9月13日、沖縄が選ぶのは何か
2026年9月13日――沖縄県知事選挙の投開票日である。現職・玉城デニー知事が3選を目指し、自民党・公明党支援の古謝玄太前那覇市副市長が「県政転換」を掲げて挑む構図となっている。
しかし、この選挙には、過去2回の知事選とは決定的に異なる要素がある。3月の辺野古船事故である。17歳の高校生が亡くなったこの事故は、「オール沖縄」を支えてきた反基地運動の実態を、想定外の角度から白日のもとにさらした。
本稿は、辺野古船事故が知事選の構図にどう影響するか、両候補の経歴と政策を比較しながら分析する。
—
玉城デニー知事――「オール沖縄」3選への挑戦
【玉城デニー氏 プロフィール】
- 1959年10月13日生まれ、66歳
- 沖縄県うるま市(旧与那城村)出身
- 米兵の父(行方知れず)と伊江島出身の母の間に生まれる
- ラジオパーソナリティー出身
- 沖縄市議→沖縄県議→衆議院議員(生活の党、自由党、国民民主党)
- 2018年9月、沖縄県知事選で歴代最多の39万6,632票を獲得し初当選
- 2022年9月、再選
- 2026年4月25日、3選出馬を表明
玉城氏は、亡き翁長雄志前知事が築いた「オール沖縄」勢力の継承者として政治的アイデンティティを確立してきた。「オール沖縄」とは:
- 自民党を除名された保守系議員(新風会など)
- 立憲民主党(旧民主・社民系)
- 日本共産党(沖縄県委員会)
- 社会民主党(沖縄県連)
- 沖縄社会大衆党(地元党)
- その他、辺野古移設反対の市民団体
これら左派〜中道勢力+反基地保守の連合体である。中心的な政策目標は米軍普天間飛行場の辺野古移設阻止。玉城氏は2026年4月25日の出馬表明でも「辺野古阻止」を旗印に掲げた。
しかし、玉城氏3選を取り巻く政治情勢は、過去2回より厳しい。
—
古謝玄太前那覇市副市長――「現実的解決策」を掲げる
【古謝玄太氏 プロフィール】
- 1983年10月23日生まれ、42歳
- 沖縄県那覇市出身
- 東京大学卒業
- 2008年に総務省入省(旧自治系)
- 内閣官房、復興庁勤務
- 岡山県庁、長崎県庁(国際課長、財政課長)
- 民間:NTTデータ経営研究所、琉球ミライ株式会社
- 2022年7月、参院選沖縄選挙区に自民公認で立候補→2,900票差で落選
- 2022年12月〜2026年2月、那覇市副市長
- 2026年3月、自民党沖縄県連の候補者選考委員会が知事選候補として正式決定
古謝氏は**東大→総務官僚→地方行政→民間→政治家**という経歴を持つ「実務型」の人物。前回の参院選で僅差で敗れた経験を経て、知事選に挑む。
注目すべきは辺野古問題への立場である。古謝氏は明確に「容認」を打ち出している。
「普天間飛行場の危険性除去のためには、辺野古移設が最も早い解決策だ」(古謝玄太氏)
「反対のための反対」ではなく、「普天間の危険性除去」という別の論点を前面に出すことで、辺野古反対派と直接対立せず、現実的な政策選択として位置付ける戦略をとっている。
—
辺野古船事故が変えた構図
そして本稿の中心論点である。2026年3月16日の辺野古船事故は、玉城氏の支持基盤である「オール沖縄」勢力に、過去にない打撃を与えた。
運動団体の杜撰さ露呈
反基地運動の政党色
「平和学習」の偏向
国民感情の転換
詳細は本サイトの記事「辺野古で死んだ17歳――違法船・偏向教育・共産党構成団体という事故の本質」を参照されたい。
事故は単発の不運ではなかった。過去10件以上の関連事故・違反歴を持つ団体が運営する違法船に、修学旅行の高校生が乗せられた結果だった。そして運営団体には共産党が構成団体として参加していた。これらは、玉城氏が「オール沖縄の知事」として2選を果たした構造そのものに、根本的な問いを突きつける事案である。
—
立憲・公明・連合――「中道改革連合」の去就
知事選の鍵を握るもう一つの要素は、立憲・公明・連合の連合「中道改革連合」の動向である。
2026年2月の衆院選で、公明党が立憲民主党と組んで結成した中道改革連合。沖縄1〜4区では辺野古移設反対の候補(玉城派)が全敗するという結果になった。
ここから読み取れる動向:
- 玉城氏の地元組織(オール沖縄)と国政の立憲・公明の関係に齟齬が生まれている
- 玉城氏が玉城デニー知事が「政党間の調整役がいない」と発言(沖縄タイムス)
