアパーティーという形でやっていて、その形の中でやるわけなので、方向性はそのままと思っている

── 松尾統章会長

松尾氏本人は酒を飲まなかったが、参加者にはビールが提供された。

被災地への寄付については「そういったことは今後また考えていきたい」と述べている。

お笑い芸人については「必要じゃない」

余興について問われた場面が、この一問一答でいちばん率直だった。

そう言われたら「必要じゃない」と言うが、先ほどお話ししたように開会直前で情報のない中で、私が重きを置いたのは初めて自分で説明をする覚悟が28日だったということ。お笑いは乾杯後の余興の中でのプログラムで、私も今になったら不適切だなと思わなくもないが、当時はバタバタした中での動きだったので何とも言えない

── 松尾統章会長

それでも「やってよかった」

開催してよかったと思うか、という問いへの答えがこれである。

正直、やってよかったと思っている。SNSでも確かに多くの方々の声を聞けるが、やはり肌感覚で、私の説明の後にいろんな声を聞けたのは「気づき」もあったし、今後の政治活動について私自身の覚悟ができた

── 松尾統章会長

「多くは『頑張れ』という言葉もいただいた」とも語っている。

なお開催に否定的な声もあったことは認めており、「そこまで多くはなかったが『やめたほうがいいんじゃないか』という声もあった。それもあって私自身が1週間ほど前、開催を悩んだ」と述べている。

つまり地震とは関係なく、1週間前から開催の是非は問題になっていた。

いちばん引っかかるのは、ここである

ここまでは、多くの報道が伝えている内容だ。だが同じ一問一答のなかに、あまり注目されていない一節がある。

私はこの一連の騒動について、自分のSNSでは一度も取り上げていなかった。(中略)私自身がSNSも含めて一連の報道について皆さんに報告したのは、28日のビアパーティーが初めてだった

── 松尾統章会長

本人が認めている。

金銭授受の疑惑が報じられ始めてから、松尾会長は一度も説明していなかった。SNSでも、それ以外の場でも。

そして半年ぶりに初めて口を開いた場が、会費1万5000円のパーティーだった。

説明は、無料でもできる

ここが問題の核心だと思う。

記者会見を開けば、費用はかからない。SNSに文章を投稿するのも無料である。県議会には議場があり、会派には控室がある。説明する場は、いくらでもある。

それを半年間しなかった人が、金を集める会で初めて説明した。しかも返金はしない。

松尾氏は「一方通行になってしまう」ため、意見をもらう場が必要だったと説明している。その理屈は理解できる。

だが県民から意見をもらう場に、1万5000円の入場料が要るのか。払える人の意見だけが集まる場所で聞いた「頑張れ」は、県民の声と言えるのか。

説明した内容も、まだ公開されていない

さらに、この一問一答には続きがある。

松尾氏は、一連の問題には4つの柱があると説明している。海外視察、県庁の部課長会、報道規制、そして金銭授受である。

そして28日のパーティーでは、時間の関係で海外視察と金銭授受の2つについて説明したという。

ではどういう説明をしたのか。取材でそう問われた松尾氏の答えは、こうだった。

「それはまたSNSで今から上げていく」

つまり1万5000円を払った人だけが、その説明をすでに聞いている。払っていない県民は、まだ聞いていない。

「一連の問題」とは何か

ここで、松尾会長が説明しようとしていた問題そのものを整理しておく。福岡県議会の、議長・副議長ポストをめぐる金銭授受疑惑である。

人物 証言・疑惑の内容 本人の対応
吉松源昭
元議長
7月7日に会見。議長就任前、県議団幹部の求めに応じて約2000万円を支払ったと証言。他会派への根回しのゴルフ代などの名目。当時の副議長と合わせると約2840万円 告発する側
中尾正幸
前副議長
吉松氏に1000万円を求めたとされる音声。鑑定で「同一人物の可能性が高い」(99.99%以上一致)。別の元副議長には「副議長就任に500万円いります」と求めたとされる 議員辞職
蔵内勇夫
議長
副議長経験者が7月17日、「蔵内議長に茶封筒に入れた現金500万円を手渡した」と証言 「一切ありません」
と否定
江藤秀之
元副議長
7月27日に会見。「中尾氏から副議長就任に際して500万円いると言われ、慣例だと思い手渡した」 支払ったと証言

吉松氏の一言が、この問題の広がりを示している

告発した吉松源昭・元議長は、こう述べている。

おそらくここ15年ほどの議長、副議長の経験者は、大小はあっても金銭を要求されているはず

── 吉松源昭・元議長

個々の事件ではなく、慣例だったという主張である。江藤氏も「慣例だと思い」と述べている。

当サイトはこの問題を7月10日から追っており、これが5本目の記事になる。

前日、首相が言った。翌日、知事が言った

ここからが、このパーティーが単なる不謹慎の話で終わらない理由である。

7月27日──高市首相

パーティーの前日、高市早苗首相が記者会見でこの疑惑に初めて言及した。

まずは(自民党)福岡県連でしっかり事実確認することが重要だ。党本部として対応すべきことがあれば、必要な対応を検討してほしい

── 高市早苗首相(2026年7月27日の記者会見)

