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高市内閣の支持率は41%か、58%か──17ポイント割れた5社の数字が示す、支持率が「作られている」という現実

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高市内閣の支持率は、41%です。いや、58%です。

どちらも、2026年7月に発表された数字です。毎日新聞は41%、日本経済新聞は58%。同じ内閣を、同じ月に測って、17ポイントも違う結果が並びました。

7月の半月あまりで、主要各社の調査が次々と出そろいました。時事通信49.0%、ANN(テレビ朝日)49.2%、読売新聞57%、日経58%、そして毎日41%。

ここで、いったん立ち止まってほしいのです。

支持率とは、体温計の数字のようなものだと思われています。測れば出てくる、客観的な事実。だからテレビは「支持率41%」と、まるで気温を伝えるように読み上げます。

けれど、同じ人の体温を5つの体温計で測って、36度と41度が出たとしたら。あなたはどう思うでしょうか。体温を疑うより先に、体温計を疑うはずです。

この記事の結論を、先に書きます。

内閣支持率という数字は、客観的な事実ではありません。各社が自分で選んだ方式と設問から生まれる「作られた数字」です。

そう言い切れる根拠は四つあります。誰も監査していないこと。過去に本当に架空データが作られ、14回分の調査が取り消された事件があること。数字を動かすレバーを、各社が自分で握っていること。そして、いまや半分以上の人が調査に答えていないこと。

17ポイントというばらつきは、その何よりの証拠です。順に、証拠を並べていきます。


同じ内閣を測って、41%と58%が並んだ

まず、7月に出た数字を1枚の表にまとめます。この表が、この記事のいちばんの土台です。

見てほしいのは、支持率の欄の開き方です。同じ月の、同じ内閣の数字とは思えないほど散らばっています。

調査主体(方式) 支持率
(前月比)
不支持率
(前月比)
調査日 その回のポイント
毎日新聞(ネット・dサーベイ) 41%(−10) 44%(+9) 7/18〜19 不支持が支持を初めて逆転。発足後最低
時事通信(個別面接) 49.0%(−5.3) 25.2% 7/10〜13 発足後最低。「わからない」が25.7%
ANN・テレビ朝日(電話RDD) 49.2%(−10.9) 34.8%(+11.8) 7/18〜19 初の5割切り。不支持は過去最高
読売新聞・NNN(電話RDD) 57%(−12) 34%(+13) 7/24〜26 発足後最低。首相の説明「不十分」62%
日経・テレ東(電話RDD) 58%(−10) 37%(+10) 7/24〜26 発足以来初の50%台。無党派で不支持51%
各社発表より作成。前月比は各社の前回調査との差。時事の不支持は「支持しない」の値で、ほかに「わからない」が25.7%ある。このほか共同通信53%・NHK58%も、いずれも前回から下落して報じられた。

いちばん上と、いちばん下を見比べてください。毎日の41%と日経の58%。その差は17ポイントです。

この17ポイントが、どれほど大きいか。毎日の数字なら「支持する人より、支えない人のほうが多い内閣」。日経の数字なら「まだ6割近くに支持されている内閣」。まるで別の国の、別の政権の話に聞こえます。

ところが、どちらも嘘ではありません。どちらの社も、公表された手順どおりに調査を行い、集計し、発表しています。不正はどこにもない。それでも17ポイント割れる。

ここに、この問題の核心があります。「正しく測っても、数字はここまで動いてしまう」ということです。

だとすれば、「支持率41%」という数字が意味しているのは、国民の41%が支持しているという事実ではありません。「毎日新聞のやり方で測ったら41%になった」という、それだけのことです。日経のやり方で測れば58%になる。物差しが変われば、答えも変わる。

私たちはこの数字を、体温や気温と同じ「客観的な事実」として受け取ってきました。テレビも新聞も、そういう顔で読み上げます。けれど実態は、測り方しだいで17ポイントも動く、きわめて人工的な数値なのです。