- 立憲民主党は玉城支援を続けるか、中道連合として中立化するか方針未定
- 公明党は辺野古移設容認なので、構造的に古謝氏に近い
- 連合沖縄は基地問題で分裂、選挙対応が割れる可能性
つまり、過去2回の選挙で玉城氏を支えてきた連合の一角が崩れつつある。自民党の古謝陣営は、これら「中道票」を取り込もうと活動している。地元経済界が中心の選挙運動を組んでいるのも、保守色を薄めて中道層への訴求を狙う戦略である。
—
過去2回の知事選との違い
| 項目 | 2018年知事選 | 2022年知事選 | 2026年知事選 |
|---|---|---|---|
| 玉城支持母体 | 翁長雄志後継、オール沖縄、立憲・共産・社民 | 立憲・共産・社民・れいわ・社大党 | オール沖縄、立憲動向に不確定要素 |
| 玉城得票 | 39万6,632票(歴代最多) | 33万9,767票(50.8%) | 未確定 |
| 自民候補 | 佐喜眞淳・前宜野湾市長 | 佐喜眞淳・元宜野湾市長 | 古謝玄太・前那覇市副市長 |
| 連合状況 | 自公維 vs オール沖縄 | 自公維 vs オール沖縄+れいわ | 自公連携+中道層 vs オール沖縄(弱体化) |
| 主要争点 | 辺野古移設、安倍政権評価 | 辺野古移設、岸田政権評価 | 辺野古事故、高市政権評価、経済 |
| 玉城優位性 | 翁長後継の追い風、知名度 | 現職、コロナ対応 | 3選への疲弊感、支持基盤の弱体化 |
過去2回の知事選では、玉城氏は「翁長後継」「現職」という追い風を持っていた。しかし2026年は、現職という強みを持ちながらも、支持基盤の弱体化、辺野古事故、3選への疲弊感という3つの逆風が重なる。
—
沖縄が本当に問われていること
2026年沖縄知事選で問われているのは、表面的には「玉城か古謝か」だが、実質的にはもっと深い構造への問いである。
① 「基地反対」一辺倒の県政は持続可能か
玉城県政の中核政策は「辺野古移設阻止」である。しかし2018年から8年間、沖縄県の代執行訴訟敗訴、最高裁敗訴を経て、辺野古工事は進んでいる。「阻止できない目標を掲げ続ける」県政に、県民は疲弊していないか。
② 県経済・教育・観光は本当に優先されているか
沖縄県の一人当たり県民所得は全国最下位レベル、子どもの貧困率も高い水準が続く。基地問題に政治資源を集中投下する間に、他の重要課題が後手に回っていないか。古謝氏が「県政転換」を掲げる根拠もここにある。
③ 「平和学習」の名の下に、何が行われていたか
辺野古事故は、「平和学習」を装った政治団体動員の実態を露呈した。玉城県政は、教育現場へのこうした動員を黙認・推進してきたのではないか。沖縄県教育委員会は、事故後どのような対応をしたのか。有権者はこれを評価する立場に立たされている。
④ 「オール沖縄」は終わったのか
翁長雄志氏が築き、玉城デニー氏が継いだ「オール沖縄」勢力。自民を除名された保守系・立憲・共産・社民・社大党というイデオロギーの違う勢力の連合体が、辺野古事故と中道連合の動揺で、どこまで結束を保てるか。
—
結論――9月13日の選択
2026年9月13日、沖縄県民は2つの選択肢を前にする。
玉城デニー知事(66)の3選――辺野古阻止の継続、オール沖縄の継承、ただし支持基盤の弱体化と辺野古事故の影響を抱える。
古謝玄太前那覇市副市長(42)への県政転換――辺野古容認、現実的政策、東大→総務省官僚出身の実務型、ただし2,900票差で落選した過去がある。
どちらが選ばれるかは、9月の投票結果を待たねばならない。しかし辺野古船事故が、過去2回の知事選にはなかった「オール沖縄の闇」を有権者の前に置いたことは確実である。
メディアは、この選挙をどう報じるか。テレビが「辺野古阻止か容認か」の二項対立で30秒に切り抜く時、その背後にある反基地運動の杜撰さ、共産党の関与、教育基本法違反、17歳の少女の死――これらをどう伝えるかが、報道の質を測る試金石となる。
判断は、沖縄県民とそれを見守る全国の有権者に委ねられる。
—
主要ソース
玉城デニー氏の3選表明
古謝玄太氏の出馬
知事選の構造分析
辺野古船事故(姉妹記事参照)
- 本サイト記事「辺野古で死んだ17歳――違法船・偏向教育・共産党構成団体という事故の本質」
- Wikipedia「辺野古沖抗議船転覆事故」



