#自民党総裁選 #テレビ報道 #メディア分析 #露出量 #独自調査 #SNS #比較研究
目次
導入――「操作」ではなく“構造”を見る
本稿は、民放テレビ局の総裁選報道を、観察できる現象(独自調査の出し方、露出機会、見出しの設計、SNS連携の手法など)から分析する。誰かが意図的に結果を「操作」したと断じるのではなく、番組編成やニュース制作の構造が候補者の有利/不利にどう響きうるかを検討する。「事実」と「番組上の合理性」を切り分けることが狙いである。
局別に見られる傾向と候補への影響
日本テレビ(NNN)――「独自電話調査」の見出し効果
日本テレビは党員・党友を対象とする独自電話調査を速報扱いで繰り返し可視化する傾向がある。2025年総裁選でも、投開票直前の特集で支持の先行・拮抗を示す数字を冒頭配置した[1][2]。この形式は“勢い”の物語を作りやすく、話題性のある候補(若年層リーチ、SNS拡散力を持つタイプ)のプラス評価につながりやすい。一方で、のちに数字が反転した場合は期待値ギャップが負の印象を増幅させるリスクもある。
TBS――SNS可視化で「ネット親和型」候補が映える
TBSはX(旧Twitter)の投稿量・話題語を独自分析し“ネット上の盛り上がり”を可視化するパッケージを活用した[3][4]。ネットでの称賛/批判が番組に取り込まれるため、SNS運用の巧拙が露出に直結しやすい。結果として、オンライン発信の強い候補には有利、逆にネットでの火種(例:称賛投稿要請問題)が顕在化した場合、負のフレーミングも一括で可視化されやすい二面性がある[5][4]。
フジテレビ(FNN)――“速報配置”と話題性の編集
FNNは世論の適任者割合などをニュース見出しに据える報道を展開。2025年10月の記事でも、特定候補の適任39%といった数字がリードで提示され、視聴者に序列の初期印象を与えやすい[6]。また、称賛投稿要請問題の進展を機動的に中継で追った[5]。この“スピード重視+話題性”の編集は、注目を集める候補には追い風、一方でスキャンダル接近時には拡散速度が速い逆風にもなりうる。
テレビ朝日――論点整理で「政策型」を拾うが、尖りは“目立つ”
テレ朝は論点整理や候補の比較を重ねる傾向があり(過去の総裁選でも“発信力”を軸に論じてきた)[7]、政策のロジックで勝負する候補には相対的に追い風になりうる。他方、強い言説は枠内でセンシティブ扱いとなり目立ってしまうため、対立主張の切り出しがネットで二次拡散しやすい。
テレビ東京――経済ニュース枠の相性
テレ東は露出総量こそ限定的なものの、経済・政策のフォーマットで扱うことが多い。財政・規制改革・技術政策を具体で語れる候補は、短尺でも質のある可視化を獲得しやすい。ただし、全国波の到達力差から量的な効果は限定的になりがちだ。
2025年の観察と、2021年の“空中戦”との連続性
2025:数字とSNSの“合成視界”
2025年は、独自電話調査(支持・適任の数値化)と、SNS可視化(投稿量・語り口の把握)が同時に進行。数字の見出しが“勢い”を作り、SNS分析がそれを補強/反証する構図が目立った[1][3][6]。
2021:発信力の時代へ(回顧)
2021年は、コロナ禍下で遊説制約が強く、各候補がテレビ・ネットを通じた“空中戦”に依存。主要紙も「発信力」をキーに世論調査・解説を展開した[7][8]。この文脈は2025年にも連続し、番組が映す“話題の形”そのものが候補の得失点に直結する地合いが続いている。
候補タイプ別「映え/不利」のパターン(観察ベース)
ネット親和・話題喚起型
政策ロジック・安定志向型
- 有利になりやすい局面:テレ朝・テレ東の論点整理/経済枠
- 不利になりやすい局面:短尺見出し中心のニュースでは物語性の弱さが露出面で不利
強い対立軸・尖った主張型
- 有利になりやすい局面:初期露出(先頭での配置、街頭の画)で記憶優位を取れた時[6]
- 不利になりやすい局面:討論での切り出しクリップが過剰拡散され、文脈を失う時
定量比較をどう読むか――「数字」そのものより“作法”
独自調査は設計を開示してほしい
同時期の調査でも、媒体により順位が入れ替わる現象が珍しくない。これは標本抽出・回収率・加重法・設問順序などの違いで説明できるケースが多い。2025年も、媒体間の数字差が“勢い”の見出しを揺らした[1][6]。視聴者側は複数媒体を並べて読むことが必要だ。
討論・中継の「順序」と「尺」の影響
討論や所見発表の冒頭配置は記憶に残りやすい。届け出順・中継の先頭に置かれた候補は、短期的に認知の先行が起きやすい。番組は公平に配慮するが、心理学的な順序効果の影響は無視できない。
視聴者・党員への実践的チェックリスト
- 一社の数字で決めない:最低2〜3媒体の結果を並べる
- 短尺クリップは必ず全文と併読:切り出しで失われた文脈を戻す
- 政策PDF・討論フル版を見る:ラベル化された印象を補正
- SNS“熱量”と票は別:可視化された声は“偏り”を持つ
参考・出典
- 日本テレビ「あと3日・党員票を独自調査」解説枠(2025)
- 日本テレビ「党員・党友向け独自電話調査」速報(2025)
- TBS NEWS DIG「Xの投稿を独自分析」特集(2025)
- TBS Nスタ「“やらせ投稿”問題を解説」(2025)
- FNN「称賛投稿要請問題」中継(2025/09/26)
- FNN「適任者割合(39%など)を見出し化した記事」(2025/10/01)
- 朝日新聞「総裁選、発信力をめぐる解説」(2021/09/05)
- 朝日新聞「“実行力”“発信力”の世論調査」(2021/09/13)
付記――公開データの限界について
局別の出演回数・討論の発言尺・見出しラベルの網羅データは、現時点で公的には整っていない。そのため本稿は、確認可能な一次情報(番組枠・公式記事・公式動画)を核に、観察に基づく分析をおこなった。今後、番組ログの横断公開や質問票開示が進めば、より定量的な検証が可能になる。