では、何がその17ポイントを生んでいるのか。次章から、数字を動かしている「レバー」の正体を一つずつ見ていきます。


数字を動かす「レバー」は、各社が握っている

17ポイントの正体は、「聞き方」の違いです。世論調査は、誰に・どうやって・どう尋ねるかで、出てくる答えが変わります。

そして重要なのは、その「聞き方」を決めているのが、報道各社自身だということです。方式も、設問の言葉づかいも、いつ調査するかも、すべて社の裁量で決まります。数字を動かすレバーは、測る側の手の中にあるのです。

レバーは大きく四つあります。調査の方式、設問の言い回し、回答率、そして調査した日付。ひとつずつ見ます。

① 方式──「面接」「電話」「ネット」で母集団が変わる

いちばん効くのが、調査の方式です。いま主要各社は、大きく三つのやり方に分かれています。

方式 やり方 主な社 数字に出るクセ
個別面接 調査員が家を訪ね、対面で聞く 時事通信 「わからない」が多く出やすい。支持も不支持も低めに出る
電話(RDD) 無作為の固定・携帯番号にかける 読売・日経・朝日・共同・産経・NHK・ANN 主流。人口構成に合わせ補正する社が多い
ネット スマホのパネルにメールで依頼し回答 毎日新聞(dサーベイ) 「わからない」が減り、支持・不支持がくっきり割れやすい
方式の分類は各社の調査概要より。「クセ」は各社の数値傾向から一般に指摘される特徴で、断定ではない。

時事通信だけが、いまも調査員が全国の家を訪ね歩く「個別面接」を続けています。人が目の前にいると、「どちらとも言えない」と答える人が一定数出ます。実際、時事の7月調査は支持49.0%・不支持25.2%で、残りの25.7%が「わからない」。支持も不支持も低めに出て、両者の差が開きにくいのが面接方式の特徴です。

対して毎日新聞は、いまはNTTドコモの協力で作られたネット調査「dサーベイ」です。スマホに届くアンケートに自分で答える方式では、「わからない」が減り、支持か不支持かがはっきり分かれやすい。毎日の不支持が44%まで跳ね上がったのには、この方式の性格も効いています。

残りの各社は、無作為の電話番号にかけるRDD方式。読売・日経・朝日・共同・産経・NHK、そしてANNもここです。もっとも主流ですが、同じRDDでも固定と携帯の比率、性別・年代・地域の補正のかけ方で数字は動きます。

同じRDDでも中身は各社バラバラです。産経・FNNは固定4対携帯6の比率を公表し、読売や朝日は性別・年代・地域の割合を国の人口構成に合わせて補正します。「同じ電話調査」とひとくくりにできないのが実情です。

ここで押さえておきたいのは、どの方式にも「正解」がないということです。面接には面接の、ネットにはネットの偏りがある。どれを選んでも、その方式特有のクセが数字に乗ります。

そして、どの方式を採用するかを決めているのは、各社自身です。毎日は数年前に従来の電話調査からネット方式へ切り替えました。方式を変えれば、出てくる数字の水準も変わります。つまり各社は、意図するかどうかは別として、自社の支持率がどのあたりに出るかを、方式の選択によってあらかじめ左右していることになります。

② 設問──「あえて言えば」の一言で、数字は動く

次に効くのが、質問の言い回しです。「支持しますか」と一度だけ聞く社もあれば、迷った人に「あえて言えば、どちらですか」と重ねて聞く社もあります。この一押しがあると、支持と不支持がふくらみ、「わからない」が減ります。

順番も効きます。内閣支持を尋ねる前に「物価高に困っていますか」と聞けば、不満が呼び起こされた状態で答えることになり、支持は下がりやすくなる。調査の世界でプライミング効果と呼ばれる、よく知られた現象です。

この設問文と順番を作っているのも、各社です。しかも、全設問の並びをそのまま公開している社は多くありません。読者が「どう聞かれた結果の41%なのか」を確かめる手段は、ほとんど用意されていないのが現実です。

③ 回答率──もう半分以上の人が、答えていない

そして、いちばん深刻なのが回答率です。ここは支持率の信頼性の土台にかかわります。

内閣府の代表的な世論調査を例にとると、1984年ごろまで回答率は80%を超えていました。それが1995年に75%を割り、2004年ごろに70%前後、そして近年は50%台にまで落ち込んでいます。報道各社の電話調査も、NHKで4割強、日経で4割前後という水準です。