その4日前の7月23日には、渦中の蔵内議長が高市首相と懇談したことも報じられている。

首相が「事実確認を」と求めた翌日に、当の県議団会長が有料のパーティーを開いた。これが並びである。

7月31日──服部知事

そして開催の3日後、福岡県の服部誠太郎知事がこう述べた。

このタイミングでの開催は不適切だ

── 服部誠太郎・福岡県知事

この批判に対する松尾氏の答えは「そういう意見もあると思う」だった。

知事は、待つのをやめた

服部知事の動きは、批判の一言では終わっていない。

7月30日、知事は県議会の海外視察についても県の第三者委員会で調査する方針を打ち出した。報じられている知事の言葉は「もう待てない」である。

県議会側は自分たちで調査する立場を取っており、知事はそれとは別に動くことを選んだ。執行部が議会の調査を待たずに独自調査に入るのは、通常の関係ではない。

それでも、調査は始まっていない

一方、県議会側の第三者調査はどうか。

蔵内議長は7月8日に外部専門家による調査を表明していた。だが県弁護士会による調査者の選定が、早くとも8月上旬という段階である。

疑惑が報じられてから、調査する人を選ぶところまでで1か月が経っている。

蔵内議長は「泥仕合みたいになっていかがなものか」とも述べている。

県民は、どう見ているか

テレビ西日本が7月31日、県民1000人を対象にした独自の世論調査を公表している。

質問 結果
金銭授受疑惑で「吉松氏を信じる 68.8%
「第三者委員会の設置が必要」 46.7%
パーティー券・海外活動は知事にも「大きな責任がある」 42.3%
※テレビ西日本の独自世論調査(2026年7月31日公表・県民1000人)。

約7割が、告発した側を信じている。否定している側ではない。

そしてもう一つ。来年4月の県議選に向けて、蔵内議長の地元である筑後選挙区に、新人が立候補を表明した。その理由は「地域のマイナスになっている」だった。

説明の場が有料だったことが、この問題のすべてを表している

ここからは、この記事の意見になる。

震度7の当日にパーティーを開いたこと自体は、批判されて当然だと思う。だがそこだけを責めても、たぶん本質に届かない。

この件でいちばん重いのは、説明の場が有料だったことである。

順番が逆になっている

整理すると、こういう順番になる。

疑惑が報じられて半年。松尾会長は一度も説明しなかった。首相が「事実確認を」と言った。その翌日、震度7の1時間半後に、会費1万5000円の会を開いた。そこで初めて説明した。返金はしない。その説明の中身は、まだ公開されていない。

県民に説明する義務は、県議団の会長という立場に付いてくるものである。その義務を果たす場を、収入の機会にした。

松尾氏は「覚悟」という言葉を何度も使っている。実際、批判を承知で開いたのだろうし、中傷に苦しんだという言葉も本心だと思う。

だが覚悟の見せ方として、金を集める会を選んだ。そこが、この人と県民のあいだにある距離だと思う。

そして、疑惑の中身も「金の慣例」だった

この記事を書いていて、いちばん引っかかったのはここである。

問題になっているのは、ポストを得るために金を渡す慣例があったのではないか、という疑惑だ。江藤氏は「慣例だと思い」500万円を渡したと証言している。吉松氏は「15年ほどの議長、副議長の経験者は、大小はあっても金銭を要求されているはず」と述べている。

その疑惑を説明する場が、また金を集める会だった。

もちろん政治資金パーティーは合法である。松尾氏の会も毎年開かれてきたもので、今回だけ特別に開いたわけではない。そこは正確に書いておきたい。

だが「金の問題を、金を集めながら説明する」という形になっていることに、本人も周囲も違和感を持たなかったのだとすれば、それがこの県議会の空気なのだと思う。

党本部は、まだ動いていない

高市首相は「党本部として対応すべきことがあれば、必要な対応を検討してほしい」と述べた。条件つきの言い方である。

その翌日にこのパーティーが開かれ、知事が「不適切」と言い、県議団の内部から辞職を求める声が出て、県民の約7割が告発者を信じている。

それでも第三者調査は、調査する人を選ぶ段階にある。

あなたは、県議団の会長が説明する場に、1万5000円が必要だったと思いますか。

私は、半年黙っていた人が最初に口を開いた場所が有料だったという一点だけで、この人が誰のほうを向いているかは十分わかる気がしますね。

主要ソース

松尾会長の説明(一問一答)

地震の記録(一次資料)

金銭授受疑惑

首相・知事・県民の反応

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編集者K

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