つまり、いまや過半数の人が、調査に答えていない。支持率とは、声をかけられた人の半分以下から集めた答えを、全国民の意思として発表している数字なのです。

問題は、答えなかった人がランダムに散らばっていない疑いが強いことです。平日の昼に電話に出られる人、見知らぬ番号に応じる人、政治の質問に最後まで付き合う人――答える側には確実に偏りがあります。政治に関心の高い層ほど回答しやすい、という指摘は以前からあります。

各社はこの偏りを、性別・年代・地域の人口構成に合わせて補正します。しかし補正できるのは「属性」だけで、「政治に関心があるかどうか」の偏りは補正できません。そもそも回答率の定義すら社によって違い、単純比較ができないのが実情です。

回答率が8割あった時代の数字と、5割を切る時代の数字。同じ「支持率」という言葉で呼ばれていますが、中身の確かさはまったく別物です。

④ 調査日──「いつ聞いたか」で世論はずれる

見落とされがちですが、調査した日付も大きい。7月は事件が連日動いた月でした。前半に聞いた社と、後半に聞いた社では、回答者が見ていたニュースがそもそも違います。

時事の調査は7月10〜13日。毎日とANNは18〜19日。読売は24〜26日。同じ「7月の調査」でも、2週間ずれれば別の世論を測っていることになります。数字を並べるときは、この日付の差も頭に入れておく必要があります。


では、どれを信じればいいのか

ここまで読むと、「結局どの数字も当てにならないのか」と思うかもしれません。そうではありません。読み方さえ間違えなければ、世論調査はきちんと使えます。コツは二つです。

ひとつ目。各社の「絶対値」を横並びで比べないこと。毎日の41%と日経の58%を直接くらべて「どっちが正しい」と考えるのは、そもそも土俵が違う数字を並べているだけです。ものさしの目盛りが違う体重計を2台並べているようなもの。比べるべきは、同じ体重計での「先月の自分」との差です。

ふたつ目。同じ社の「前回比」と「向き」を見ること。毎日は毎日の前回と、日経は日経の前回と比べる。そうやってそろえて見たとき、7月は全社が同じ方向を指しました。ここに、動かない事実があります。

調査主体 3月 6月 7月 向き
日経・テレ東 72% 68% 58%
読売新聞 71% 69% 57%
時事通信 59.3% 54.3% 49.0%
毎日新聞 58% 51% 41%
各社発表より作成。3月と6月は「政策ニュース.jp」集計を参照。ANNは7月調査で前月比−10.9ポイント(前月は約60%)と、同じく下落方向。

表の右端を見てください。4社とも、矢印は下向きで一致しています。しかも、絶対値が高い日経・読売も、低い時事・毎日も、そろって右肩下がり。ここにANNの−10.9ポイントを足しても、向きは変わりません。

絶対値は方式のクセでいくらでもずれます。でも、同じ方式・同じ社が、前の月より確実に下がっている。これは方式では説明できません。つまり「数字のバラつき」は技術の話、「そろって下がったこと」は世論の話。後者は本物です。

「では、毎日の41%は外れ値として無視していいのか」と思うかもしれません。それも違います。毎日はネット方式ゆえに絶対値が低めに出やすいのは事実ですが、その毎日自身が前月51%から10ポイント下げている。物差しのクセを差し引いても、下がったこと自体は動きません。外れ値に見える数字も、「前回比」で見ればちゃんとトレンドの一部なのです。

とはいえ、ここまで読んでも、なお消えない疑いがあるはずです。「そもそも、その数字自体が操作されているのではないか」という声です。実はこの疑いは、頭ごなしに笑い飛ばせるものではありません。章を改めて、正面から向き合います。


本当に、支持率は「コントロール」できるのか

「マスコミの支持率は操作されている」。この言葉は、いまSNSでかなりの重みをもって受け止められています。2026年7月には、高市内閣の高い支持率は数字が作られているからだという言説が大きく拡散しました。

調査の実務家からは「ほとんど陰謀論と呼ぶほかない」という強い反論も出ています。ただ、この疑いを頭から「バカげている」と切り捨てるのは、たぶん間違いです。なぜなら、過去に本当に「作られた数字」が世に出た事件が、実際にあったからです。

噂の火種──実際にあった「架空データ」事件

2020年6月、産経新聞とフジテレビ(FNN)は、合同で行ってきた世論調査に不正なデータが混入していたと公表しました。調査を委託した会社が、さらに別の会社(京都の業者)に再委託し、その従業員が実際には電話をかけず、架空の回答を入力していたのです。

不正は2019年5月から2020年5月までの14回の調査におよび、約2,500件分にのぼりました。放送倫理の第三者機関(BPO)の検証では、問題の期間の回答のうち約12.9%が架空データだったとされます。産経とFNNは、該当する14回分の記事と放送をすべて取り消し、謝罪しました。

これは陰謀論ではなく、公表された事実です。「世論調査の数字は、その気になれば作れてしまう」――そう疑う人が一定数いるのは、この一件を知っているからでもあります。噂には、火種となる実話があったのです。

ただし──「作った数字」は、バレて消える

ここで大事なのは、この事件の結末です。架空データは最終的に発覚し、調査そのものが取り消され、当事者は謝罪に追い込まれました。つまり、作られた数字は、隠し通せずに崩れた。これは「操作できる」証拠であると同時に、「操作は最後まで隠せない」証拠でもあります。

しかも、この不正は「支持率を高く見せるため」の政治的な操作ではなく、手を抜いた委託先が楽をするための水増しでした。誰かが世論を誘導しようとした話ではありません。ここを混同すると、「不正があった=支持率は権力に操作されている」という飛躍に足をすくわれます。

「動かせるもの」と「隠して操作できないもの」

では、実際のところ、何がどこまで数字を動かすのか。ここは冷静に切り分ける必要があります。方式のクセの延長で合法的に数字が動く部分と、秘密裏には動かせない部分があります。

数字を動かしうる要素
(正規の調査でも起きる)
秘密裏には操作できない要素
設問の順番(景気や物価を先に聞くと支持が下がりやすい=プライミング効果) 5社が別々の方式で出す数字の「向き」の一致
「どちらかといえば支持」を数えるか否か 同じ社の前回比(自社の過去と比べられる)
面接・電話・ネットという方式の違い 架空データの混入(発覚すれば取り消し・謝罪に至る)
左は「調査設計で結果が変わる」正規の現象。右は「こっそり操作しても続かない」構造。左を右と混同すると陰謀論に近づく。

左の列は、不正ではありません。たとえば内閣支持を聞く前に「物価高に困っていますか」と尋ねれば、不満が呼び起こされ、支持は下がりやすくなる。これは設問設計の問題であって、各社の作法の違いにすぎません。それでも結果は動く。だから「同じ内閣で数字が割れる」のです。

けれど右の列は、こっそりとは動かせません。5社が別々の会社・別々の方式・別々の日程で調べて、そろって同じ向きを出す。もし一社が数字をいじっても、他社とズレるだけで目立ちます。そして2020年の事件が示した通り、架空データはいずれ発覚して取り消される。「独立した複数の目」がそろうことこそ、最大の不正防止装置なのです。

2026年夏、噂はどう広がったか

今回の騒ぎの直接のきっかけは、ある調査会社のシステムをめぐるSNS投稿でした。公表された電話番号にかけるとSMSでURLが届き、対象者でない人でも回答できてしまうように見えた、という内容です。そこから「誰でも何度でも回答できる=支持率は操作されている」という話へと一気に飛躍しました。

この拡散には、国会議員までもが加わっていたとされます。自民党の鈴木貴子議員は「深刻なのは、その誤情報を国会議員までもが拡散していることだ」と問題提起し、調査の仕組みを説明しました。噂を打ち消す側に政治家がいる一方、広める側にも政治家がいた――ここに、この問題のややこしさが表れています。

結局のところ、「操作されている」と断じるだけの根拠は示されていません。ただ、過去に架空データ事件があった以上、疑いを持つこと自体は不健全ではない。大切なのは、疑いを陰謀論で終わらせず、「向き」と「前回比」で数字を検算する読み方に変えることです。それができれば、作られた数字はかえって見破りやすくなります。


誰が、高市内閣から離れたのか

「全社そろって下落」という向きが本物だとして、ではどの層が離れたのか。ここまで見ると、内側の動きが分かってきます。総数の増減より、この「誰が」のほうが、政権の足元を映します。

いちばんはっきり出たのが、時事通信の調査です。60代の支持が、前月の63.7%から39.9%へ、ひと月で24ポイント近く急落しました。同じ層の不支持は15.1%から33.3%へと倍増。もともと高市内閣を支えてきた中高年の岩盤が、大きく崩れたことになります。

もう一つが、特定の支持政党を持たない無党派層です。時事は続報で「高市離れが無党派で加速している」と分析し、日経も無党派層で不支持が5割を超えたと報じました。無党派は選挙のたびに勝敗を左右する層です。ここが離れ始めたことは、数字以上に重い意味を持ちます。

逆に言えば、下落は「もともと支持していなかった層」ではなく、これまで支えていた層と、態度を決めていなかった層で起きています。支持の裾野が内側から細っている。これが、単なる数ポイントの上下では見えない、7月の変化の中身です。


7月に、何が起きていたのか

では、その下落の背景に何があったのか。7月は材料が多すぎて、「これが原因」と一つに絞るのは危険です。時系列で並べ、判断は読者にゆだねます。

まず会期末の国会運営。7月17日には皇室典範の改正が成立し、副首都法などをめぐる終盤の与党の進め方に、野党が一時審議を拒む場面もありました。時事通信は、この強引な手続きが支持率低下の一因になった可能性に触れています。

次に中傷動画をめぐる疑惑。7月22日、高市首相の事務所は秘書の陳述書を国会に提出し、総裁選や衆院選で他候補を中傷する動画を作ったことはない、と全面的に否定しました。ただ、この陳述書は動画作成者とのやり取りを報じた週刊誌の内容と食い違い、24日の衆院予算委員会で野党の追及が続きました。

さらにSNSでの発信。首相自身の睡眠時間に触れた投稿が話題になり、国会でも厳しい声が上がりました。加えて、収まらない物価高への不満が土台にあります。

専門家からは、支持の「質」の変化も指摘されています。6月は「良い政策を期待するから支持」だったのが、7月は「ほかよりよさそうだから」という消去法の支持へ。積極的な支持から、消極的な支持へと中身が変わった、という見立てです。

注意したいのは、この四つのうち「どれが何ポイント効いた」という内訳は、誰にも正確には分からない、ということです。世論調査は理由まで因果で割り出す道具ではありません。回答者に「なぜ支持をやめたか」を聞くことはできても、それは本人の自己申告にすぎない。出来事と数字が同時に動いたからといって、一方が他方の原因だと決めつけるのは早計です。

それでも、材料をこうして並べる意味はあります。ひとつの事件を犯人扱いして溜飲を下げるより、複数の要因が積み重なった10日間として眺めるほうが、政権の置かれた状況は正確に見えます。どれが決定打だったのかは断定できない。ただ、これらが重なった時期に5社そろって数字が落ちた。その順序だけは、事実として残ります。


「支持率4割・5割」は、歴史的にどの水準か

数字の絶対値そのものは方式でずれる、と書きました。とはいえ、「4割」「5割」という水準が過去の政権と比べてどこにあるのかは、知っておくと目安になります。

よく引かれるのが「青木の法則」です。故・青木幹雄元参院議員会長が唱えたとされる経験則で、内閣支持率と与党第一党の支持率を足した数字(青木率)が50を割ると、政権運営が難しくなるという見方です。

実例を見ると分かりやすい。岸田政権の末期、2023年秋の時事調査では、内閣支持26.3%に自民党支持21.0%を足して青木率48.3%。50を割り込んだことが、退陣の目安として盛んに語られました。数字が「潮目のサイン」として使われた例です。

これを高市内閣にあてはめると、どうなるか。ここで効いてくるのが、やはりどの社の数字を取るかです。支持率が5割台の社の値を使えば、自民党支持率を足した青木率は50をかなり上回ります。一方、支持率が41%まで落ちた毎日の値を基準にすれば、警戒ラインとの距離はぐっと縮まります。

つまり、同じ法則を使っても、どの調査を土台にするかで危うさの見え方が変わる。ここでも「どれか一つを絶対視しない」姿勢が効いてきます。

歴史をさかのぼれば、支持率が3割を切ると「危険水域」と呼ばれ、退陣が現実味を帯びる、というのが永田町の相場観でした。その意味で、いまの高市内閣の数字は「急落したが、まだ即・退陣の水域ではない」あたりに位置します。ただし、これはあくまで過去の一般論であって、この先を予言するものではありません。

逆の例もあります。かつて小渕恵三政権は、発足直後に「冷めたピザ」と揶揄されるほど低い支持で始まりながら、その後じわじわと数字を戻しました。下がった支持率が二度と戻らない、というわけではない。反転させた政権も、そのまま沈んだ政権も、どちらも歴史にはあります。だからこそ、いまの一枚の数字で結末を決めつけることはできません。

むしろ大事なのは水準そのものより、発足からの落ち方の速さです。次の章で、その軌跡をたどります。


高支持からの9か月──落ち方の軌跡

高市内閣は、2025年10月の発足直後、各社の調査で6〜7割台という高い支持で船出しました。発足からしばらくは、歴代でも高い部類の数字が続きます。

年明けにいったん陰りが見えたものの、衆院選で自民党が大勝したあとに支持は持ち直し、春先まで6割台を保ちました。3月時点でも、日経72%・読売71%・時事59.3%と、各社そろって高水準です。

潮目が変わったのは、そこからです。3月をピークに、じわじわと下落が始まりました。6月には、時事54.3%・共同55.8%と5割台に沈む社が出はじめ、同じ月でも読売69%との間に最大18ポイントの開きが生まれます。高い社と低い社の差が広がること自体が、内閣への評価が揺れ始めたサインでした。

そして7月、その揺れが一気に「下」でそろいました。5割台だった社は4割台へ、6割台だった社は5割台へ。高い所からの、そろい踏みの転落。これが7月の世論調査が描いた形です。数字がバラバラに見えても、9か月の軌跡を引いてみれば、全社が同じ坂を下っているのが分かります。


これから、何を見ればいいのか

最後に、次にニュースで支持率を見たとき、どこに目を向ければいいかを整理しておきます。この記事を「読み方の定点」として使ってもらえればと思います。

まず、見出しの数字にいきなり驚かないこと。「41%」も「58%」も、どちらもその社の物差しでの正しい値です。大事なのは、その社が前回いくつだったか。下がったのか、上がったのか。向きを確かめてから、はじめて意味が出ます。

次に、複数社を「向き」で束ねて見ること。1社だけの急落は方式のブレかもしれませんが、5社がそろって同じ方向なら、それは本物のトレンドです。逆に、各社の向きが割れているときは、世論がまだ定まっていないサインと読めます。

三つ目に、内閣支持率だけでなく、政党支持率もあわせて見ること。内閣が不人気でも、与党の支持がそれほど落ちていなければ、青木率で見た足元はまだ保たれます。逆に、内閣も政党も同時に沈み始めたら、それは局面が変わったサインです。受け皿となる野党の支持がどう動くかも、次の焦点になります。

今後の焦点は、8月以降の各社調査で下落が止まるのか、それとも続くのかです。政権にとっては、内閣改造や国会での説明のやり直しといった、支持を立て直すための定番の手が残っています。ただ、それが効くかどうかは、次の数字を待つしかありません。ここで先回りして「退陣だ」「解散だ」と決めつけるのは、占いであって分析ではありません。

世論調査は、政治を映す鏡です。ただし、鏡は1枚ではなく、それぞれ少しずつゆがんでいます。1枚のゆがみに一喜一憂するのではなく、何枚もの鏡が同じ方向を映したとき、そこに本当の輪郭が浮かびます。次に支持率のニュースが流れたら、ぜひ「向き」を見てください。景色が、きっと変わります。


主要ソース

各社の7月世論調査

調査方式・数字の読み方

「支持率操作」説の検証

7月の背景・分析

関連(当サイト既報)

🌿 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

編集者K

速報より本質。話題のニュースの裏側を裏取りして届ける、一日の最後に読むニュースサイトです。